2017年 2月 の投稿一覧

<NRF(全米小売業協会) 大会 BIG Show レポート 第1回>

 恒例のNRF (全米小売業協会)年次大会が、115日から3日間、ニューヨークのジャビッツ・センターで開催されました。参加者は米国ばかりでなく世界 95カ国から 35000 人を超え、展示場では 512 社が機器やソリューションの展示とデモを繰り広げました。 

 今年の焦点、あるいはメッセージを一言でいえば、「いよいよテクノロジーが実践の場に入る」です。

NRF大会の大ホールのステージ: ニューヨークで開催される世界最大の小売りイベントを強調

 今年のNRF大会は、筆者にとっては、1987 年以来、 31 回目の参加。この間一念も休むことなく精勤を果たしたことになります。厳寒のニューヨークで 3日間(昨年までは足掛け 4日間)缶詰めになるこのイベントに、なぜ 31 年も欠かさず出席しているのか、と驚かれます。その理由は、この大会が、消費財を 扱うあらゆるビジネスの最重要ステージである「小売」にフォーカスしていることで、時代の変化の潮流をつかむ定点観測として非常に価値があるからです。まず、大手のテクノロジーやソリューション会社あるいはコンサルティング会社が、それぞれ自社の最新・最重要のコンセプトや考え方あるいは技術やノウハウを、しのぎを削って提示・発表します。また、その年に抜きんでた戦略や革新で話題を呼んだ企業や成功した企業の幹部が講師を務めることも魅力です。

さらに重要なことは、このタイミングでNRF Nasional Retail Federation=全米小売業協会)の総会も開催されるため、会員企業のトップが集結します。それらの経営者が、講師としてばかりではなく聴衆として、他社事例や最新の考え方などに耳を傾け、質問をしたりするのです。日本のこういった大会では、講師は自分の講演部分だけに参加する場合がほとんどですが、超多忙な経営トップが他人の話やプレゼンを聞くということに、アメリカの進取の気性とパワーを感じます。

 私のお目当ては、まず第 1に、注目講師のプレゼンや先端的企業事例をセミナーやフォーラムなどで学ぶこと。第 2には、テクノロジーの進化とそれらが実際の企業活動にどう取り組まれていくのか、を探ること( 500社以上の展示ブースを回るのは容易ではありませんが)。第 3には、会場で出会う経営トップや有識者、研究者や学者と意見交換をすることです。この時しか会わない人も多いのですが、わずか 10分や 20分の立ち話であっても、プロの人達との的を絞った先端的動きの共有や意見交換は、素晴らしいものです。

 今年のセミナーは、昨年より焦点を絞った約70が 3日にわたって同時進行で行われました。それらは参加者の便宜のため、次の6つのトラック(カテゴリー)に分類されていました。すなわち:

   グローバル・リテーリング(世界小売動向、越境ECなど)、

   ラディカル・リテーリング(ラジカル=急進的な新ビジネスモデル、起業事例も多い)、

   小売店舗(未来的店舗の紹介、ストア・デザイン、ニューヨークで話題の新店舗ツアーなど)、

   マーケティング&広告(モバイル、ソーシャルなどで変容するマーケティング)

   小売の組織(オムニチャネル対応など 新しい組織の在り方、等)

   顧客エンゲイジメント(顧客体験と長期的ロイヤリティの構築、など)

これらのほか、9つの基調講演がありました。次回は、基調講演を中心に、NRF 2017 のハイライトをお伝えします。

< ニューヨークの日系人会で講演して思う  ニューヨーク50年の変化 >

新年早々の、1月13日、ニューヨークで「女性実業家の会」で講演する機会をいただきました。
演題は、 『 Fashion Business―未来は予測するものではなく、創るもの』 ―日米ファッション産業の発展・成熟の50年史から未来を見る。 ーグローバル時代の日本企業と個人の課題― 。
主催は日系人会 (Japanese American Association)の「女性実業家の会」(代表・石田圭子氏)で、ジャパン・ソサエティの桜井本篤理事長も来て下さり、男性も含め100人を超える在ニューヨークのビジネス関係者が参加くださいました。「女性実業家の会」運営委員の平山幸江さん(小売コンサルタント)や、日本FIT会ニューヨーク支部長の杉本佳子さん(繊研新聞ニューヨーク支社長)のお声がけにより、FITをはじめとする大学在校生や卒業生も多く、参加者皆さんの熱意が会場に満ちあふれた会でした。参加者からも、多くの刺激やインスピレーションをもらった、と言っていただき、嬉しい、また貴重な体験になりました。(下記リンクは、講演会に関する記事)

1月21日号 「週刊NY生活」 週刊NY生活 page12 (「週刊NY生活」は日本人に役立つNYのニュースやコラムを掲載する高質のフリーペーパー。発行人&CEOは三浦良一氏) スピーチ中の尾原ビデオ: https://youtu.be/UOgwVmm4-RQ
一番感動したのは、女性がみな元気なことです。日本で出会う女性よりも伸びやかな感じがしました。日本の外に出て、言葉はもとより文化や慣習の異なる外国で、キャリアを進めている、あるいはその努力をしている女性たち。日々の苦労も並大抵でないと思いますが、自分のキャリアの進め方や、考え方について積極的に意見を求める人。言葉のハンディや日本人特有の「控え目」から抜け出せない悩みにアドバイスを求める人、あるいは、将来は日本での仕事を求めるべきかどうか迷っている人などが、次々に話にきてくれました。皆、将来はさらに成長して、いろいろな分野のリーダーになる人たちだと感じ、心からGood Luck! 、ご健闘を祈ったことでした。
実はニューヨークは、私のキャリアの原点ともいえる街です。初めてニューヨークを訪れたのは1956年、AFS高校交換留学生として1年をミネソタ州で過ごした後、その年の世界各国からのAFS留学生総計800名超が、首都ワシントンに集結した後、ニューヨークに5日間滞在しました。エンパイアステートビルをはじめとする摩天楼に圧倒された記憶が鮮烈です。
キャリアとしては、FITに留学したのが今からちょうど50年前で、ファッション・ビジネスへの道にコミットするベースになりました。50年前の、1967年のニューヨークは、本当に華やかでした。5番街にはオシャレなファッション店と世界の航空会社(当時の花形企業)のオフィスがひしめいていました。バーグドルフ・グッドマンやティファニー、サックスは今も健在ですが、DePiena や Bonwit Teller、Best & Co.、 B. Altman などの上品なファッション専門店や百貨店は、無くなってしまいました。代わりにいまは、H&M や ZARA、UNIQLO などが存在感を誇り、アップルやマイクロソフトの旗艦店が人であふれている、5番街になりました。
ボンウィット・テラーは、実は私が FIT の Co-Opプログラム(正規のミニ・インターン)で6週間実習をした店です。当時はサックスと並び称される、オシャレな老舗の大型ファッション専門店で、販売員もプロフェッショナル。それでいて親切で、コミッション販売のノウハウを教えてくれたものでした。それがなんと、建て直されてトランプタワーに! そのオーナーが、何とアメリカ大統領に! まさしくディスラプションの時代の到来です。
執務開始早々から話題・難題を振りまくトランプ大統領が率いるアメリカが、今後、どのような展開を見せるか。ここにも時代の転換点があります。
次回は、NRF(全米小売業大会)のハイライトをご紹介しましょう。