<ポストコロナ世界:成功への新ルール ――潮流としてビジネス変容をとらえる>


 今年も残すところわずか。感染症の恐怖と不安、落ち着いて平和に見えていた日常が突然消滅、倒産や失職者の増加。仕事・通勤・通学も変容し、息抜きの会食・飲み会や旅行も自粛、、、。今年の年頭に 誰がこんな一年を予測していたでしょうか?

 歴史に残るコロナ・パンデミックの襲来と闘ってきた2020年が終わって、新たな年を前に、この1年、あるいは我が人生を振り返り、改めて家族や人間を愛おしく思いながら、2021年への期待を新たにしているのは私だけではないでしょう。

 ポストコロナの世界について、ビジネス潮流の劇的な変わり目として探求しながら、深く考えさせられたものがあります。〝起業家のバイブル誌 とされるビジネス隔月誌  「FastCompany」 が提示した、これから25年への6つの「新ルール」です。四半世紀先を見とおすことは何人にも不可能ですが、Covid-19の強烈な体験を踏まえ、これからの VUCA(不安定で不確実、複雑で曖昧)な時代への基本姿勢として、非常に示唆に富むものと思うので、ご紹介します。

FastCompany誌の 成功への新ルール

 「FastCompany」 25年前、IT革命がスタートした頃に創刊されました。その想いは、〝何かが起こっている、、″、、〝グローバル革命がビジネスを変えつつある。ビジネスが世界を変えつつある。未来を再構築する人たちのショーケースとなろう

 でした。 1995年の創刊号の表紙には、創業者で共同編集長のアラン・ウィーバー と ビル・テイラー(ともにハーバード・ビジネスレビュー出身)が 4つのマニフェスト(教義)を掲げています。    (画像① FastCompany誌1995年創刊号表紙 参照)

「仕事はパーソナル」、「コンピュティングはソーシャル」、「知識はパワー」、「ルールを破れ」

 「Work Is Personal」は、仕事が単なる〝職業″ではなく、人々の生涯やキャリアにかかわる個人的なもの。 「Computing Is Social」は、 コンピュータが単なる電脳計算機ではなく、人をつなぐ共感/コミュニケーションの社会的存在になる。 「Knowledge Is Power」 は、金や物理的な力ではなく知識(ナレッジ)がパワー/エネルギーだ、というメッセージ。そしてこれらを踏まえ、「Break the Rules」すなわち、ルールを破れ、と。 これらのマニフェストを、四半世紀前の、ITバブルの初期時点に打ち出した先見性には、脱帽するしかありません。ツイッターやフェイスブックが登場するほぼ10年前に、「コンピュータはソーシャル」と、言い放ったのですから。

 その先見性を誇らしく反芻しながら、同誌は、この歴史に残るコロナ・パンデミック襲来の2020年に、次なる25年を見通そうとしました。先端的考え方をもつ起業家やNPO幹部、企業幹部やイノベータを招いて Fast Company Impact Council を設置し、「新しい時代の 新ルールは何か」を聞いてまとめたのが、次の6項目です。 (ちなみに招かれた200人を超えるメンバーには、リベラル系ニュースサイト『ハフィントン・ポスト』創設者アリアナ・ハッフィントンをはじめ、マッキンゼーや シスコシステムズ、ペプシやバンク・オブ・アメリカ、MITメディアラボ、SAP、Facebookやファイザーなど主要企業/大学の幹部など錚々たる面々。Tory BurchWarby ParkerM.M.LaFleurなどの起業家、Gucciやサックスフィフィスアベニュなどのファッション関連も含まれています。もちろん同誌創業者のビル・テイラーも。

(画像②The New Rules of Business 2020年10~11月号表紙 Define Your Purpose 「あなたのパーパスを明確に定義せよ」)

次なる25年の 新 「ビジネス新ルール」 

1.  働く場に民主主義を      BRING DEMOCRACY TO WORK 

2.  コミュニティに投資せよ           INVEST IN COMMUNITY 

3.  パーパスを明確に定義せよ     DEFINE YOUR PURPOSE 

4.  真実・本物であれ        BE AUTHENTIC 

5.  好奇心が「通貨」         CURIOSITY IS CURRENCY 

6.  変化が「常態」=常に変わる     CHANGE IS CONSTANT 

 これらの「新・新ルール」の背景を理解する上で参考になるのは、スコット・ギャラウェイ氏(ニューヨーク大学教授で『GAFA』の著者)の、コロナが加速する、「分散・拡散(Dispersion)」論です。いろいろな場面で〝距離の消滅が起こっている。Eコマースは小売店をパソコンやモバイルや音声に分散させ、顧客との直接的関係つくりを促進。ビデオ・サブスクリプションはDVDをパソコンや家庭のスクリーンへと分散。SNSは、コネクション、コンペティション(競争)、データベースを、物理的距離や紙媒体から拡散させている。〝小売り以上にディスラプション(創造的破壊)が進んでいる大産業は、WFH (ワーク・フロム・ホーム)、遠隔医療、リモート・ラーニングで、米国経済の25%をディスラプトする。特に重要なのは、医院、病院、大学の変容。これらはグローバル化、デジタル化、と同様に新たな価値創造のチャンスをもたらすと同時に、大きな危険をはらんでいる“、と氏は言います。〝分散は「segregation分離・隔離・人種差別)」を生み出す。富の偏在を加速し、社会の分断やコミュニティ内での「分離・差別」を生み出すからだ。 2018年には、米国の富の32%を人口の1%がにぎった。結束の強いコミュニティでは住民は異民族に寛容的であるが、分離が存在するコミュニティでは、異民族の数が増加するにつれ、冷たい感情を持ち始める″、と警鐘を鳴らしています。

