テクノロジー

「WEFシンポジウム報告――米国流通革命: 鍵は“デジタル”と“ディスラプション”」

WEFの第7回シンポジウムからの報告です。

 WEFの第7回公開シンポジウムでの 尾原の基調講演の内容が、繊研新聞に掲載されました。

テーマは「テクノロジーで変容するファッション・ビジネス――あなたはこの機会をどう活用しますか?」です。 記事は、ここをクリックしてください。

 ファッション・ビジネスで革命が起きています。“デジタル”と“ディスラプション(秩序などを破壊する)”が、これまでのビジネスモデルを崩壊させ、新たな視座(顧客中心)と発想により様々な新ビジネスを生んでいる米国。この潮流は、まさしく、「ファッションが売れない」と苦悩している日本が 早急に取り組む必要があるものです。講演では、そういった新ビジネスの事例を多く紹介しました。

 日本で 「ファッションが売れない」理由には、経済的な問題や消費支出の優先順位が変化したこと、またトレンドに飛びつく〝ファッショニスタ″ が減っていることなど、多々あります。しかし私は、日本にはおしゃれをしたい人がまだ沢山いる。市場は沢山の商品であふれている。しかしそれらが、うまくマッチングされていないことが最大の問題だ、と感じています。

 これからの時代のファッション・ビジネスは、「物販」から「おしゃれ支援サービスへ」移行する必要があります。人々はファッションを〝自分のライフスタイルをつくる手段″と考えるようになりました。自分の価値観と望む形のライフを創り上げたい生活者に、そのためのファッション商品を提供するビジネスは、「モノを売る」ビジネスではなく、「その人が、なりたい自分になるためのサポート」ビジネスです。個性化が進み、「十人十色」からさらに「一人十色」の多彩な欲求を持ち始めた個客を、企業が十分に理解し満足させることは、非常に難しくなっています。片やテクノロジーの発達は、「スマホ装備」の個客を生み出しました。いつでも、どこでも、好きなやり方で情報収集し、友人の意見を聞き、比較検討し、購入後はその体験をツイートする、といったことが、ごく当たり前になっています。ということは、個客がサーチし、自分のほしいものを見つけやすく、手繰り寄せられるようにすることが、最も効果的・効率的になってきたのです。ウェブでの商品の提供は、魅力的な、かつ細部までわかる画像、特にサイズやフィットが、個客に分かりやすくなっていることが重要です。

「顧客セントリック」と言われてきましたが、いよいよテクノロジー、それもインターネットからさらに進んだデジタル・テクノロジーの急拡大で「個客セントリック」のビジネスが可能になり始めたのです。オムニチャネルもその一環として、非常に重要になってきました。このお店、このブランドは、私を理解してくれている。私が欲しいものを、見つけやすくしてくれている、という存在になりたいものです。

 このシンポジウムは、200名を超える参加者に、この巨大な変革のチャンスをどう活用しますか?との問いかけが目的でした。

あなたは、ご自身のキャリア、あるいはビジネスを、どう革新されますか?

WEFシンポジウム――「米国のファッション・ビジネス最新事情」を尾原が講演します

 

 WEFシンポジウムを、「テクノロジーで変容するファッション・ビジネス――あなたはこの機会をどう活用しますか?」 のテーマで727日(水)夜、1830から開催します。

 

 尾原が基調講演を担当しますが、そのテーマが、「米国のファッション・ビジネス最新事情」です。インターネットやデジタル・テクノロジーが、ファッション・ビジネスに巨大な変革を起こしている。その実態を、NRF大会や米国業界の先端的事例をもとに、多数の画像をスライドで紹介します。ファッション・ビジネスが、単に「服やファッション雑貨を売る」ビジネスから、どのように変化してゆくのか、を見て頂きたいと考えています。 詳細は、下記をご覧ください。

WEF第7回シンポジウム 「テクノロジーで変容するファッション・ビジネス」 ご案内_160727 

 企画の動機は、日本のファッション・ビジネスが今、ぶつかっている壁です。

市場には沢山のファッションが溢れているのに、またオシャレをしたい顧客は居るのに、それらがマッチングされていない。他方、デジタル・テクノロジーの急進展は、オムニチャネルや人工知能(AI)活用により、個人にパーソナルな訴求をする手法など、新しいビジネス展開を可能にする大きなチャンスをもたらしている。 これを活用し新しいビジネスの方向に取り組むことで、企業も成長し、個人もキャリアの発展が出来る。そう願っているのです。

 シンポジウムの第二部は、WWD誌の 向千鶴 編集長、アーバン・リサーチ社執行役員の 乾展彰氏、さらに今、人工知能で注目されているカラフルボード社の 渡辺祐樹社長のパネルです。テーマは、「ファッションとビジネスの新しい世界をテクノロジーが拓く」。それぞれの専門分野からの最新情報や提言で、エキサイティングなものになると期待しています。

 興味を持たれる方は、ぜひご参加くださると嬉しいです。     以上

 

 

 

<NRF2016 リポート ② オムニチャネルは長い道のり―コラボで挑戦>

 全米小売業大会  NRF Big Show )の尾原リポートが、繊研ウェブ版に、今日、アップされました。http://www.senken.co.jp/news/management/nrfbigshow-105th/ 

 色々コメントをいただきましたが、やはり今最大の関心事は 「オムニチャネル」。特に、オムニチャネルが、その発祥地の米国でも、一朝一夕に達成できるものでないことに、共感される方が多いと感じました。

 スマホの威力と利便性を体感してしまった米国の生活者には、もはやオムニチャネル以外の選択肢はなくなっています。というより、生活者にとって、もはや「チャネル」という意識はない。いつでもどこでも、気が向いたときに、多様なルートから情報を得て、商品やサービスの詳細を知り、友人とシェアし、意見も聞いて、買うかどうかの判断をし、買うと決めたらすぐに欲しい、そしてその体験をツイートする、という、自分を中心に世界が存在している、といった見方になっているのです。

 「マルチチャネルという言葉に興奮したのが何年か前。その後に登場したオムニチャネルのコンセプトは、優れたものであるけれども、いまやビジネスは、Distributed Commerce(分散化されたコマース)の様相を呈してきた。ここでのPOSは、生活者のスマホだ」 という、刺激的なスピーチもありました。

 閉塞感がただよう日本のアパレル・ビジネスをディスラプト(秩序の崩壊)をさせるためにも、ご興味のある方には、是非リポートを読んで頂ければ嬉しいです。

http://www.senken.co.jp/news/management/nrfbigshow-105th/