<NRF 2015レポート ②――Flux ゼネレーションが カオスの時代をリードする>

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 今年のNRF (全米小売業大会)で、日本のこれからにとって、最も重要だと思ったセッションを御紹介します。

 FastCompanyという、アントレプレナー(起業家)あるいはイノベーションを志向する人が好んで読むビジネス誌があります。その編集長で最高業務責任者も務めるロバート・サフィアン氏が、破壊的な変化が起こっている今、新しい人材像「フラックス・ゼネレーション」が強く求められている、と講演しました。

(Flux ゼネレーションを特集した FastCompany 誌 の表紙) 

 実はこの特集は2012年2月号に掲載されたのですが、その時点で私は目から鱗の強烈なインパクトを受けました。それが2年以上を経て、今年のNRF大会の8つの基調講演の一つに選ばれた事で、 私の先見性をちょっとばかり、誇らしくも思っています。(!)

 サフィアン氏は言います。 「今はカオスの時代。何時何が起こるか全く予想できない混沌の世界だ。これまでのビジネス法則が役に立たないばかりか、超スピードで変わる環境に対応せねばならない。 創造性の爆発が巨大な選択肢を生んでいる現在の世界で成功するには、新しいタイプのリーダーが必要だ。フレキシブルでアジャイル(聡明で素早い)、過去に例の無い新しい事を始めることを躊躇しない人材だ」。

 Flux ゼネレーションは、1990年代後半にFastCompany誌がスタートして以来、時代を革新した起業家、Appleのスティーブ・ジョブスやAmazonのジョセフ・ベゾス、あるいはFacebookのマーク・ザッカーバーグ等をインタビューしてきた経験を通じて、彼らの共通項から見た新しい人材像です。

 Flux(フラックス=流動とでも訳しましょう) は、ゼネレーションといっても、「世代」の意味ではありません。「今という時代」 と 「人のタイプ」、年齢ではなくマインドの問題だ と氏はいいます。従来のやり方に固執せず、柔軟でアジャイル。 成長のため、環境変化をTake advantage(利用)し、恐れずリスクをとる人間です。「最も重要なスキルは、新たなスキルを加える能力。」とも言っています。

 同誌は特集で、典型的フラックス達を紹介しています。第1回目の特集に登場したのは、20代後半から60代までの多様多彩な職業、経歴もそれぞれユニークな人たちです。たとえば写真中央の年配の男性は、永年同一企業に勤めたが、コンピュータ・グラフィックスで映画エイリアン等の特殊効果を担当後、晩年に独立。現在1200人を雇用するマーケティング会社を仕切っているひと。その左の女性は、ハーバードで建築を学び、ドキュメンタリー映画の監督,広告代理店やNPOや国務省を経て、いまコンサルタント。右端の男性は、ネット世界で急成長するスタートアップの一つ、ネット世界のマーケティング会社Mashableの創業者で28歳、と紹介されています。

 Fluxは、新たな仕事や環境に飛び込むことを恐れないばかりか成長のチャンスと喜ぶ人種なのです。

  「ファッションという伝統的業界でも、Fluxマインドは発揮されている。バーバリーは多数のアイフォンでショーを上から撮影しユーチューブで配信。トレンチコートの伝統を、テクノロジーでレレヴァント(今日の顧客に意味がある)にしている」。 ファッション産業が、ビジネスモデルとしては変化に乏しい業界とサティアン氏が考えている事は、ショックでしたが、確かにバーバリーの革新は、あちこちで取り上げられています。

  参加者へのメッセージとして、氏が送った「革新者から学んだ4項目」 は次の通りです

1.革新のアイデアをあらゆるところから見つけ出せ。イノベーションはサイロ(組織)間のギャップで起こるのだから。

2.自らのリーダーシップのあり方を再定義せよ。立派なデスクを定位置とするリーダーではだめ。革新を起こし続けなければならない。

3.自分がうまくやれることにフォーカスせよ。そして他を退けよ。

4.最も重要なことだが、自分のミッションを見いだせ。4PPurposePeopleProductProcessの中でも『目的(Purpose)』が最も重要。その目的が全てを動かす(Drive)するようにせよ。目的とミッションが明確であれば、うまく行かなかった場合も、その取り組みを誇りに思う事が出来る。

 サティアン氏の締めくくりの言葉はダーウィンの名言でした。

  「生き残るのは、もっとも強いものでも、もっとも賢いものでもない。もっとも変化に対応する ものだ」

  日本での「Flux ゼネレーション」の台頭を、切に期待しています。