NRF 2019 レポート: 世界最大の小売業大会からのメッセージ

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恒例のNRF(全米小売協会)の第108回大会が、1月13日から3日間 ニューヨークのハドソン川に近いジャービッツ・センターで開催されました。1986年以来毎年欠かさず参加して、今年が 34 回目。

それ以前には、NRFのトップセミナー講師としてニューヨークに招かれ、「日本のサービス、どこがちがう? What’s Different About Service in Japan?」 (1991年)のテーマで講演をしたこともありますが、この34年は、勉強に、あるいはプレスとして取材に出掛けています。

 毎年、変容するビジネスや新しいテクノロジーに触れ、業界の大御所あるいは新興企業のトップと話したりで、エキサイティングな体験をしますが、今年もまた、大きなインパクトがありました。

NRF 2019 会場 受付風景

  今年のテーマは、まさしくその 「インパクトーー小売ビジネスに与える衝撃」です。

NRFのセミナーはこれまで、業務領域別に「戦略」、「テクノロジー」、「マーケティング」などと分類されてきましたが、今回は全く視点を変えて、企業の革新をうながす「時代のインパクト物理的、心理的な衝撃)」に注目しています。その理由はビジネス運営が、専門や機能を超えて総合的に行わなければ勝てない時代になったからでしょう。

 具体的には6つのインパクトが挙げられています。 

  ◆パーパスフル(Purposeful)インパクト  =企業の存在意義・社会善

  ◆コミュニティ(Community)インパクト   =スーパーファンが創出する価値

  ◆オペレーション(Operational)インパクト =テクノロジー活用のスピード・自動化

  ◆人材(Talent-有能な人材)インパクト =プロフェッショナル人材

  ◆顧客体験(Customer Experience)インパクト=経験経済時代の新たなエンゲイジ

  ◆グローバル(Global)インパクト) =新たなパートナー・新市場・技術で成功を拡大

この詳細は次回にお伝えすることにし、今回は、NRF2019の概要と米国のファッション流通を取り巻く環境について書きます。 

 <NRF(全米小売協会)第108回大会の概要>

 今年の大会参加者は、史上最高の3万9000人、うち8500人が海外約100国から。ブラジルを筆頭に、カナダ、英国、フランス、ドイツと続き、日本も初めて391名、昨年より70人増を記録しました。日本の参加者がここ2年で大幅に増え、また主要企業のトップの参加も増えました。嬉しいことです。

 今年の特記事項としては、来場者数の増加に加え、展示企業数が大幅に増加。iLab (テクノロジーのスタートアップ展示)を含め700社になりました。セミナーも200以上が同時並行で進行する凄まじい大会です。 また今回初めて、女性活躍推進の狙いで、“Girl’s Lounge(ガールズ・ラウンジ)”も設置され、ここでも多くの議論が行われました。

 大物講師も、元FRB議長のジャネット・イエレン、ニューヨーク大学のスコット・ギャロウェイ教授(ベストセラー『the four  GAFA 四騎士が創り変えた世界』 の著者)、セレブの人気カップルChip and Joannaなどと多彩でした。

 景況感としては、経済環境の先行き不安はあるものの、失業率低下、賃金上昇などで高まる消費者信頼感を背景に、前向きな熱気があふれていたと言えますが、同時に、猛スピードで進行するビジネスの変容に、乗り遅れてはならない、との緊張感も感じられました。

 ただ、Eコマースの台頭と消費者のファッションに関する消費者の考え方や買い方の変化から、苦戦する小売業は多く、2018年の店舗閉鎖は7000店。ニューヨーク五番街で100年以上の歴史を誇ったロード&テイラーやヘンリベンデルも、年明け早々に消滅しました。生き残る条件は、「ECと店舗ビジネスの一本化」 と 「リアル店舗へのハイパワー搭載」、という新時代が始まったのです。

 デジタル世代の熱血起業家も台頭。このいずれでもない企業は、存在意義の再確認が不可欠になったと考えています。

 次回から、①NRF2019のテーマ、②注目したセッション、③DNB(デジタル・ネイティブ・ブランド)の台頭、④テクノロジーの浸透、⑤女性リーダー議論(NRF Girl’s Lounge)等についてシリーズで書くことにします。