ファッションや文化史を多様な視点からとらえ、気鋭の文筆家としてもファンの多い中野香織さんが、私の近著 『 Fashion Business 創造する未来』 について、ブログに書いてくださいました。
(中野さんのブログ http://www.kaori-nakano.com/2016/10/12/12653/ )
コメントで嬉しかったのは、「現状を俯瞰し、足元をもう一度見つめて未来を創造するために、深い思索を促す本です。4年がかりでまとめ上げられた大作は、新幹線片道で読める類の軽い本ではなく、相当な歯ごたえがあります。それゆえに、得るものもいっそう大きい。グローバリゼーションとデジタル革命がすすむさなか、新しい現象が生まれては消え、さらに新しい現象が続々起きているように見えますが、本当のところ、現実にいったい何が起きているのか。錯綜する現状を把握し、進路を定めるための灯台となってくれる本です。」と書いてくださったこと。また Facebook には、「きちんと整理された見取り図に、豊富な具体例。これだけのデータを集め、整理することがどれだけたいへんなことなのか…。 座右に置き、折に触れ参考にさせていただきます」ともあります。
中野さんは、おしゃれでチャーミングな女性ですが、物事の真相を深く読み取る鋭さを持っておられる方。嬉しかったのは、その中野さんのコメントであること。そして何よりも私が意図した〝ファッション・ビジネスの表面的事象や変化だけでなく、その底流にある人々の意識や社会の本質を見極めること。 ビジネスも単なる利益追求ではなく社会善を生む新たな存在として極めること″への努力を感じ取って下さったことです。
日本では、ファッションあるいはファッション・ビジネスが、表面的な流行や世相、あるいは金儲けのためのノウハウとして捉えられることが多いことを、私は日頃から残念に思っています。日本に欧米のような、ファッションやファッション・ビジネスについて深く研究するアカデミックな大学や専攻がほとんどない事が、それを何より物語っています。
中野香織さんは、その中で数少ない研究家といえるでしょう。東京大学の大学院、総合文化研究科で地域文化専攻博士課程を修められ、英国のケンブリッジ大学客員研究員を務められた経験などをふまえて、男女ファッション史から最新モードまでを研究・執筆され、現在は明治大学で特任教授としての講義もなさっています。
「ファッション業界の人は本を読まない」と言われています。でもこの歴史的な大変革の時代に、人や社会あるいはファッションがどう変化してゆくのかを、真剣に、そして深く考え、行動する人が増えることを、日本の将来のために願っています。
『 Fashion Business 創造する未来』 も、そのよすがとして是非読んでいただき、活発の議論を巻き起こしていただければ、これに勝る喜びはありません。
(『 Fashion Business 創造する未来』 2016年9月28日 出版。 定価2000円。お問い合わせは、繊研新聞社 03-3661-3681)