ファッション・ビジネスが大きく変容を遂げつつある。その中で成功し続けるためには、ディスラプト(既存の秩序を破壊)するような破壊的変革が必要だと考え、『 Fashion Business 創造する未来』の本を出版したと、先回 書きました。
変革の芽は、新たなビジネスの起業から生まれます。ファッション・ビジネスは変化のビジネスであり、次々に新たな会社が生まれるのが健全な状態なのですが、このところそれが停滞しています。そこで「ファッション・ビジネスでの起業」をテーマに、WEF 第 8回シンポジウムを開催します。
講師は、DoCLASSE 社長の林恵子氏と、メーカーズシャツ鎌倉の創業者で現会長の貞末良雄氏。11月7日(月) 18:30 から、場所は、青山のウィメンズプラザです。(ご案内は、WEFホームページ: http://www.wef-japan.org/event/888.html を) WEF第8回シンポジウム_ご案内
お二人とも、良い商品を、手ごろな価格で、顧客のニーズにマッチする形で提供するために、従来のファッション流通、すなわち、多くの中間企業が介在する重層構造を抜本改革する形の起業をされた方です。
林恵子さんは米国のランズエンド日本社の社長時代に、日本女性の好み、特にサイズやフィットをしっかりと抑えたおしゃれな服をネットで提供する会社を作る、という夢を持ち、10年前に DoCLASSE を立ち上げられました。40代、50代女性顧客の圧倒的支持をえて、現在では、外反母趾で悩む女性をふくむ履きやすい靴をあつかう fitfit も展開しておられます。店舗を持たず、消費者に直接販売する「ネット通販」が流通コストをミニマイズする、というコンセプトでスタートしたのですが、店舗を出してみたら、これがまた消費者からの情報が直接得られると同時に、顧客満足を一層高められる、と、自然な流れで現在話題の「オムニチャネル」に発展しました。ネットをフル活用しながら、実際の商品やコールセンターの顧客への対応は、非常にアナログ。企画や営業とコールセンターのオペレーターが大部屋に同居し、顧客の質問に答える際には、必要に応じて実際に顧客と同サイズの社員がその商品を着用してみる、などということもやっています。
メーカーズシャツ鎌倉の貞末良雄会長は、ヴァンジャケット時代に創業者、石津謙介氏の薫陶を受け メンズウェアの基本を徹底的に学ばれた方です。そして、日本のビジネスマンが世界で胸を張れるシャツを作り、高品質でもいわゆる高級シャツの 3分の 1 以下の価格で提供する夢を実現されました。そのためには、工場、それも高級なシャツ地を作る織屋さんや日本でも数少ない高レベルの縫製工場と直接、また緊密な関係を持つこと。工場への発注も、繁閑が少なくなるよう、売り場での展開をからませたマーチャンダイジングと連動させて行うなど、工場側の条件やニーズに合わせることに注力しておられます。顧客と工場、そして小売業である同社が、Win-Win-Win (三方よし)になること、がビジネスの基本哲学だといいます。2012年に、ニューヨークのマディソン街、世界的なメンズウェアの有名店がひしめく地域に出店。以来、優れた品質とサービスで、固定客を増やして、昨年末には、ニューヨークの金融街にちかい高級ショッピング・センター、Brookfield Place に第2店舗を開店しました。
DoCLASSE とメーカーズシャツ鎌倉の成功は、それぞれの創業者が、「これではよくない」、「真に消費者のためになるビジネスを始めたい」との強い思いをもって、取り組まれたことにあります。
日本は一般に起業が難しい国だといわれます。リスクを取りたがらないカルチャーや、資金調達の仕組みの未開発、また一度失敗したら再度ビジネスを行うことが難しくなる、という、失敗を許さない社会環境、などが、起業を阻んでいるからです。
しかし今、新たなビジネスを立ち上げる環境条件は、かつてないほど揃っています。ファッション・ビジネスの現状に不満な消費者、ネットビジネスの急成長、活用できる先端テクノロジーの拡大と低コスト化、などがあるからです。
想いの熱い起業家が、新しい時代を切り開くビジネスの立ち上げの、ヒントを得て頂けるシンポジウムだと思っています。ご関心のある方は、ぜひご参加ください。