<ファッション・ビジネス領域の広がり――ビューティとファッション>


「ファッションとビューティ―-感性価値創造に取り組む先端ビジネス」のテーマで話して欲しいとの依頼を受けました。学校法人 メイ・ウシヤマ学園が設立したハリウッド大学院大学のエクステンション・スクールでの講演です。(6月6日18:30~で参加は無料ですが、事前の申し込みが必要です。申し込みはhttp://hollywood.typepad.jp/mba/files/20120606.pdf で) 

「ビューティ」とはせまい意味では「美容」ですが、もともとの意味は、「美」であることは言うまでもありません。私は美容の専門家ではありませんし、エイボン・プロダクツ社の社外役員も務めましたが、毎朝のお化粧に5分も使わない人なのです。けれども「美しくありたい」との願いは一般の女性と同様に強いと思っています。

「ファッション・ビジネス」はアパレルやアクセサリーのビジネスと思う人が多いようですが、実は「美」を扱うビジネスとしての化粧品は、アパレルよりも歴史も古く、「高付加価値」、すなわち製品の物的価値(原料費や生産コスト)を遥かに上回る小売価格で販売されるという意味で、アパレルの大先輩といえるでしょう。トップモデルを起用し膨大な広告費をつぎ込んで、世界的なブランドに育てることにより、巨大なビジネスを確立した企業が多いからです。

「ザ・ファッショングループ・インターナショナル」という女性プロフェッショナルの国際組織がありますが、1928年にニューヨークでこの会を立ち上げた女性リーダー17人には、エレノア・ルーズベルト大統領夫人、ヴォーグの編集長に加えて、エリザベス・アーデンやヘレナ・ルビンシュタインなど美容界の大物が名を連ねていたことからも、その重要性が分かります。(アパレル関係者はまだいませんでした。)

ファッションの領域は大きく拡大

「ファッション」と 「ビューティ」 ビジネスの相違点は多いのですが、当ブログのテーマ、「時代の潮流」として見ると、重要な共通点があります。

それは、生活が豊かになり人々が個性的になった事により、「服」も「化粧品」も別個で無関係なものではなく、個人の生活や生活スタイル(ライフスタイル)あるいは人生を作る重要な道具になって来たこと。そのために、ファッションもお化粧も、自分に無いものを外から着せつけたりメイクアップする(補う)のではなく、個人が持っている良さを引き出す方向に動いている事です。 (図はアパレルを中心としたファッションが、個人の生活・生涯作りに関わる領域に広がっている事を示したものです)

また、ファッションやビューティを考える上で、「健康」や「環境」、「心・情」(精神や感情)、「知・美」(知恵や美意識)などが、重要になっていることも付け加えたいと思います。

奇しくも先週発売された「ヴォーグ」誌の7月号は、いまヴォーグが世界に向けて出来ることは何かを考えた結果、「ザ・ヘルス・イニシャティブ」プロジェクトを全世界のヴォーグが一体となって推進することを宣言しています。不健康なほどに痩せたモデルを見て、読者が無理なダイエットをしたり、また、精神的にも身体的にも未成熟な少女モデルを見て「理想のボディ」と誤解する事が無いように、「ヴォーグは今後、16歳未満のモデルや、摂食障害を抱えたモデルを起用しないことを決めた」というものです。

また、5月31日付のニューヨーク・タイムス紙は、ファッション欄で、「黒人女性は自然の縮れ毛へ移行」の記事を掲載し、「これまでストレートヘアにする為に化学物質を使ってきた人たちが、自然回帰している」と述べています。

より心地よい生活、より美しい自分を作るために、私達は次のような進化をしてきたと思います。

「身づくろい」→「身だしなみ」→「おしゃれ」→「流行」→そして今「スタイル」。ここで言うスタイルとは、「My Style」とでもいうべき「自分ならでは」、「自分の個性が生きている」ファッションです。

これからの時代の価値創造は、この、個人の個性と感性にアッピールする「感性価値の創造」、つまり「個人が自分の価値基準で感知し評価する情緒的価値」の創造と提供でなければならないと、私は考えています。

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<転機を迎えたファッション・ビジネス>⑦米国で人気の日本ストリート・ファッション店“Tokyo Rebel”


ニューヨークに TOKYO REBEL というパンクやロリータ・ファッションで人気のブティックがあります。店名を訳せば「東京の反抗」とでもなるでしょうか。マンハッタンのイースト・ビレッジ Avenue B に、福田昌代さんとジェフ・ウイリアムスさん夫妻が200910月にオープンしたお店です。

福田さんは現役の看護師さん。ニューヨークの総合病院で循環器系専門の看護師として週3回勤務しながら、お店を運営。休日はもちろん、仕事の間も休み時間を使ってお店や取引先とメールやテキストメッセージで連絡をとる、バイヤー兼ショップのオーナーです。

