日経ビジネス(10月15日号)の「世界に誇るニッポンの商品100」特集の、「誇る商品」4分野のうち、今回は Part 3 「日常に入りこむ『ニッポン』=世界の暮らしを変える消費・サービス、について、その感度、精度、ユニークな発想と工夫の数々を御紹介します。
このPart 3 では、冒頭の見開き2ページを割いて、ハローキティを取り上げています。日本のカワイイの代名詞的存在のキティちゃんは、世界109の国・地域で販売され、子供ばかりでなく大人にも愛され、レディ・ガガ もファンだという、日本の Cool (かっこいい) 文化の象徴ともいえる存在です。 何年か前に米国の最高級ファッション専門店チェーンのニーマン・マーカスが、ホリディの特別商品にダイヤとルビーをちりばめた約5000ドルのペンダントなどを売りだした 時も話題を呼びました。数年前からライセンス事業に舵を切り、世界2000社以上と取引するようになり、色々なデザインのキティちゃんが登場していますが、いずれもその基本イメージは日本のサンリオが管理しています。デザインではなく、キティちゃんの「かわいさ」、という「感性価値」を創造し、マネジメントする日本企業が出てきたことは、本当に誇るべきことだと思います。
キティちゃんの「かわいさ」について、興味深い話があります。何年も前のことですが、キティちゃんのぬいぐるみを中国の工場に発注していた会社の社長から聞いた話です。どうしても製品に「キティちゃん」の可愛さが出て来ない。眼と鼻をつける位置に原因があることが分かったので、工場にその指摘をすると、「完全にスペック通り作っている。ほら、ここが○○センチ、こちらも△△センチ。指示通りじゃないか」と譲らないのだそうです。確かに物差しを当てるとそうなのですが、ふわふわした布地の上では、寸法だけで片付けられないものがある。日本から持ち込んだサンプルと比べて見せて、「ほら、こっちの方はかわいいでしょう?」といっても、全くそれが理解されない、という実体験をされたとのことでした。
Part 3 日常に入りこむ「ニッポン」=世界の暮らしを変える消費・サービスで紹介されている 41の事例をあげてみましょう。先のキティちゃんを筆頭に、ガンプラ、スケールモデル、ベイブレード、シルバニアファミリー、大英博物館公式販売モデル、トランスフォーマー、ドラえもん、ポケットモンスター、NARUTO、マリオ、初音ミク、バイオハザード、電池時計、G-SHOCK、メラノリデュース、「HUD」カーナビゲーションシステム、温水洗浄便座、世界最速エレベーター、Tofu、SoySauce(醤油)、ヤクルト、カニカマ、ジャパニーズ・ウィスキー(竹鶴、山崎など)、リポビタD、デニム生地、MUJI、TENGA、ユニクロ、コンビニエンスストア、100円ショップ、ヤマハ音楽教室、BOSSシリーズ、YANAGISAWA(楽器サックス)、ゴルフシャフト、数独、化粧筆、釣り具、KUMON、などです。
これらの中には、日本でなければ絶対に生まれなかっただろうと思われるものがいくつもあります。たとえば、アニメやマンガ、大人でさえはまる高度な組み立てのトランスフォーマーやガンプラ、おもちゃやフィギュア、プラモデルなどは、日本人特有の繊細さと器用な手先、技巧と技術が、生活の豊かさに結びついて生んだ、高度な「あそび思想」を結集させたものといえるでしょう。 食品も、日本人の優れた味覚と健康志向が作り上げたもの。 サービス分野でも、コンビニの完成度の高さ、百均ショップの多様な品ぞろえと品質、MUJIやユニクロのシンプルで高度な精神性を核とするコンセプト、数独やKUMONといった知的な領域に至るまで、世界で抜きんでた優れたものがあります。日常生活を、より豊かに楽しく便利に、しかし合理性や機能性だけの追求に終わらせないで、情緒や感性を大事にする、という日本の価値観、いわば DNA が息づいていると改めて感じるのです。