<米国同時多発テロから20年―追悼と、危機対応のリーダーシップ>

  • 「9・11」 2001年9月11日火曜日 午前8時46分

 あの日は、突き抜けるような快晴。キラキラと、青空を背に朝日に輝く世界貿易センタービルに2機のハイジャック機が相次いで突入しました。。ニューヨークの FIT(ファッション工科大学) 8階の教室で、IFIビジネススクール幹部研修が進行中でした。1時限後の休憩時間に、何やら騒がしいので教室からロビーに出ると、南向きの大きな窓から貿易センター北棟の上部がもくもくとわき出る煙に覆われ、時折炎も見えました。状況が分からないまま、2時限目を継続。その間に北棟、ついで南棟が崩れ落ちました。飛行機が突入した瞬間を見た人も、ビル崩壊を目のあたりにして心臓が止まる思いをした人もいました。

 すぐに「テロ事件」とわかり、FITは州立大学であることから即「非常施設」に指定され、「正午までに全員避難・退去」の命令がでました。FITは貿易センターから 3.5 キロほど北に位置しますが、すぐ北にあるエンパイア・ステイトビルも、攻撃ターゲットになっているといったニュースも飛び交い、地下鉄も停止した街を、エンパイアを避けて大回りをしながら、全員徒歩で48丁目のホテルまで帰りました。途中でメンバーのための食糧確保と、小銭への両替(自販機利用のため)に必死の努力をしたことを思い出します。

 IFIビジネススクール学長で研修責任者でもあった私は、受講者(企業幹部)23名と関係スタッフ計28名の安全確保と、全員無事に速やかな日本帰国を達成する方策を、参加者の協力を得ながら、あの手この手で探り決断する高度に緊張した時間を過ごしました。

 犠牲になった方々や御家族に、改めて心からなる追悼の意をささげます。

  • ニューヨーク市長、ルドルフ・ジュリアーニ氏のリーダーシップに学ぶ

 この稀有で貴重な体験から多くの学びがありました。またこの自爆テロをきっかけにアフガニスタン攻撃やイラク戦争にエスカレートしていった米国。20年でアフガン撤退という敗北に至った米国のテロとの闘い、などが今後どう展開して行くのか。不安定な世界の政治・経済・社会情勢などについては別の機会に書きたいと思っていますが、今回は、この前代未聞の危機に、時のニューヨーク市長、ルドルフ・ジュリアーニ氏が発揮した、感銘深いリーダーシップについてご紹介します。(同氏はその後、米大統領選に絡む問題で弁護士免許一時停止の措置を受けていますが、同時多発テロへの対応では、「世界の市長、TIME誌 Person of the Year 2001」と評価されました。)以下、当時の繊研新聞への筆者寄稿をご覧ください。

 リーダーシップの不足、中でも「有事のリーダーシップ」が問われる今、あらためて、ジュリアーニ氏の言動に学びたいと考えます。

石倉洋子さんの 「デジタル監」就任に拍手! と NRF2021 第2ステージ大会報告

今日、正式に発足したデジタル庁の「デジタル監」に、一橋大学名誉教授の石倉洋子氏が就任されました。石倉さんは、私が非常に尊敬する世界的人材で、広い視野と高い視座、柔軟な発想、そしてスピード感と行動力をもつ人です。今、変革を迫られている日本、なかでも世界に大きく後れを取っている“デジタル化”という、旧態的考え方ややり方では不可能な事業のリーダーに、石倉さんが就かれたことに、最大限の拍手を送るとともに、応援したいと思っています。

実は石倉洋子さんは、筆者の仕事やキャリアにおける長年の友人、というより仕事における同士的存在でもあります。1970年に、日本の繊維ファッション産業の変革を目指して旭化成が始めた「FITセミナー」の通訳として8年間お世話になったのを契機に、以来、プロフェッショナル人材開発、ビジネスのグローバル化、変革をリードする経営者育成、人材の多様性や女性活躍支援など、私が力を入れてきた活動に、いつも惜しみなく協力と支援をして下さってきました。