(写真は扱い商品。ホームページより)

もともと原宿ファッションが好きだった福田さんは、夫のジェフさんと「自分の会社を作りたい」と考えていたこともあり、ニューヨークで原宿ファッションを買える店が無い事に気づき、小売ビジネスの開業を決意したのだそうです。

扱っているブランドは、Baby, the Stars Shine Bright、Alice and the Piratesなどロリータ・ファッションの世界でのトップ・ブランドや、日本を代表するパンクファッションSEX POT ReVeNGeをはじめとする人気ブランド。ホームページには、「Tokyo Rebelは、ニューヨークで唯一の東京ストリート・ファッションの店。ロック、パンク、ゴシック、ロリータ等、すべて東京・大阪から直輸入。KERA等に掲載されている本物。コピーや真似モノではありません。」と書かれています。(お店の入口:ホームページより)(ホームページは http://www.tokyorebel.com/ )

顧客層は幅広く、大学生位の年齢の人が多いものの、高校生や30代40代、ファッションによっては50代くらいのお客も多いとのこと。職業も、FITやSchool of Visual ArtやParsons等の学生、ファッション業界の方のほか、歌手やウォール街で働く専門キャリアの人もいるそうです。「お客様は、それぞれ自分の雰囲気に合ったものを、自分流にアレンジして楽しんでいるような印象です。着用の場面は、例えば、お茶会を開いたり友達を誘って出かけるなどの特別な日、Japan Dayなど日本テーマのイベントやライブコンサートに行く時、などが多いようですが、お洋服のデザインによっては、ロリータやパンクをカジュアルダウンして普段のお仕事や学校に着ていくお客様もおられます」と福田さんは言います。(下はTokyo Rebel を起業した福田昌代さん)

Cool Japan を購入できる場所を!

私がこのTokyo Rebel を紹介したいと思った最大の理由は、3月開催したFIT特別セミナーの講師ヴァレリー・スティール氏(FITミュージーアムのチーフ・ディレクター)が強調したこと。すなわち 「Japan Fashionがどんなに素晴らしくても、実際に買える場所が無いと、何も始まらない」でした。「顧客の視点に立って、買ってもらえるようにする」努力を、日本は怠っている、とのメッセージでした。福田さん夫妻はそれを実際にやっているのです。

私が感銘を受けたのは、                                                 ①「大好きな原宿ファッションを売る店が無いからやってみよう」という米国らしい起業の動機、             ②看護婦の仕事を続けながらの兼業(アメリカではよくあるケース)、                        ③インターネット販売、特にソーシャル・メディアなどの新しい販売・コミュニケーション手法のフル活用、       ④仕入れは自分が気に入ったものを、ネットを中心に行う、です。                       いずれも、これまでのファッション小売店の開業にはなかったやり方です。

特に感心したのは、小売価格の設定です。日本から製品に付いてきた値札の小売価格(円、表示)をその日の為替レートでドル換算したものを販売価格とし、これに配送料を少額加算するだけ。このシンプルな手法は、手間が省けるだけでなく、店内に置かれているKERA等の雑誌の情報もそのまま生かせるからです。

(写真はTokyo Rebel店内の“What’s New"告知:新入荷アイテムの紹介と、その日の為替レートの表示。2010年1月撮影)

ソーシャル・ネットワークの活用は、繁華街とは言えない地域にブティックを構えるTokyo Rebelにとって、非常に重要になっています。「テレビも雑誌もどのメディアも重要ですが、特にインターネットの影響はすごいと思います。SNSの顧客は、現在、Facebookが約7000人、Twitterが1000人。イベントもこれまで、弊社ウェブサイトやFacebook、twitterで告知してロリータモデルの青木美沙子さんのサイン会と、また別の日に日本からスカイプで参加して頂いての交流、お茶会、そしてBaby, The Stars Shine BrightとAlice and the Piratesのデザイナーさんたちによるサイン会等を開きました。モデルさんやデザイナーさんとの交流や、お客様への限定商品のプレゼントなどが、お客様に非常に喜ばれて、今でもその時の話をされるお客様を見かけるとやはり嬉しいです。」

初めて福田さんにお会いした2010年1月、異国でのショップ立ち上げの勇気をたたえた私に福田さんは「米国では会社の設立は簡単。もっと多くの人が挑戦しても良いのに、と思います」と言われた事が強く印象に残っています。しかし、今あらためてその事に触れると、「“会社として州に会社名を登録すること”にはお金もあまりかからないし、手続きもかなりシンプルです。ただ“異国で会社を運営する”にはやはり現地の事情に詳しいパートナーが重要です。私の場合はアメリカ人である夫が共同オーナーとしてマーケティングや会計で大きく関わっていますし、専門の会計士へ相談もします。文化や考え方の違う色々な人との関わって行かなければならない。今も毎日がチャレンジです。やはり円高にはかなりの影響を受けています。」とのコメントを頂きました。

