小売業の 『革命』 を促した キーワードといえば、「モバイル」、「ソーシャル」、「デジタル」、そしてこれらを融合して、すぐれた 『顧客体験』 を生み出すための 「オムニチャネル」 です。 (カットは、筆者の「NRF大会レポート」。 2013 年大会のハイライトをまとめています。)
「オムニチャネル」 と「ソーシャル」 については後日 取り上げますが、「デジタル」 は、言うまでもなく 「デジタル化の更なる進展、各種データの融合、ビッグデータの分析と活用」を意味します。 「モバイル」 は、多機能携帯の スマホやタブレット。 また 「モバイルPOS」 (従来のレジに代わる携帯用の小型のもので、販売スタッフが情報検索や在庫確認ばかりでなく、クレジットカードも含むレジ処理が出来る機器)の活用もノードストロムやC.ワンダー、アンソロポロジーなどで始まりました。 POSレジは、価格も従来のレジの5分の1くらいだそうですから、顧客にアテンドしながら、接客とレジ処理が一挙に出来る環境をつくる、という意味で、今後重要な役割を果たすでしょう。 「ソーシャル」 はFacebook やTwitter、Pinterest や Youtube などのソーシャル・メディア、日本で言うSNSです。
「モバイル」 について特記すべきことは、2012年、モバイルによる購買が米国で急拡大したことです。 とくにホリディ商戦では、Eコマースによる販売合戦、価格プロモーションが繰り広げられ、店舗ビジネスにも大きな影響を与えました。2012年第4四半期 (ホリディ商戦)における ネット販売のシェアは8.8% に高まり、その20% を モバイル(スマホやタブレット)が占めたといわれています。 また注目すべきは、タブレット(iPadなど) の利用が、第4四半期では75%アップしたことです。 テレビとタブレットを見ながら スマートフォーンも操る、「マルチスクリーン・ショッパー」 などという言葉も生まれました。 寝る時もモバイルを傍に置いている人が44%に達し、まさしく 「テクノロジー装備の消費者」 の時代がやってきたのです。
これらのほか、今回のNRF大会で強調されたものに、「コンシャス」、「コミュニティ」 があります。「コンシャス」 は「意識ある=人や社会に対する自覚や配慮がある」 の意味で、昨年の全米小売業大会で初めて取り上げられたテーマです。 「コミュニティ」 は、広義には 「社会」の意味ですが、今回の大会では、それに加えて、「価値観や信条、大切にするものを共有できる仲間」、たとえばお店の顧客やNPO支援者、ソーシャル・ネットワークや企業内などでの 「つながる仲間」の意味で、多くのセッションで取り上げられました。 このNRF大会レポートのシリーズでは、後半に、「台頭する新ビジネス」 を紹介しますが、それらのほとんどが、新たなコミュニティ作りを、ビジネスのベースにしています。
大会で4日間にわたって開催されたセミナーは総数125。 昨年に比べると、「スーパー・セッション」 とよばれる、数千人が参加できる大会場での講演やフォーラムが 7つから9つに増加しました。 そのテーマも、オムニチャネル/ソーシャル/モバイル関連が3セッション、企業の社会貢献(コンシャス) 関連が3セッション。その他は、「グローバル」 (Mango事例)、「主要企業の基調講演=ウォルマート」(昨年はラルフ・ローレンでした)、 そして、「台頭する革新企業」 (後述する4つの起業事例)、でした。 オムニチャネル/ソーシャル/モバイルが 業界にとって重要な動きである事、また 企業が利益追求だけでなく、社会やコミュニティ、あるいは従業員から愛される存在でなければならない事、が強調された大会であったと言えます。
(次回は、キーワードの「ソーシャル」(ソーシャル・メディア)について、書きます。)