日本女性初の、ハーバード・ビジネススクール博士号取得、ダボス会議での色々なセッションの司会者、など、日本人としては希少/貴重な経験もされている石倉さん。デジタル庁の喫緊の課題は、コロナ禍で明白になった行政サービスの不備をデジタル化で克服することにあり、「マイナンバー」の普及を中核に、国と地方自治体間のデータ共有や、官僚機構の縦割り打破、さらには教育や医療分野にも取り組まれることになると思われますが、多様な能力をもつ民間人200名を配下に、存分の力を発揮して下さることを祈念しています。

行政のデジタル化というこの動きは、当然ながら民間のビジネスにも波及し、わがファッション流通のデジタル化、DX(デジタル・トランスフォーメーション)の進展を促進すると期待しています。

「NRF第2ステージ リポート:

ニューノーマルとは 変化が常態になる世界」

コロナ禍をテコに、新たな未来に向けて、大きな変容を遂げつつある米国。デジタル・トランスフォーメーションが企業の勝敗を大きく左右しています。恒例の全米小売業大会の2021年度は2回に分けたバーチャル開催になりました。その第2弾のリポートを、昨日の繊研新聞でご覧ください。 (繊研新聞 2021年8月31日付け 9面 繊研新聞社より掲載許諾)

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<経産省「繊維産業のサステナビリティに関する検討会」 報告=新時代への設計図 >>

 

 異常気象、集中豪雨による熱海などでの土石流災害や、新疆ウイグル地区の人権問題で日本企業のグローバルビジネスに支障が出始めた、など、国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みの緊急性を痛感させる出来事が頻繁に起こっています。

 サステナビリティに繊維産業として取り組むために、経済産業省が今年2月に設置した、「繊維産業のサステナビリティに関する検討会」の報告書が、今日(7月12日)公示されました。報告書の副題は、「〜新しい時代への設計図〜」。まさしく繊維ファッション産業のこれから目指すべき方向とそのための具体的提案書です。

 筆者もこの委員の一人として、6回の情報共有やディスカッションや施策の検討に加わり、“サステナビリティ”が繊維ファッションに関わる産業にとって、いかに重要で、かつ緊急の課題であるかを、再認識しました。またZ世代と呼ばれる若者たちが、未来へ向けて商品やサービスのサステナビリティを、主要な価値基準としていること。さらに、“サステナブル”という新しい価値の創造が、低迷を余儀なくされている日本のファッション産業に新たな展望を拓くことへの期待も膨らみました。

 委員は、東大の新宅純二郎教授を座長とする、業界各段階を代表する企業や団体のトップ、関連分野の専門家で構成され、毎回、ゲストの有識者による重要分野の実態報告や事例紹介、問題提起を踏まえ、議論が進みました。主催者、製造産業局生活製品課長の永澤剛氏率いる事務局の意欲的な取り組みにも、共感しました。

 報告書は、膨大な情報や事例をふまえた提言を、35ページにまとめたもので、非常に意義深いものになったと考えています。また「概要」として、ポイントの箇条書き的まとめ(全11ページ)や、「プレゼンテーション・ポイント集」 もあります。(リンク→ 

https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/textile_industry/20210712_report.html

(6回の委員会議事録も閲覧できます。→繊維産業のサステナビリティに関する検討会

 

<報告書の内容> 

構成は、以下の通りです。

I.             繊維産業の現状

II.           サステナビリティに取り組む意義

III.          サステナビリティに係る現状と今後の取組

1.  環境配慮=限りある資源を有効活用するため、資源循環の取り組みを始める

2.  責任あるサプライチェーン管理=サプライチェーン上での労働環境や使用する素材    等に関して、責任ある管理を進める

3.  ジェンダー平等=社会的・文化的な性差によって差が生じない環境整備を進める

4.  供給構造=適量生産・適量供給に向けた取り組みを進める(過剰供給を是正)

