< NRF2019レポート② 2019テーマは 「インパクト」 >


 NRF 2019報告の第2弾は、今回のテーマについてです。

 実は、今日(2月18日付け)の繊研新聞に「尾原蓉子の 19全米小売業大会リポート」が掲載されましたので、NRF大会の全体感を捉えたい方は、繊研新聞をご覧下さい。7ページほぼ全体を占める寄稿記事です。 

 NRFの2019年のテーマは 「インパクト:小売ビジネスに与える衝撃」 でした。セミナーもこれを踏まえ、各セッションに 「パーパスフル」 とか 「コミュニティ」 といった注書きがありました。これまでの区分けが業務領域別に、「戦略」、「テクノロジー」、「マーケティング」などであったことと比べると、ビジネスを専門領域や機能を超えて、統合的・融合的にマネージせねばならなくなった今日、企業の革新を方向付ける「時代のインパクト物理的、心理的な衝撃)」を明確に打ち出すことが重要、と考えたのでしょう。

 尾原蓉子のNRF 2019 リポート (繊研新聞2月18日掲載)

  NRF 2019が掲げた6つのインパクトと、その代表的事例や講師を紹介しましょう。 

パーパスフル(Purposeful=存在意義)インパクト

 =社会善の実践→社会的戦略とビジネス戦略の合体、すなわち単なるCSRを超えて、事業そのものを、地球環境や人権を重視するものにすることです。

 企業事例としては、パタゴニア、イケア、ベストバイ、リーバイス他のトップが、企業の良心・目的意識、サステナビリティ、ダイバーシティ&インクルージョン、差別のない人間中心の働き方などを、語りました。大手スポーツ小売Dick Sporting Goods社が、主要商品であり扱い額も大きかった銃の販売を中止した決断には会場から大拍手が起こりました。

コミュニティ(Community)インパクト

 =情熱の力→顧客コミュニティがブランドを構築する。すなわち、人々が熱狂するような考え方やビジネスの新規あるいは便利な仕組みにより、コミュニティがうまれ、ブランドの支援者が参画者となる。シェアリングや理念ある商品、想いある著名人などに共感する顧客がSNSなどでスーパーファンとなる、というものです。

 事例としては、米国最大の便利屋マッチングサイトのタスクラビット、CtoCのフリマでSNSのコミュニティが出来、出品者個人へのフォロワーも生まれる仕組みのポッシュマーク。また仲のいいセレブカップルChip and Joanna GainesによるDIYの「マグノリア」など。

オペレーション(Operational)インパクト

 =今日のスピードで動く→自動化時代に、テクノロジーによりプロセスを最適化する。AI の活用、スピード、柔軟な対応などを、革新起業のCEOやテクノロジー関連トップ、起業家、が語りました。事例としては、ウォルマートCTOによるデジタル・テクノロジー戦略、IBMによる「AI による自動化」調査報告、『the four GAFA  四騎士が創り変えた世界』 の著者S・ギャロウェイ教授による 「巨大プラットフォーマーが投げかける問題」のほか、「イラつかないショッピング」を語ったフレッド・シーガル、ワービー・パーカーなど。

人材(Talent-有能な人材)インパクト

 =プロフェッショナル人材→トランスフォーメーション文化を内部から外へ発展させるための人材と組織のありかた。

 事例としては、テクノロジー関連人材、とくにデジタル世代の獲得と活用、デジタル時代の“人材”の定義、などを、セフォラ、スチッチ・フィックスほかが語りました。

顧客体験(CX-Customer Experience)インパクト

 =経験経済時代→ メッセージは エンゲイジメントの法則を書き換えよ。セミナーでは、このテーマのセッションが最も数多く、オムニチャネルやリアル店舗のデジタル化による顧客支援、アパレル製品のフィット問題、顧客ニーズ起点の起業、など多種多様のセミナーがありました。

 事例としては、次回に書く予定の、ターゲットやメイシーのほか、インドチノやオールバーズなど。フィット研究の先端企業トゥルーフィットなど。

グローバル(Global)インパクト

 =成功を拡大→ 新たなパートナー・新市場・テクノロジーで世界へ広がる。

 セミナーは、FRB元会長J・イエレン氏との経済見通し、アリババやウォルグリーンなどの世界戦略など。特に印象的だったのは、デジタル化・キャッシュレス社会が世界最速で進む中国を、「今日の米国は、中国のイエスタデイ」としたデロイト幹部のコメント。JD.com(ドローンや自律走行車による配送、完全自動化の巨大倉庫などで知られる中国第2のネット通販)が、僻地の険しい山に住む住民に、ドローンで医薬品や必需品などを送るビデオには歓声が上がりました。 

 これらの中で、今後特に重要になるのが、パーパスフル・インパクト、と、コミュニティ・インパクト、だと私は考えています。その理由は、二つ。ファッション・ビジネスが、サステナブルな地球の維持、という観点から見れば、ある意味で時代の潮流に逆行する営みであること。その半面、テクノロジーや無機質なものに囲まれて生活することになる人々が、これまで以上に「感情・情緒・心の豊かさ」を重視する時代になること、です。

 これらのインパクトを、ファッションにかかわる人々や企業が、どのように良い形で実現するかが、これからの課題だと考えます。