しかし、私は福田さんの中に、自分が大事と考える事を実行してみる勇気とチャレンジ精神を強く感じました。これは、留学にせよ、仕事のためにせよ、一人で異国に出かけていく勇気とキャリア目標を持った人のほとんどに、共通する事です。

私はこれが、Japan Fashion の海外進出に不可欠な、「意志と勇気ある行動」であると考えます。

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<ファッション・ビジネスの潮流が見えた! 「FIT特別セミナー」から―その6>


3月21日に開催された「FIT特別セミナー」をまとめて振り返ると、大きく変容する今後のFB(ファッション・ビジネス)の潮流が見えてきます。 

3人の世界をリードする講師陣陣が、経営者の立場(柳井正氏)、教育者の立場(FITブラウン学長)、ファッションの立場(FITファッション美術館ディレクター)で熱っぽく語った講演から、私は時代の潮流として次の3つを感じ取りました。 

1.これからの成功する企業とは、

  「物売り発想」を脱皮し、「志」(ミッション=使命)をもって革新を続ける会社

2.これからの成功する人材とは、

  「幅広い教養」を持ち「変化」に臆せず、異文化等の「多様性」に柔軟かつ自律的に対処できる人 

3.これからの成功するファッションとは、

  「社会の変化」に根差し、「文化の蓄積」を「消費」ではなく「消化」した上で「新たに創造する」もの

 一言でいえば、これまでの、「ファッションのトレンドを表面的に追う、視野も能力範囲も狭い専門職と金儲け志向の経営者が、短期勝負を繰り広げる」 ファッション・ビジネスから、「社会の要請に応え、 高い資質と幅広い能力とグローバル感覚をもつ人材が、感性と文化に根差した価値創造の革新を続ける」ファッション・ビジネスへの転換、と言えるでしょう。 

柳井正氏(ファーストリテーリングCEO)のメッセージ「3・11は日本の岐路。日本がメルトダウンしないためには、日本は変わらねばならない」の通り、日本はいま、大きな転換期にあり、ファッション産業も大きな変革を迫られています。しかし、これらのFBの潮流は、決して日本に限るものではありません。

FITのブラウン学長は、「テクノロジーとグローバル化がファッション業界を大きく変えている。これから先、優れた成果を上げる人材育成の中核は、一般教養、学生がみずから成長する環境作り、創造性と革新性重視、グローバルで多様な能力の醸成、にある」と強調しました。

FITでは、一般教養を通じてこそ学生が批判的に考える(適切な質問をし、問題を分析・解決する)力が身につく、と考えている。学生は専門分野に加えて、一般教養を学ぶことで、キャリアの中核をなす世界の文化に触れることが出来、また彼らが直面せざるを得ない法的・倫理的なビジネスの問題にも、触れることが出来る」。 「米国業界のプロがここ数年、我々に強く求めているのは、文化的に洗練された人材、世界に開かれた目と批判的に考える力を持ち、コミュニケーションが出来る人材だ。ある広告代理店のエグゼクティブは、面接の最後に必ず『どんな本を読んでいるか』そして『なぜ?』と尋ねるという。」 大学はこれに応えられる人材を排出せねばならない、というのです。

 FIT紹介パンフレット(Look Book 2011-2012)

“挑戦をしよう、旅に出よう、チャンスに賭けよう、時間をとって、飛び込もう”

柳井正氏は、ますます同質化・平準化が進むグローバル競争に勝つためには、「志」(ミッション)をもち、それを推進する勇気、革新を続ける企業文化を持つ会社でなければならない。どんな不利な状況でも志を持って最後まで頑張れば、それは達成できる、とし、

「良い企業とは、ブランディングすると同じこと。お客様が商品を買うのは、単純に商品のスペック性能機能を買うのではない。感情と共感で買う。だれが、どういった会社が、どういう思いでこの商品を作り販売しているのか?が重要。」 「企業は、自分たちは何者なのか? どこに向かおうとするのか?を伝えなければならない。」と強調。

ユニクロは原宿店オープン時に「革新的な服を開発して世界中の人々の生活を豊かにする。それを、経営者だけでなく、社員の顧客にも徹底すること」をミッションに掲げました。

「あらゆる人が良いカジュアルを着られるようにする新しい日本の企業です」と。そしてその後のファーストリテーリング設立時には、さらに「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」に進化させて、社内は勿論、顧客や取引先、株主等の関係者と共有しています。 

これからのグローバルでフラットな時代、とくに物質的価値から精神的・感性的価値を求めるようになった先進国で成功するファッションとは、「社会の変化」と「人々の意識の変化」をふまえ、日本の文化的・ 民族的DNAをフルに活性化させて、感性豊かな、「ほんもの」、「世のためになるもの」、「美しいもの」 (真・善・美)を実現するものであると考えます。

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