<NRF 2017 大会 レポート 第3回: 実践に入る、IoT、AI 、ロボット、AR/VR>


 NRF 2017 の基調講演で最大インパクトがあった 「小売のトランスフォーメーションに拍車をかける」 を紹介します。 講師は、Intel  ブライアン・クルザニッチ CEO とリーバイス・ストラウス社グローバルリテールの EVPキャリー・アスク社長。これに加え、多様なデジタル・イノベーション事例をそれぞれの開発者がステージに作った模擬ショップや実演によりプレゼンする、という立体的なものでした。紹介されたもののほとんどは、すぐに実施可能、あるいはすでに進行中の革新モデルです。私が、「デジタル技術がティッピング・ポイントに達し、いよいよ実践の場に入る」、とまとめた、2017年のNRF大会を代表する内容でした。 (繊研20170222_9_NRFリポート もご参照ください)

 セッション・テーマと副題は、小売のトランスフォーメーションに拍車をかける――データ/スマート/コネクテッドのテクノロジーがいかに感動的顧客体験を可能にするか?」です。「データは新しい石油」、とデータの重要性を強調したクルザニッチ氏は、データが ①優れた買い物体験を創る、②顧客情報の蓄積・分析・活用を可能にする、③未来の店を創る、と述べました。 まず、①の〝優れた顧客体験″の事例として、インテル社のIoT 小売りプラットフォームResponsive Retail Platform RRP をご紹介しましょう。 

2016 NRF 大会で実験段階と紹介されたデモ 筆者撮影

これは、店舗での在庫と商品の移動を、商品に付けたRFIDICタグ)を頭上のセンサーが読み取ることで把握し、倉庫はもとより本部も含めた関係部署が共有する仕組みです。 一言でいえば、小売店の機器とソフトとAPIとセンサーをつないで、保持するデータを、標準化された形で統合する 〝IoT″と言えますこれにより、在庫管理の可視化、在庫精度100%、顧客動向の把握、等が可能になり、スタイリストの顧客対応の高度化、本社エグゼクティブを含む情報/インサイトの共有、を可能にします。「ネットで簡単に買い物ができる中で、来店客は購買意欲が明らかに高い。よって陳列レベルの在庫精度は非常に重要」、とリーバイスのアスク氏は強調します。

 他の、デジタル・イノベーション事例として登場したものの中なら、いくつかを紹介します  

 在庫チェック・ロボット〝Tally″――フロアを巡回し棚をスキャンしながら、在庫の有無や正しい場所に置かれているかなどを把握するロボット。 顧客を避けることも可能で、縦型なので混雑時でなければ営業中にも作動可能です。 (画像は、プレゼンより筆者撮影)

 第2は、ウェアラブルによる AR (拡張現実)によるピッキングーー倉庫でのピッキングを、メガネに搭載したコンピュータが指示。間違ったピッキングには、画像の上に指示がでる。 (画像はNRF提供)

 第3に、③未来の店、の事例として、2つを紹介します。はじめは、バーチャル・ショッピングーー中国の最大ECサイトのアリババが昨年の11月11日 ( Single’s Day =独身の日)に実施した、〝中国からの米国小売店での買い物″。 HMD(ゴーグル型ヘッドマウント・ディスプレイ)を着装し、あらかじめ用意されたアメリカ小売業で、売り場を歩く感覚での、商品選びと購入です。越境ECがここまで進展していることには、驚きました。( アリババの「独身の日」のECサイトを紹介するクルザニッチ氏の講演 筆者撮影)

 小売業の未来を拓く、もう一つの事例は、 by REVEAL ――20分で組み立て、ノックダウンもできる Pop-Up 店です。詳細は先の 繊研20170222_9_NRFリポート でご覧ください。未来的コンセプトである所以は、6フィート平方のミニ店舗でありながら、小さな試着室もあり、デジタル技術により、ICタグをつけた商品をセンサーが読み込み、必要な補足情報の提供やミニ店舗に陳列していない商品の紹介も可能といったものです。店舗のコストをミニマイズし、顧客がいるところに柔軟かつ速やかに出店して、若手デザイナーなど、ブランド知名度の低い小企業を支援したい、と創業者は述べています。

