NRF2021リポート ③  < 2021年 小売の10トレンド >


 2021年の小売業トレンド予測を、NRF(米国小売業協会)が大会前の12月11日に公表しています。NRFリポート③ではそれをご紹介しましょう。コロナ襲来からほぼ1年。ネット販売の急成長 (2021年1月の米国ネット販売は前年対比29%アップ)、DX =デジタル・トランスフォーメーションの急進展 (NRFは10年分を9か月で達成と)、働き方の変革と起業意識の拡大、などをかみしめながら、この10トレンドを次なる飛躍の鍵として、考えてみたいと思います。

 NRFはまず、昨年同社が予測した2020年小売りトレンドをレビューし、「“小売サプライチェーンの大変革”、“再販/リコマース”、“顧客ジャーニー向上の革新的手法開発”、の予測は的中した。しかし2020の最大の学び(=変革)は、Eコマースへの急激なシフトであった。「消費者は意欲的にネットショッピングに取り組み、小売業はテクノロジーを駆使して新アプリなど顧客ニーズに対応する新手法で顧客ニーズに対応。コンタクトレスやフリクションレスの言葉が拡散、従来の壁を破る企業が勝利しつつある」、と解説しています。

小売2021予測10トレンド:継続するもの・変わるものは?

以下に、NRFによる予測トレンドと解説を紹介します。加えて尾原のコメントも<加筆>しました。(画像はフルサイズ・ファッション DTCのHENNING)

①    DTCが新カテゴリーになった ニンブル(素早く軽快)な彼らは、それぞれの「パーパス(存在目的)」をテコに、顧客のこだわりに照準を当て、完成形へと注力中。完成型といえる、Stitch Fix, Glossierを目指して、Allbirds Casper が躍進中、と。  尾原コメント<コロナ拡大で消費者の意識や働き方が変容、新たなニーズが生まれている。命と生活への価値観が変わる中、失業などの影響もあり、起業する人が急拡大している。すべての成功は難しいだろうが、失敗が次の飛躍になることも、、>

②     未来はマルチチャネルへ ブランドは異業種、異業界とのパートナーシップ拡大。Everlane Birdiesがノードストロムと連携したり、Headspace Spotifyとパートナーを組んだり。コロナのおかげでトップが目覚め、スピード、復元力、対応力向上のため5Gなどへの投資が拡大、今後も継続。  <社で進めるオムニチャネルとは別な次元で、マルチチャネル化が進んでいる。テクノロジーの多様な活用もあり、5Gの帯域幅とスピードアップが必要となる>

③   リバース・ロジスティック技術への投資突出 より持続可能なサプライチェーンへ。多くの実験が進む=ダークストア(店を商品販売でなく在庫フルフィルメントセンターに)、ゴーストキッチン、マイクロ・フルフィルセンター、SCが物流センターになる、など。返品コストを軽減する方策も。サステイナビリティは2020年やや失速気味だったが、CO2削減もふくめ、長期的には主要目標。  <サステイナビリティでは欧州に後れを取っている米国だが、パンデミックの落ち着きと共に、戦略的課題としての取り組みが、社会意識の強い企業の主導で進むと思われる>

④   ライブストリームが舞台中央へ デジタル11エコシステムの急成長分野。2021年には倍増=$1200億になる、と。デジタル・サヴィーな顧客は、商品だけでなくブランドとの繋がりを求めている。  <リアルでなくても、あたかもリアルのよう流れる動画で、双方向のコミュニケーションをしながら、気に入れば即購入ボタンも押せる。ブランドと個客のつながりが深くなれば、非常に大きな販売/エンゲイジメント手段になる>

⑤    ロボット活用 食品配達・自動配達車はもはや新規ではなくなったが、トップの座を占めるのはまだ。実験加速、コスト低減が期待される。店内ロボットはビジネス課題解決ため、データ収集とプロセス構築へ。ドローンは省エネ、サステイナブル手段として可能性大。  <ここでも多くのスタートアップが創意工夫の開発を進めている>

⑥    SCは顧客心理に合わせ進化を コロナ後に顧客を取り戻すには、エキサイトメント不足で旧態的な百貨店アンカーの重層構造モールではダメ。顧客心理に合致する小型環境が重要。SCをシニアハウスや医療施設、コミュニティカレッジなどへの転換するのも一案だが、地元の反発がないように。  <消費者の意識はローカル(地元)に向いている。地域密着で住民のハブとなるSCを> 

⑦    タッチフリー技術が主流に バーチャル試着室、デジタル鏡とSNSをつなぐインタラクティブでパーソナルな体験など。ARによるバーチャル試着は返品率の減少に貢献。資生堂のお肌チェック、日本企業の足で踏む自動販売機、アマゾンのpalm(=手のひら)支払いAmazon Oneは、認知、入力、支払いが1アクションで完了、など。  <コロナ収束後も、便利さとともに衛生観念を身につけた消費者は、コンタクトフリーを好むと思われる>

⑧    ソーシャル・コマース(SNS)の成長が他業態を超える 面談困難の中、SNSが特権感覚、買物と支払をフリクションレスで行える手段として拡大する。2020~2024間に年平均上昇率31%、売上額2兆ドルになるとの予測も。シームレスの新たな意味に。フェイスブック、インスタグラム、Twitch、TikTok、ピンタレスト、ショッピファイ、などがリーダー。  <拡大するSNSの世界的支配力には、恐怖心すら感じるが、良い面を活用しながら必要な改善や規制を進めねばならない

⑨    オンデマンド生産で顧客対応 これまでも言われてきたがあまり実行されなかったオンデマンド生産は、顧客のニーズに合わせ受注生産するので在庫のミニマル化が可能。サステイナビリティの潮流にも合致し、地元生産拡大の可能性も秘めている。優れたデータとそれを最適に活用するテクノロジーが課題。ZARAが見本だが、DTCも素早く学習中。  <日本は島精機のホールガーメント編み機などのテクノロジーや産地の製造技術を持っている。これを何とか活用する体制を、小規模メーカーが消滅しないうちに確立し、世界をリードしたい。それには発想の転換とDXが不可欠>

⑩    デジタル・トランスフォーメーションは出発点 2020は、必要に迫られて、ネット購買、カーブサイドピックアップ、フリクションレス支払い、その他の多様なアプリの開発が進み、9か月で10年分のDXを達成した。これは出発点。2021はこれを、いかにオムニチャネル・エコシステムに組み込み収益性に繋げるかだ。EC・店舗・SNS の全てで顧客とスムーズに繋がることができる企業が、消費者にとってのオムニ存在となる。鍵は5G。リモートワークで学んだとおり、安定した途切れない通信と帯域幅が不可欠だからだ。  <米国で急進したDXは戻ることのない新たなエコシステムづくりへと進化を続けている。そのスピードの速さ。またそれが、血流でいえば、大動脈レベルではなく、毛細管レベルの活性化、つまり消費者と商品/サービス提供者間の細かなインタラクションで起こるようになっている。5Gの重要性もあらためて痛感する>

 デジタル・トランスフォーメーションでは大幅な遅れを取っている日本が、一日も早く新たな発想とテクノロジーの活用で、時代の先を見据えたエコシステム構築に取り組むことを切に願っています。                      End