福田さんは現役の看護師さん。ニューヨークの総合病院で循環器系専門の看護師として週3回勤務しながら、お店を運営。休日はもちろん、仕事の間も休み時間を使ってお店や取引先とメールやテキストメッセージで連絡をとる、バイヤー兼ショップのオーナーです。
(写真は扱い商品。ホームページより)
扱っているブランドは、Baby, the Stars Shine Bright、Alice and the Piratesなどロリータ・ファッションの世界でのトップ・ブランドや、日本を代表するパンクファッションSEX POT ReVeNGeをはじめとする人気ブランド。ホームページには、「Tokyo Rebelは、ニューヨークで唯一の東京ストリート・ファッションの店。ロック、パンク、ゴシック、ロリータ等、すべて東京・大阪から直輸入。KERA等に掲載されている本物。コピーや真似モノではありません。」と書かれています。(お店の入口:ホームページより)(ホームページは http://www.tokyorebel.com/ )
顧客層は幅広く、大学生位の年齢の人が多いものの、高校生や30代40代、ファッションによっては50代くらいのお客も多いとのこと。職業も、FITやSchool of Visual ArtやParsons等の学生、ファッション業界の方のほか、歌手やウォール街で働く専門キャリアの人もいるそうです。「お客様は、それぞれ自分の雰囲気に合ったものを、自分流にアレンジして楽しんでいるような印象です。着用の場面は、例えば、お茶会を開いたり友達を誘って出かけるなどの特別な日、Japan Dayなど日本テーマのイベントやライブコンサートに行く時、などが多いようですが、お洋服のデザインによっては、ロリータやパンクをカジュアルダウンして普段のお仕事や学校に着ていくお客様もおられます」と福田さんは言います。(下はTokyo Rebel を起業した福田昌代さん)
Cool Japan を購入できる場所を!
私がこのTokyo Rebel を紹介したいと思った最大の理由は、3月開催したFIT特別セミナーの講師ヴァレリー・スティール氏(FITミュージーアムのチーフ・ディレクター)が強調したこと。すなわち 「Japan Fashionがどんなに素晴らしくても、実際に買える場所が無いと、何も始まらない」でした。「顧客の視点に立って、買ってもらえるようにする」努力を、日本は怠っている、とのメッセージでした。福田さん夫妻はそれを実際にやっているのです。
私が感銘を受けたのは、 ①「大好きな原宿ファッションを売る店が無いからやってみよう」という米国らしい起業の動機、 ②看護婦の仕事を続けながらの兼業(アメリカではよくあるケース)、 ③インターネット販売、特にソーシャル・メディアなどの新しい販売・コミュニケーション手法のフル活用、 ④仕入れは自分が気に入ったものを、ネットを中心に行う、です。 いずれも、これまでのファッション小売店の開業にはなかったやり方です。
特に感心したのは、小売価格の設定です。日本から製品に付いてきた値札の小売価格(円、表示)をその日の為替レートでドル換算したものを販売価格とし、これに配送料を少額加算するだけ。このシンプルな手法は、手間が省けるだけでなく、店内に置かれているKERA等の雑誌の情報もそのまま生かせるからです。
(写真はTokyo Rebel店内の“What’s New"告知:新入荷アイテムの紹介と、その日の為替レートの表示。2010年1月撮影)
ソーシャル・ネットワークの活用は、繁華街とは言えない地域にブティックを構えるTokyo Rebelにとって、非常に重要になっています。「テレビも雑誌もどのメディアも重要ですが、特にインターネットの影響はすごいと思います。SNSの顧客は、現在、Facebookが約7000人、Twitterが1000人。イベントもこれまで、弊社ウェブサイトやFacebook、twitterで告知してロリータモデルの青木美沙子さんのサイン会と、また別の日に日本からスカイプで参加して頂いての交流、お茶会、そしてBaby, The Stars Shine BrightとAlice and the Piratesのデザイナーさんたちによるサイン会等を開きました。モデルさんやデザイナーさんとの交流や、お客様への限定商品のプレゼントなどが、お客様に非常に喜ばれて、今でもその時の話をされるお客様を見かけるとやはり嬉しいです。」
初めて福田さんにお会いした2010年1月、異国でのショップ立ち上げの勇気をたたえた私に福田さんは「米国では会社の設立は簡単。もっと多くの人が挑戦しても良いのに、と思います」と言われた事が強く印象に残っています。しかし、今あらためてその事に触れると、「“会社として州に会社名を登録すること”にはお金もあまりかからないし、手続きもかなりシンプルです。ただ“異国で会社を運営する”にはやはり現地の事情に詳しいパートナーが重要です。私の場合はアメリカ人である夫が共同オーナーとしてマーケティングや会計で大きく関わっていますし、専門の会計士へ相談もします。文化や考え方の違う色々な人との関わって行かなければならない。今も毎日がチャレンジです。やはり円高にはかなりの影響を受けています。」とのコメントを頂きました。
しかし、私は福田さんの中に、自分が大事と考える事を実行してみる勇気とチャレンジ精神を強く感じました。これは、留学にせよ、仕事のためにせよ、一人で異国に出かけていく勇気とキャリア目標を持った人のほとんどに、共通する事です。
私はこれが、Japan Fashion の海外進出に不可欠な、「意志と勇気ある行動」であると考えます。