<新しい年-世界は急速拡大中――若者よ 世界に出よう ① 海外留学のすすめ>

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明けましておめでとうございます。 お正月は、いかが過ごされましたか?

2013年が、このコラムを読んで下さっている皆様にとって、素晴らしい年になるよう祈っています。

 新たな年の始まり。久しぶりに、期待を膨らませることが出来る年になりそうです。日本をふくめ、多くの国で  新たな政権や国家元首が登場し、金融・財政の危機をひとまず乗り越えた欧州や米国でも、まだまだ予断は許されないとしても、前向きの動きが出てくるでしょう。 アジアを中心に新しい新興国の台頭や、ICT技術のさらなる進化が、社会や経済を活気づける大きな可能性を秘めています。

日本は、経済再生や復興、原発や財政や雇用の問題、領土問題やTPPなど、重要課題山積ですが、百貨店の初売りが好調、日本証券取引所の取引初日も、株価が東日本大震災前の水準にまで戻り、為替も円安方向に動いて、ポジティブなスタートをきったといえます。日本も米国も、決して景気回復と言える状況にはありませんが、今年は少し光が見えて来るように感じます。ファッション・ビジネスでも、スマホやiPad 活用の拡大により、日本も遅ればせながら、オムニチャネル(店舗やネット、ソーシャル・メディアなどの境目がない状態で買い物できる包括的な交流環境)や、ビッグデータが今年のキーワードになるでしょう。

 2013年が、どんな年であって欲しいか? 

 私は、若い世代が、世界に目を向け、そして世界に出てゆく年になって欲しいと願っています。若者が海外に出たがらない理由を見ると、「日本の方が住みやすい」、「日本が好き」、「外国へ行くのは不安」、「異文化や外国語への対応がおっくう」、「日本に戻って来た時に就職出来るか心配」、などなど、現在の生活環境が快適なので、新たな苦労にあえて取り組みたくない、という考え方や態度が広く蔓延しているように思います。

 しかし世界では、先進諸国も含めて、日本では見られないようなダイナミックな変化が起きています。その中で自分の考えや能力が磨かれる事、また異文化や日本人以外の多様な人々と接触や交流をする事で、人間として成長し、視野が広がり、自立心が強まり、自分のキャリア目標も明確になる、という体験を、是非して欲しい、と願っているのです。

 若い方の海外体験には、「留学」という方法があります。このコラムでも以前に、「キャリアづくりと留学」、「ファッション・ビジネスと留学」をシリーズで書きました。(2012年6月、7月)。留学には、自費留学以外に、日本の大学などが提供する「海外研修プログラム」や、海外の学校がオファーする奨学金、あるいは各種の団体(ロータリーやフルブライトなどの留学制度)など、色々なプログラムがあります。

 ファッション関連で新設された、素晴らしい留学プログラムとして、TOMODACHI-UNIQLO フェローシップ」を御紹介しましょう。これは、ファーストリテイリング(ユニクロ)社が、社会貢献活動の一環として、アメリカ政府(日米カウンシル)と協働し、設置したものです。そのねらいは、将来グローバルに活躍する経営者やデザイナーを目指し、米国への留学を希望する、有望な日本人の育成にあります。

 対象となるのは米国の3大学の大学院コースです。指定の大学と専攻は、次の通りです。

  ① FIT  (ニューヨーク州立ファッション工科大学→ ファッション・ビジネス専攻)

  ② Parsons School of Design  (ニューヨーク→ デザイン専攻)

  ③ Stanford University  (サンフランシスコ→ 経営専攻=MBA

 奨学金の概要は、2013年9月入学より順次、3校に対して合計10名の若者を対象に、2年間の奨学金(授業料と生活費を含む)を授与するもので、対象者は次の条件を満たす者です。

  ① 日本人であること

  ② 各個人が直接大学院の入学許可を取り付けること(入学許可を得た者のみが対象)

(ファーストリテーリング社のホームページでの案内は: http://www.fastretailing.com/jp/csr/news/1210231500.html 問い合わせ先はFR_G_frgcsr@fastretailing.com です。)

 ファッションに関わる奨学制度が非常に少ない中で、ファーストリテイリング社が このように贅沢な奨学金(総額最大160万米ドル)を授与される事は、この業界の発展を願う者として、本当に有難いことだと思っています。

 この奨学金の背景には、同社の創業者で会長兼CEOの柳井正氏の、日本の将来への危機感があります。昨年3月のFITセミナー講演での発言、「日本はメルトダウンするのではないか。しかしどんな時にも、個人と企業は生き残らないとだめ。そのためには『世界に出て』革新的企業に成長すること。特にアジアは今後の10年で十数億人の中産階級が生まれる。ゴールドラッシュともいうべきビジネスチャンスだ。」それはひとえに意欲ある人材にかかっている、ということでしょう。(当ブログ、2012年4月4日)

 是非とも、意欲と志ある若者が、積極的に応募される事を願っています。

 次回は、3大学のうちファッションに関わるFITとパーソンズのプログラムの奨学金対象コースの内容について、ご紹介します。