(オムニチャネルについてのNRFレポートを書き始めてから、インフルエンザにかかったりで、時間が随分空いてしまいました。)
日本の業界では、今年が「オムニチャネル元年」だと言われており、いよいよ本格的にオムニチャネル戦略に取り組む企業がでてきました。
米国では2012年以来、いわゆる「バズワード」としてオムニチャネルの言葉が業界を駆け巡るようになっています。バズワードを、Wikipedia は、「定義が曖昧でありながら、権威付けする専門用語や人目を引くキャッチフレーズとして、特定の時代や分野の人々の間で通用する言葉のことである」としています。まさしくその通りで、「オムニチャネル」は、定義も明確でないまま、“ビジネスの新しい方向”として注目されているのです。
ちなみにコトバンク(知恵蔵2015)には、次のような説明が出ています。オムニチャネルとは:
「実際に存在する店舗での商品販売と、インターネット上のバーチャル店舗での販売を連携させた、新しい購買スタイルやそれらの取り組みを指す。「オムニ(omni)」には「あらゆる」という意味がある。顧客にとっては、どのチャネル(実店舗やネット通販など)で買ったかを意識せずに、あらゆるチャネルから購入できる仕組みである。また、販売側にとっては、実店舗とネット通販などで売る商品を分けて「どこで何を売るか」を考えるスタイルから、販売経路を顧客に合わせて「どのように購入してもらうか」と顧客中心に考えるスタイルへ変えていく必要がある仕組みとなる。
私は、オムニチャネルの本質は、下記の5つにあると考えています。
① Eコマースと店舗ビジネス双方の利点を最大化・最適化し「高い収益性」を達成すること:
―店舗での優れた感動体験を活かしながら、ECのコスト効率(売り場スペースや在庫・販売員の削減) を実現する
② 「顧客」と企業の関係の革新 : これまでの“企業の論理”から“顧客の論理”の重視へ
―「顧客主体・顧客主導」=「顧客セントリック」を実現、顧客がイラつかない買物体験を提供
③ 施策の全ては、顧客の利便性・満足・幸せのため: パーソナルな「個客」対応が重要
―パーソナル化でファンを創り、顧客の「生涯価値(LTV)」を高め、企業の長期繁栄につなぐ
④ コラボレーションが不可欠:サプライチェーンも含めた、統合的な仕組みづくり:
― 一社単独では実現できない。顧客を共有する企業(小売り・アパレル・SCディベロッパーなど)が、情報を共有し協働・協業する
たとえば米国のWestfieldモールでは、駐車場に入ってくる顧客の車のナンバープレイトを読み取り、その顧客の買い物頻度が高いショップに近い駐車スポットへ誘導するのですが、これもコラボレーションです。また日本の百貨店の一部で始まっている“タブレット接客”(売り場で接客するアパレル企業の販売員が、タブレットの在庫情報などを参考に顧客に最適な製品をお勧めする)もこれに当たるでしょう。
⑤ オムニチャネルどんな形をとるかは、企業の戦略による:
―顧客がイラつくことなく、必要な情報や商品を見つけ出し、発注し、商品を受け取り、満足を得る、という仕組みを、どこに重点を置いて実現するか? これこそ個々の企業が他との優位性を確保する方策です。
キーワードは:デジタル、Eコマース、スマホ、顧客セントリック、パーソナル化、優れた体験、なのです。