次なる25年の 「ビジネス新・新ルール」 をかみ砕いてみましょう。

ルール1 働く場に民主主義を」 職場や働き方や評価を、人種や性別や育った背景に関係なく、フラットな目線で公平にマネージすべし。リモートワークが、ヒエラルキー的リーダーシップの価値を爆破し、仕事のスピード化と高給管理職削除に貢献しただけでなく、公平でインクルーシブな仕事場と企業文化を創造している。リーダーは、給与やダイバーシティ制度のデータを自発的に共有し、社員には不正が行われたら声を上げることを奨励し、すべての社員にベネフィットとチャンスを提供すべし。職場の民主主義は、ビジネスの新ルールであるだけでなく、ビジネスモデルでもある。

ルール2 コミュニティに投資せよ」 ―企業は、自社の事業にかかわるコミュニティに投資すべし。他の選択肢はない。フィランソロピーが超地域密着になる事に加え、ビジネスに埋め込まれるようになってきている。例えばパタゴニアは売り上げの1%を環境問題に投じる(業績にかかわらず)。企業、公益法人、政府、草の根団体は、コミュニティと公共の場をケアする新しく完璧な方策を推進すべきだ。また企業は、商品やサービスが多様化・過剰化し情報があふれる中、自社が関わるコミュニティを自社のシンパとして重視し、より深く優れた関係を築くことが重要。不特定多数への振り売りから、ブランドで独自のコミュニティを形成し共に発展していく。

ルール3 パーパスを明確に定義せよ」 ―パーパス(企業の存在目的)というと、資本主義からの巨大な逸脱だと考える向きが多い。また「パーパス志向」を打ち出しても、理念とパーパスを混同している企業が多い。〝パーパスは、サステイナビリティとガバナンスの実践を、ビジネス戦略として議論する中で出現する″。新しいタイプの企業は、パーパスを自社のビジネスプランに埋め込んでいる。〝世界のより良き案内人/支配人として、その場所をよりよくすることが、企業の持続可能な競争優位だ″と考えるのだ。プロフィットとパーパスは共存できる。

ルール4 「真実・本物であれ」 ―オーセンティックな偽りのない、信頼できる商品や行動を。「オーセンティック」は、企業用語に取り込むには、リスクが大きい言葉だが、今日の危機は、仲間の間、顧客との間での、より正直で生の対話を求める動きを加速している。リーダーは、自ら胸を開いて気持ちをシェアし、ブランドは透明性をもって顧客に接することが求められる。エンパシー(相手への思いやり)が、リーダーに要求される重要スキルであることに、議論の余地はない。正直なメッセージを伝えるには、思慮深い考察が必要。自分が信じているものがなければ、何かを訴えることは出来ない。

ルール5 「好奇心が〝通貨”」 ―旺盛な好奇心、なぜ? どうして? が 問題発見と解決の扉を開く。日々新しい技術や情報、プラットフォームが生まれ、人々の生活が変化する今、好奇心はビジネスの種や展開に不可欠な、“通貨”だ。ビジネスや社会潮流の先端を行こうとする企業は、絶えず仮定を疑うことも不可欠。個人の仕事にとって「好奇心」は、「創造性」や「人間性」と共に、デジタル化・自動化できない、つまりAIに代替されることがないものだ。また教師や学校や子を持つ親は、〝教える”から〝自ら学ぶ”へのシフトを。さらに〝生涯学び続ける”ことを推進すべし。

ルール6 「変化が『常態』=常に変わる」 ―企業は、変化する事を重視している、というが、多くの場合、外的な力に単に反応しているだけだ。環境や状況の変化とともに、速やかに必要な変化を自から起こせる企業。ディスラプションで破壊されるのではなく、ディスラプションで収穫を得る企業。それを目指すなら、変化は、「What 何を?」 ではなく Who 誰が?」だ。優れた企業の創造は、人材に尽きる。変化を起こせる人、これまでやってきたことを止める力を持つのは誰か? つまり、誰が旧態を変える力を持つかだ。

最後に同誌は言います。〝これらのルールが、FastCompany誌創業の1995年に掲げたもの同様に予言的なものになるだろうか? 我々はそう願っている。しかし近々これを修正する必要が起こったとしても、創業者の2人は 「ルールを破れ」 と警告するだろう。この猛スピードで変化する、そして不確実性の高い時代において、全ての企業が準備できることは、「変化する」事だ。″ 

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今日はクリスマスイブ。もう年末年始の休暇体制に入られた方もおられるかも知れません。これらのメッセージが、新年にのぞむ何かのヒントになれば嬉しいです。2021年が、落ち着いた、平和を取り戻す年になることを祈りつつ、、、。

良い新年をお迎えください。