<NRF(米国小売業)大会2014報告⑥―“パーソナル化”で顧客の感動と信頼を得る>

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 『パーソナル化』も今年のNRF大会で、多く取り上げられたテーマでした。『パーソナル化』と言えば、これまでは、個人の好みや体型に合わせてカスタム・メードの製品を作るとか、名入れをするとか、あるいはアマゾンなどが、「あなたへの“お勧め”があります」と、購買履歴の分析にもとづいた提案メールを送ってくる、といった事が一般的でした。

 しかしテクノロジーの発達により、ビッグデータの分析が可能になり、他方、モバイルの普及により、生活者が、小型スクリーンで見やすいシンプルな表示や即アクション可能なメッセージを要求するようになって、パーソナル化もあらたなステージに入りつつあります。

 NRF大会での“The Future of Personalization : Making Science Look like Magic” セッション、訳せば「パーソナル化の未来=サイエンスを魔法のように」、を紹介しましょう。講師は、Facebookのニコラス・フランシェット氏(小売/Eコマース責任者)、のほか、Cornerstone Brands社(アパレル・ホームの 7 ブランド、Guilt Group、Garnet Hillsなど)のブライオン・コルビー氏(SVP)、Styliticsのザック・デイビス氏(共同創業者・CMO)、Joss and Main(インテリアのネット販売)のジョン・マリキン氏(共同創業者)です。

(プレゼンするコルビー氏と他の講師陣: NRF提供

 Facebookのフランシェットは、小売におけるパーソナル化を加速している トレンドとして、次の3点を挙げました。

  1. 発見(Discovery――人は、“欲しいものを買う”だけではない。期待していなかったものを発見して買うのだ。小売業は、「適切な商品」を、「適切な人」に、「適切なタイミング」で提示し、ブラウズ(見ること)をしてもらい、新たな“発見”体験になるよう注力している

  2.シーズン性(Seasonality――小売業は、諸データをこれまでとは違うやり方で切り刻みながら、「その瞬間」にふさわしい、顧客に意味ある提案をする。たとえばWendy’sがその町の天候にふさわしいサンドイッチを作る、など。

  3.圧縮(Compression――モバイルが全てを変えている。ビジネスが圧縮されているのだ。小売業は、かつての、大きな店で販売をするのが当たり前の時代から、パソコンでネット販売をする時代になり、いまやモバイルという、画面も小さく顧客を捉えるチャンスが限られている手段でビジネスをする時代に入った。

 ホーム関連商品のネット販売会社Joss and Mainマリキン氏は、自社の“パーソナル化”がいかに大変な活動か、を紹介。日に7~10種類の“キューレイト(テーマをもって編集)したストーリー”を作り、日に2万1000通りの異なるEメールを発信し、ホームページのバリエーションも3000万に及ぶと述べました。 作業は巨大。こんなことは誰にも出来ることではない。では、どこから、どのようにスタートしたらよいのか?

 パネラー達の答は、「まず、自社が最も大事にしているターゲットから始めよ」 でした。 マリキン氏自身も、「私自身、革命的な発見をした。ターゲット顧客に、過去のデータから、“ブライト色” と “ニュートラル色” のいずれかを提示する、という単純な事が、大きな効果を挙げた」 と語っています。 そして、 「パーソナル化は、顧客のための 『魔法の瞬間の創造』 」。優れたパーソナル・ショッパーが、顧客に、手持ちのものを補完する、ぴったりの商品を勧めるのと同じ。自分が持っていないものを提案された時の “喜び” と “発見” を提供するものだ。 パーソナル化は、科学ではなく、マジック (魔法) で感動させる(インプレス)こと」 とのべました。

 (次回は、パーソナル化でロイヤル顧客を取りこんでいる、セフォラ等のケースを紹介します。)