<FBのNew Normal (新しい常態)③> 「わたしのサイズが無いなんて許せない」

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 ユニクロが、主要なベイシック商品について、サイズを大幅に拡大することが、新聞に大きく報道されました。それも業界専門誌(繊研新聞)ばかりでなく日経などの一般紙が取り上げています。

 New Normal(新しい常態)―その3 は、「全ての人に、サイズにあった服を提供する」です。  

「Made for All (あらゆる人に良いカジュアルを)」をうたうユニクロでは、「ファインクロス・シャツ」のサイズを従来の5種類から115種類に拡大したとの事。首回りを1センチ単位で36~50センチまで増やすなどして、「セミオーダー感覚で選べる」ようにしたといいます。日経では、ユニクロのほか、クロスカンパニーやそごう・西武なども、特定の商品で要望の多い「小さなサイズ」の拡充を図っていることも報道されていました。いずれも、大いに拍手を送りたい動きです。

 このサイズ拡充、すなわち「わたしのサイズが無いなんて許せない」への対応も、まさしくこれからの時代のNew Normalです。既製品として販売される衣料品が、ごく一部の標準的体型の顧客向けだけになっている、というのは、これまでは通用したかもしれませんが、容認しがたいことです。

 日本の消費者は自己主張が少なく、これまで「体が太っていたり 小さかったりするのは、自分が標準体型ではないから仕方ない」と諦め、「何故私のサイズがないの?」と主張することを余りせず、サイズの合わないもので我慢したり、お直しをしたり、あるいはオシャレそのものから遠ざかったりして来ました。しかし、市場が成熟し高齢化も一層顕著になって来た今、この「忘れられた人たち」にむけて、これまでなかったサイズ展開をする事は、ビジネスとして非常に重要です。

因みに米国では、その名もずばり“The Forgotten Women”とする婦人服専門チェーンが1980年代の終わりには誕生して、話題を呼びました。またノードストロム百貨店では、80年代後半に既に、PBのメンズのボタンダウンシャツでは110を超えるサイズ展開、ローファーズの靴でも約90のサイズを用意していました。サックスなど、大きなサイズを扱うのを長い間ためらっていた高級専門店も、いまはこの顧客に力を入れています。

もう一つ重要なことは、日本のファッション業界では、標準的体型を「レギュラー」サイズとし、それ以外を「イレギュラー」と呼ぶことが当たり前になっているようです。しかし、「イレギュラー」とはいかにも半端もの、という感じの表現で、お客様に対して非常に失礼なことです。そもそも人の体型は、個性そのものであり、顧客の個性を重視しながら商品企画や販売をする事が不可欠であるファッション・ビジネスでは、許される事ではありません。米国では、小さなサイズを「プティット」、大きいサイズを「プラス・サイズ」「フル・サイズ」などと呼んでいます。

この「レギュラー」「イレギュラー」の概念は、高度成長時代にビジネス上の効率をねらって、不特定多数の最大公約数的体型を「標準」とし、それをファッションのコア市場とするところから始まっています。

しかし現代のように、あらゆる体型、あらゆる所得、あらゆる職業の人が、それぞれ自分に合った衣服を選択し着用する時代には、業界は、全ての顧客を、1人ひとりの個性として考えねばなりません。売り手側で勝手に決めた「標準サイズ」にはまらない顧客は、見捨てても十分売り上げが取れる」と考えていると、パイの奪い合いはますます激化し、収益を上がらなくなるのは目に見えています。 標準サイズ以外の市場は、サイズも多岐にわたり、リスクが大きいと考えられていますが、その中のある部分をターゲットとして、魅力ある商品を開発すれば、従来は不可能だったネット販売やソーシャル・メディア活用で販売を広げることが可能な時代になっているのです。

 New Normalとして提案したい事が3つあります。

1.お客様を、サイズ体型の「レギュラー」、「イレギュラー」で区分けするのは止めよう。

2.「標準体型」以外の市場は、オシャレな服の提供が不十分であったため、潜在需要が大きい。

3. ネットやSNSを活用し、コミュニティをつくるなどして、オシャレな「マイノリティ」消費者のファッション購買を促進しよう。