日本のファッションは、世界でもユニークな文化と歴史の上に積み上げながら、未来へ移行している、とスティール氏は強調します。
「ただ一つ、問題なのは、この優れたクリエイティビティを、どうやって世界に伝えるのか、です。」
ニューヨークでのJapan Fashion Now 展 は大好評で、「これが買いたい」、「どこで売っているのか?」、「ウェブサイトは?」といった質問も多かったといいます。しかし答えられなかったのが残念。「まずは消費者が簡単に買えるようにすること! それが大事。いまや、ごく小さな会社や個人がホームページで自分の作品を売るケースは増えている。また若い日本人女性がニューヨークで小さなブティックを開き、フェイスブックやツイッターで商品紹介やコミュニティ作りをしている成功事例もある」とした上で、ヴァレリー氏は次の8つの提案をされました。
<Valerie氏のサジェッション>
1.日本のPOPカルチャーの世界的人気を活用 →特にアニメが有効。日本のビジネスマンは、アニメなど子供の世界、ファッションには程遠い、とみている人が多いのではないか。それは間違いだ。日本のアニメは大人も含む世界の人を魅了している。これをテコにしない手はない。
2.日本の技術の優位性の強調 →日本は「優れた技術を持つ国」のイメージを持っている。車や電気製品に限らず、衣の分野でも、ユニクロのヒートテックなどは、そのイメージにうまく乗っている。
3.日本の高いサービスの活用 →日本のサービスは世界で突出している。これで世界を教育しファッションの販促が出来る筈。
4.日本をパッケージし、世界にプレゼンする →日本の生活や文化全体を総合的に体験できる仕組みを作る。観光を含む日本体験の企画・実施。日本が信じられないくらい安全で魅力にあふれる国であることを、VISIT Japanのプログラムなどで体験させる。
5. ネット販売に積極的に取り組む →VISIT Japanキャンペーンでも、全ての人が日本に来ることは不可能。しかし外国人に使いやすいウェブサイトを作ることで販売は出来る。特に英語でアクセス可能にすることが重要。サイズの対応も。
6.西洋の国の企業とのコラボする →Sacai のデザイナー阿部千登勢がMoncler のミニ・ラインをやっているように。それが世界への道を開くことにもつながる。
7.日本が優位にあるものを見つけ、海外に売る →例えば素材。日本のテキスタイルは非常に優れている。これを前に打ち出す。
8.世界のどの国よりも優位にある「Quality」→日本人はどの国よりも、クオリティに対する並はずれた感受性(敏感さ)を持っている。それも、いわゆるラグジュアリー(高級品)ばかりでなく「ステルス・ラグジュアリー」(隠れたラグジュアリー)とも言うべき一見普通に見える製品においてもだ。日本のクオリティはフランスやイタリアよりも優れている。そのことを日本人はもっとアッピールすべきだ。
ヴァレリー氏のこれらの提言は、日本ファッションを高く評価する世界の人達が、じれったく感じている点でもあります。
(ジュンヤ ワタナベのコルセットドレス。「若者のストリート感覚とアバンギャルドな創造性の合体」と 。)
日本ファッションの優位性は、「洗練されたテイストと最高のクオリティの微妙な表現」にあり、それはまさしく、「日本の中核をなす美意識」である、ヴァレリー氏は言います。またそれは、ラグジュアリー・ファッションの中核要素でもあるとも、彼女は強調します。ハイとローのミックスという日本独特のファッションも、この中核的美意識なら生まれるものなのでしょう。
日本が世界に誇れるものは、この「日本の中核をなす美意識」であることを私達は認識すべきです。スティール氏の日本ファッションへの思い、すなわち高い創造性、ハイとローの共存あるいは融合、高いクオリティ・レベル(価格を問わず高品質=世界が認める日本の得意芸)、感性と品質の融合、等を表現したものだと私は感じました。これからの時代に求められる感性価値の創造は、まさしくこれらの強みを発揮することによって達成できると思います。