ファッション小売に起きている『革命』の具体的な内容を見るために、その背景としてEコマース(ネット販売)がどのような進化をとげて来たのか、を見てみましょう。 まず、グラフは、過去3年と、これからのEコマースの伸びの予測です。 この分野の権威である、米国のフォレスター・リサ―チ社によるもので、今後とも、2ケタ成長を続けると予測しています。
この予測によれば、成長率は、2010年、2011年の前年対比 14%の伸びに対し、2012年、2013年は 12%の伸びにとどまるとは言え、2ケタの伸びを維持し、全小売売上に対する比率も、2010年の 6%から2016年には9%にまで伸びるとしています。 売上金額は、2012年の、2260億ドル(約20兆円)が、3270億ドル(約30兆円)になるとの予測です。
それでは、昨年のモバイル(スマホやタブレット)の大ブレイクまでに、米国のネット販売が、のような進化をとげて来たのか、大まかに振り返って見てみましょう。 ネット販売は、2000年頃に、インターネット販売の台頭で生まれた 「クリック&モルタル」 の言葉とともに注目され、一般の消費者に浸透しはじめました。 初めは、コンピュータ関連製品の調達や本の購入、あるいは お花(ギフト用に便利)等のカテゴリーが、上位を占め、アパレルや靴は 「触ることも出来ず、試着も出来ずに買えるものではないから、ネット販売は無理」 と思われていました。 しかし、ウェブ技術の発達やコンテンツ(提供される画像などの情報)の向上とともに、また消費者がネット販売の利便性を評価するようになった事、企業の「返品も簡単」等の方策が消費者に浸透したこと、などにより、アパレルや靴、バッグなどの雑貨も、着実にそのシェアを伸ばすようになりました。
「Eコマース」 の言葉自体は、当初は、先行していたBtoB (企業間のネット取引)の意味に使われていました。それが、消費者むけのネット販売も包含して、Eコマースと呼ばれるようになったのは、まだ4~5年前からです。 モバイルは、米国では、電話としての利用は早かったものの、日本のような「お財布ケイタイ」等のマルチ機能については、実は日本より遅れていたのです。それが、2007年の iPhoneの発売と、Youtube や Facebook やTwitter の登場で、利用が拡大。 2011年のNRF大会では、「モバイルとソーシャル・メディアが小売を大きく変える」 との認識が高まり、アプリの開発を含め、企業の取り組みが猛スピードで進行しました。 そしてモバイルは、昨年のタブレット(iPadなど)の急速な普及により、新たなステージを迎えたといえます。
フォレスター・リサ―チのVPで筆頭アナリストである Mulpuru 女史は、長年にわたって「小売オンラインの現状」 の調査を続けていますが、NRFでの講演で、彼女はユニークなアナロジー(比喩)を紹介しました。 曰く 「Eコマースは、チェス(西洋の将棋)で言えば、兵隊がクイーンになったようなもの。敵地に入ると、兵隊が猛烈なパワーを持つよう変身する。 ここ10年のEコマースは、第3次的、つまり人々が余り目もくれない存在から、多くの小売企業で売上の10%以上を占めるまでになった。また成長のためには、戦略的に不可欠なものに成長した」 というのです。 日本の将棋の、 「『歩』が相手の陣地に入って『金』になった」、というよりは、もっと大きな存在になっているのかもしれません。
(次回は、「ソーシャル・メディア」について、NRFからのメッセージをお届けします。)