5.  デジタル化の促進=サステナビリティに係る取り組みを進めていくため、デジタル    技術の活用を進める

 詳細は、是非本文をお読みいただきたいと思いますが、強調したい点は、この提言が、“官民一体となった未来へ向けての取り組み”であること。特に重要なのは、サステイナビリティ(持続性)の実現が、企業あるいは業界の努力だけではなく、消費者の参画・協力無しでは不可能であること。消費者=生活者は、サステナビリティにおける最も主要なステイクホールダー(利害関係者)であり、商品やサービスの購入を選択的に行うことで、サステナビリティ実現の成否を、強くコントロール出来る立場にあります。これについては、このブログの、先回、先々回で紹介した、米国アイリーン・フィッシャーの循環型モデルや、ドイツ通販大手 ザランド が顧客の商品選択ツールとして提示している、“サステナブル・フィルター”なども、参照下さると嬉しいです。

 下の、「サステナビリティに係る取り組みの全体像」は、これをよく表現した図です。(報告書「概要」より)

見出しの下にあるように、「繊維産業においてサステナビリティに係る取り組みを進めていくためには、企業及び消費者の取り組み・意識改革が必要」。そして、業界の川上・川中・川下とつながるサプライチェーンは(循環型モデルの場合はなおさら)消費者に深くつながり、その活動を投資家や社会が注視し、評価する、というのが全体像です。

 左下のカコミ、「サステナビリティに係る取り組みの例示」には、喫緊の重要課題が挙げられています。「環境配慮設計」、「店頭回収」(2次流通も含む)、「デュー・ディリジェンスの実施」、「国際認証取得」、「ジェンダー平等への理解・取り組みの実施」、「RFIDなどの活用」、「顧客を中心に置いた事業展開」、「生産工程の改革」など、いずれも日本が欧米先進国に後れを取っているものです。

 中でも繊維ファッション産業においては、女性の活躍がビジネスの発展に大きく貢献すると、報告書は書いています。下記は、「ジェンダー平等」のセッションでの尾原のプレゼン、「女性の活躍を阻む日本の問題」 のチャートです。(「ポイント集」に掲載。尾原プレゼン内容の詳細は、第4回委員会議事録でご覧いただけます)。これらは筆者が、長年、とくに2014年に設立した、一般社団法人 Women’s Empowerment in Fashion の活動を通じて痛感してきたことです。

 日本における女性活躍の遅れは、OECD発表の2021年ジェンダーギャップ指数の順位で、156か国中120位。G7でも最低です。報告書では、“本年6月のG7会議で発出された G7カービスベイ首脳コミュニケにおいても、「ジェンダー平等の達成は、意思決定のすべての側面において、女性の完全、平等かつ有意義な参画に支えられる必要がある」とされたところである”と紹介しています。最近株主総会などで、いわゆる「物いう株主」(アクティビスト)による、企業のガバナンスに関する株主提案が注目されていますが、日本企業の、女性役員や管理職の少なさは、グローバルにみれば、アクティビストが最も標的にしたいイッシューでしょう。

 報告書は、今後の取り組みとして①官民ラウンドテーブルの設置、②若い世代に対するロールモデルの提示や将来を担う若い世代にアンコンシャス・バイアスを打破するジェンダー教育の実施、キャリアイメージを描けるロールモデルの提示、などを提言しています。

 「サステナビリティ」という新しい言葉で語られていますが、モノを大切にし、資源の無駄使いをしないで人々の生活を潤すというのは日本が伝統的にもつ精神です。長い歴史と文化をもち、繊維産業の発展に貢献してきた日本。ノーベル賞受賞のケニア環境副大臣ワンガリ・マータイ氏が深く感銘を受け世界的ムーブメントにした 「モッタイナイ」の思想、あるいはDNAを持つ日本。丁寧に仕立てた着物や浴衣を、何度もリサイクルしながら最後は はたき や雑巾にし、さらに漆喰に塗り込んで土に還らせた日本がもつ、「サステナビリティ」の精神。 これを再度実現して世界をリードしたいと強く願うものです。                      

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