「ファッション・ビジネスにおける留学」セミナーで、FITのエリカ・ローバック准教授は、FITにおける留学生の状況と、留学生のためのOPTと呼ばれるユニークな現場体験プログラム、について話しました。演題は「創造力をビジネスに直結させるスクール」です。 (写真はFITのエリカ・ローバック氏)
FITの全日制学生数は、2011年秋学期で1万300人ですが、そのうち留学生は11%、912人で67カ国から来ています。 国別にみるとトップは韓国で376名(留学生の41%)、 ついでカナダ、中国,インド、トルコで、日本は6番目。残念ながら日本からの留学生は、2001年の101人をピークに減り続け、現在は28人(3%)、直近の5年間では73%の減少、という事でした。
留学生に人気の専攻の筆頭は「ファッション・デザイン」で239名、ついで「ファッション・マーチャンダイジング・マネジメント」が182名、「アドバタイジング&マーケティング・コミュニケーション」が60名となっています。日本人の専攻で最多は「ファッション・マーチャンダイジング・マネジメント」、ついで「国際貿易&マーケティング、コミュニケーション・デザイン」です。
OPTプログラムは留学生にとって、FITの最もユニークな魅力となっている「実地訓練」の制度です。OPTとは Optional Practical Training の略称ですが、専攻の勉強(2年)が終わった後の1年間、実際にアパレルや小売企業あるいはデザイナー・ブランドに訓練生として就職し、現場体験を得る選択制のプログラムで、留学生の80%以上がこれを活用しています。報酬は、有給あるいは無給、さまざまです。
FITはもともと実学を理念としており、1クラス最大25名で双方向の参画型教育を行っていますが、OPTの制度は他の大学では提供できないもので、ここでもFITの “2+2” の制度、つまり、短期間で専門家を養成する目的で設置された2年制を基本とする履修構造が生きています。したがって最初の2年を終えた時点でOPTをとり、さらに2年の履修を加えて4年制学士課程 (“2+2”) を終了する人の場合には、OPTを2回体験することも出来ます。
「ファッション・ビジネスにおける留学」セミナーを日本FIT会が開催した主な理由は3つでした。
第一に、日本のファッション産業の発展は、グローバル化にかかっているが、そのための人材は極めて不足している
第二は、日本が、内向きになっていることへの危機感。特に若い人が、留学や海外駐在に魅力を感じない、あるいは不安に思っている問題
第三は、企業側も、海外留学体験のある人材を積極的に採用し、責任あるポストにつけて活用する体制づくりが十分でない事。
しかし嬉しいことにセミナーへの反応は大きく、当日は、留学を予定あるいは留学に興味を持っている大学生や専門学校生の申し込みが定員を大幅に超え、立ち見でいいから是非にという人達も多く、熱気にあふれたものになりました。企業からの参加も、ワールド、UA、ポイント、東レ、住友商事、畑岡など、業界をリードする企業の人事部長や経営幹部などが参加下さり、本当に心強く思いました。
日本も捨てたものではない! 一般論としては 「内向き」傾向 をメディアなどが書きたてていますが、集まった方々は、FIT卒業生によるパネル・ディスカッションなどで、「留学に失敗は無い」 「迷ったら、是非行く方を選択しなさい」 と激励され、大いに留学への期待が膨らんだようです。
(次回は、FIT卒業生による講演とディスカッションからのメッセージ)