ミニ Pop-Up 店舗の by REVEAL  デモ用店舗を筆者撮影

 このほか、基調講演での言及はされなかったのですが、インテル社の展示ブースには、島精機のホールガーメントも提示され、多様にカスタム化できるアプリで、ボストンのニッターが対応する、ニット製品の1枚生産の紹介もありました。

 デジタル化の浸透で、巨大な変容が進行しているファッション・ビジネス。残念ながら日本は、周回遅れの感じがありますが、これから急速な進展があるものと、期待しています。

 

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<WEF 第9回シンポジウム:「デザイン思考ー価値創造に不可欠のアプローチ」>


 「デザイン・シンキング(デザイン思考)」という新しい考え方を学ぶシンポジウムを、WEFが開催することになりました。328日(火) 18302040 です。 (NRF報告シリーズの第3回は、次回11日にアップします)

シンポジウムのテーマは: 

『デザイン・シンキング(Design Thinking

  ― これからのファッション・ビジネスの価値創造に不可欠なアプローチ』

企画の狙いは、消費の変容、テクノロジーの急速な拡大のなかで、低迷するファッション・ビジネスの在り方を、ゼロベースで見直し、将来へ向けての新たな視点とアプローチを学ぶことにあります。 (詳細はこちらを→ WEFシンポジウム第9回ご案内 )

  「デザイン」とは本来、「設計」 を意味する言葉です。しかし日本では、「服の絵型や生地の柄をデザインする」という、狭い考え方でデザインを捉えてきました。米国で最近とみに注目されている「デザイン思考」とは、形のデザインだけでなく、「デザイン=設計」の原点に立ち戻り、 生活者あるいは顧客の視点に立って、新たなビジネス・コンセプトや新製品開発、新ビジネスモデルの設計・構築に取り組むことにあります。

そのために必要な「デザイン的発想・思考・プロセス」を身に着け、不振を続ける日本のFBの新たな発展の突破口にしたい、との思いでこの企画を立てました。

講師には、㈱良品計画 代表取締役会長の金井政明氏、米国における「デザイン思考」の主導者である  IDEO 社(シリコンバレー)の Tokyo Disign Direcotor 石川俊祐氏、そしてバイオ・アーティスト/Google  ATAP プロジェクト ジャカード・テキスタイル開発兼クリエイティブ・リード 福原 志保氏をお迎えします。(注:「プロジェクト ジャカード」とは、グーグル社のウェアラブル・テキスタイルのプロジェクト名)

日本に根差したデザインの美意識と「用の美」を追及する MUJI、アメリカ的考え方で顧客のニーズの本質に迫るデザイン思考の IDEO、の2つの視点を合わせて学ぶ、興味深いシンポジウムになると考えています。

経営者や企業幹部の方、デザイナーやマーケティング、マーチャンダイジングにかかわるプロフェッショナルの方、その他 革新・改革に取り組んでおられる方々に、是非ご参加いただきたいと願っています。

(お申し込みは、WEF(一般社団法人 ウィメンズ・エンパワメント・イン・ファッション http://www.wef-japan.org)へ。下記 ファックスかEメールで。 FAX: 03-6730-1742  E-mail: info@wef-japan.org )

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<NRF 2017 大会 BIG SHOW レポート 第2回: 9つの基調講演から>


 先回、今年のNRFのメッセージは、「いよいよテクノロジーが実践の場に入る」とのべました。

 「デジタル技術は今、飛躍への〝転換点 Tipping Point」が、繊研新聞に掲載された尾原のNRF レポートの大見出しです。〝ティッピング・ポイント(Tipping Pointとは、それまで小さく変化していた物事が、突然急激に変化する劇的な転換点を意味します。AI (人工知能)やロボットAR(拡張現実)やVR(バーチャル・リアリティ)等が、いよいよ実践に拡大する年、ということです。そこでは顧客へのパーソナル化が非常に重要であり、そのために〝データ″が決定的な役割を果たします。

