<新型コロナウィルスと小売りビジネス ①――次なる新常態(ニューノーマル)とは?>


 新型コロナウィルス (Covid-19) の感染拡大により緊急事態宣言が 4月 7日に発令されて4 週間。待望のゴールデンウイークも“Stay Home” 自粛が要請され、さわやかな若葉を恨めしく眺めながらも、自宅生活を少しでも楽しく快適にする工夫を重ねておられる方も多いでしょう。

 日本国民の心がけと行動変容により、何とかオーバーシュートは抑えられたようですが、緊急事態はさらに 5月 31日まで継続、と本日発表されました。個人の生活、経済、教育などへのダメージは、戦後最大のものと言われます。店舗などの閉鎖に苦しむ事業者や職を失った方々、育児支援のない貧困母子家庭、などのニュースに胸が痛みます。その中で、感染リスクに身をさらしながら昼夜努力されている医療従事者の方々には、心からの感謝と敬意の気持ちを捧げたいと思います。

毎年咲いてくれる ベランダの蘭

  パンデミックの深刻化で、NRF 2020報告シリーズを書く筆が止まってしまっていました。止まった、というよりも、NRFが提示した消費流通ビジネスにかかわる先端的動きを、新しい視座でとらえなおす必要がある。言いかえれば、先端的と注目された革新的考え方や技術が、ポストコロナの世界にどのような意義をもつか、を改めて考えなければならなくなったと痛感するからです。ポストコロナの世界、といっても1年そこらで終息は不可能と言われる状況では、With Corona、つまり人とウィルスあるいは細菌との新たな“共生”の生活/経済/社会システムをどのように構築するか。その一環としての、“革新的考え方や技術”とは何か、という視座です。
  金儲けと過剰な豊かさ追及の生活、天然資源の乱用、自己中心的に展開する資本主義、などに代わって、人、生きること、そして地球、社会、コミュニティ、家族、への愛情が、新たな価値、そして人々の活動の“パーパス(目的)”になる時代に入っています。そこでは、消費者の意識と行動が変わり、SDGsに象徴される“持続可能な開発目標”の実現、人間性や健康重視、働き方/仕事への意識/仕組みの変革、そしてこれらを実現する手段としてのネット/デジタルの立体的拡張、などが重要になるでしょう。
  折しも、コロナ対策としての非常事態宣言で、世界の主要都市がロックダウン(都市封鎖)したことで、CO2 の排出が50%ダウンしている、という記事に衝撃を受けました。(大気汚染や温室効果ガスが激減」 BBC 3月20日)。 また、新型コロナウイルスの影響で人びとが外出しなくなった途端に、インドのビーチに約28万匹のヒメウミガメが集まり、6000万を超える卵を産んだ、とのこと。(「人類が外出をやめた中で… 絶滅危惧種の産卵が大復活」 エキサイト 4月6日)。われわれが現在、当り前と考えている日常生活を支える仕組みが、いかに自然を痛めているか、思い知らされる事象です。コロナの蔓延は、自然を破壊している人類に対する天誅ではないかと思うのです。実際に世界的に有名な霊長類学者のジェーン・グドール博士は、コロナパンデミックの原因は「動物の軽視」(FAP通信4月12日)で、「われわれが自然を無視し、地球を共有すべき動物たちを軽視した結果、パンデミックが発生した。これは何年も前から予想されてきたこと。例えば、われわれが森を破壊すると、森にいる様々な種の動物が近接して生きていかざるを得なくなり、その結果、病気が動物から動物へと伝染する。そして、病気をうつされた動物が人間と密接に接触するようになり、人間に伝染する可能性が高まる」と述べています。

  パンデミックが収束した段階(とりあえず、でも)での人々の生活の仕方、そしてそれを扱うビジネスは、これまでのものから大きく変容するでしょう。新たなNew Normal(新しい常態)、あるいはNext Normalとはどんな様相を呈するのか? Essentials(必要不可欠なもの、本質的なもの)以外、すなわち「不要不急」のものは後まわしとする環境や体制では、「不要不急」の象徴のようなファッション・ビジネスは、どうなるのか? この悩ましい問題に、ファッション産業はどう取り組むのでしょうか?
  次回から、海外で少しづつ進んでいる活動規制の緩和で、消費者と小売業にどのような新たな動きが起こっているかを、NRFが示す潮流に照らしながら考えてゆきたいと思います。
  またこの機会に、日本の生活文化を振り返り、自然との共生や「モッタイナイ」の思想など、世界に誇るべき価値観や慣習を、改めて見直し、Next Normal の日本版を探りたいとも考えます。江戸時代の日本には、あらためて見直す価値のある仕組みや生き方が多々ありました。当時の江戸を訪問した西洋人は、世界の3大都市(人口が100万を超える)の、パリ、ロンドン、江戸のなかで、江戸ほど街が清潔な都市はなかった、と書いています。人々は貧しくても穏やかでにこにこしており、着ている衣類はボロでもきれいに洗濯してある、と。

 パンデミックは、傲慢、強欲がはびこる現在の人間社会への「警告」と受け止めましょう。                                  End