〝データは新しい石油″、〝データは新しい通貨″といった言葉が飛び交った大会でした。(繊研新聞の尾原レポートは、こちらへ 繊研20170222_9_NRFリポート

 9つの基調講演を中心に、NRF 2017 のハイライトをお伝えしたいと思います。今年は、例年8つの基調講演が9つに増えましたが、テーマはテクノロジーと顧客体験、それに絡む新ビジネスの起業に絞り込まれた感がありました。115日(日曜日)から毎日3つ行われた基調講演( Key Note Session )を、順番に紹介しましょう。

  #1 「小売業はいかに人材(Talent)を惹きつけ、キープすべきか」――Macy’sWalmart 等の CEO によるパネルディスカッション。他産業との人材獲得戦争(War for Talent)のなか、小売業の魅力をどうアピールし、優秀な人材をどう獲得するか。とくにテクノロジーと小売りビジネス両方の能力を持つ人材が今後決定的に重要になる。そのために、CEO達は、ビジネスや技術系大学院にまで企業説明に自ら出かけている、といった緊張感あるセッション。単なる「人手」ではなく、高度なプロフェッショナル人材が不可欠になっているアメリカの実態。しかし日本にとっても喫緊の課題。

  #2 「データからディライトまでーインサイト活用の店内体験」――GameStop社、The Vitamin Shoppe社などネットをフル活用する企業のトップが語る、顧客データをいかに活用して、〝顧客ジャーニー″ すなわち個客体験を優れたものにしているか。〝顧客ジャーニーとは、情報検索からサイト/店舗訪問、ほしい商品ゲットのプロセス全体が「買い物ジャーニー」だとの考え方)

  #3 「21世紀顧客体験のカスタム化Shoes of Frey と Indochino事例――Eコマースでスタートした、カスタムの婦人靴あるいはメンズスーツを提供する2社が語る、マス・カストマイゼーションの先端事例。個客に照準を当てたカストマイゼーションは、サプライチェーンのディスラプションであることも強調された。

  #4 「継続的ディスラプションと革新のブランド・マネジメント」―― Virgin Group社創業者ブランソン卿との対話。400社を率いる〝とどまることない起業家″のブランソン卿の、革新とディスラプションの波乱万丈のキャリアから、変容の中で生き残る革新的経営者のモデルを見る。(詳細は上記、繊研レポートを読んでください)

  #5 「小売のトランスフォーメーションに拍車をかける」――Intel CEOとリーバイス、その他のデジタル・イノベーション事例。今大会のハイライトというべき革新事例のデモを含めた講演。(詳細は次回に紹介します)

  #6 「ホスピタリティが生み出す、カスタマーとの深いつながり」――ダニー・マイヤーとの対話。ユニークなレストラン経営で注目されているUnion Square Hospitality Group のマイヤーCEOの強調点は、〝非コモディティ化が鍵。秘密のレシピは「プロダクト 49% ホスピタリティ 51%

#7 「消費者が国家経済を動かすドライバー: ニューヨーク連銀CEOがみる消費行動の推移」 ——消費者の意識と行動を、住宅ローンの推移から見る興味深いプレゼン。

#8 「高速車線を行く起業家たち: 起業事例」――若手による起業を4例紹介するのが、ここ 45 年の恒例になっている。今年は Banter (ショップが顧客と携帯メッセージでコミュニケーションできる)、Strypes (既存商品をカストマイズするプラットフォーム:メーカー製品に10%のオリジナリティを顧客が付加)、Perseus Mirrors (スマートホームのための鏡)、ShopShops(中国に住む顧客のためのバーチャル・ショッピング・サイト。テレビショッピングのスタジオがニューヨークの実際の小売店になった感じで、顧客は店内に居る感覚で商品をクリックしながら購入する)。いずれも、デジタル技術をフル活用するもの。驚くべきは、中国在住の顧客に向けての越境 Eコマースがこんな形でも始まっていること。

#9 「社会意識の高い顧客をどう獲得するか?」―― IKIEA と The Honest Companyのトップが語る〝信頼される企業″、〝透明性ある企業″とは。顧客は商品の安全性などを自分に代わってスクリーニングしてくれる企業を求めている。キーワードは Trust (信頼)

 次回は、9つの基調講演の中で、最もインパクトが大きかったインテル社のブライアン・クルザニッチ CEO の、実演を多用した講演について、紹介しましょう。

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