プロフェッショナル

<ファッション・ビジネス留学: M B A でなく M P S 学位を重視する F I T の G F M>  

 ビジネススクールの学位で、MPS ( Master of Professional Studies ) をご存知ですか?

 ビジネススクール留学といえば、もっぱらMBA( Master of Business Administration ) と考える人が多いと思います。しかしファッション・ビジネスでは、ファイナンス(財務)や組織体のマネジメントだけでなく、消費社会やファッションの真の理解、クリエ-ション(創造活動)のマネジメント、製品開発を含むマーケティングやブランディング、など多岐にわたる専門的分野を束ねてのグローバル経営、がますます重要になってきています。

 MPSはその意味で、まさしく「実学の経営者養成コース」といえます。

 MPSを授与するFB(ファッション・ビジネス)関連大学院で、世界で唯一と思われるニューヨークのFIT(ニューヨーク州立大学 Fashion Institute of Technology )をご紹介しましょう。

(このGFMコースを紹介する「留学セミナー」が1121日(月)夜に開催されます。詳しくは、添付ご案内、あるいは日本FIT会のホームページ http://www.fitkai.jp/ をご覧ください) 留学セミナー第4回 チラシ(2016.11月21日開催)

 GFM( Global Fashion Management ) と呼ばれるこのコースは、3 年以上の実務体験を持つ社会人対象で、18か月(3セメスター)の過程終了で修士号が授与されます。毎年 178 名の選りすぐられた学生が、世界の 10カ国以上からニューヨークのFITに来て学んでいます。カリキュラムは、ファッション・マーケティングからアパレルの生産・ソーシング、デザイン活動、デジタル技術、などをカバーする、戦略やマネジメント、財務・法務(知財権やライセンス契約)など、FB のエグゼクティブに不可欠な知識と能力を身に付けさせる、現場体験を交えた実学の修士コースです。

 特にユニークなことは、通常の科目に加え、3週間の集中セミナーが、ニューヨークとパリ、そして香港で行われます。パリでは、ラグジュアリー・ビジネスを中心に、理論と実践を学びます。香港では、中国の産地にも足を延ばし、モノづくりとアジア市場を中心に学びます。これは、フランスのIFM (Institut Francaise de la Mode =産学連携大学 ) と、香港工科大学との 3 校のコラボレーションで実施されるものです。今年は初めて、研修に日本を組み込んでもらい、トヨタの工場見学や、東京のファッション市場の視察が行われることになりました。

 1121日開催の「留学セミナー」では、FITの大学院のトップ( Dean )と、GFM コース学科長なども来日し、またGFMに今在籍する 在校生や卒業生も、登壇し、体験談を披露することになっています。

 実は FIT/GFM コースには、ユニクロの奨学金(米日カウンシル TOMODACHIフェローシップ)が設定されており、過去3回開催したこのセミナーから5名の留学生が出ています。 日本からの海外留学生が非常に減っている現状を危惧し、日本FIT会では、このセミナーに力を入れています。

 GFMコースへの留学の最大の成果は、「世界のリーダーを目指す若者と親しい友達になること」と言い切る卒業生もいます。

 グローバル化と、そのための人材育成が叫ばれる中、できるだけ多くの企業、あるいは個人が、このようなチャンスを逃すことなく、個人の成長、企業の発展を目指してほしいと願っています。

<女性支援 WEF 記念シンポジウム 「新たな視点で ビジネスを立ち上げる」 >

 ファッション関連業界の女性活躍支援のために立ちあげた、一般社団法人 ウィメンズ・エンパワメント・イン・ファッション(呼称:プロジェクトWEF )が、設立一周年を迎えます。

 お陰さまで、この1年間に開催したシンポジウムやキャリア研修、ダイバーシティ/女性活躍推進者会議等、12のプログラム(それぞれ約3時間)は、延べ1000人を超える方々に参加を頂き、業界での「女性リーダーつくり」の動きを加速する事が出来たと、有難く思っています。

 今回の記念シンポジウムは、その一周年を記念するもので、722日(水)夕刻から開催します。

 

 テーマは「新たな視点で ビジネスを立ち上げる―イノベーションをリードする現場力」。

基調講演は ㈱ DeNA創業者で取締役会長の南場智子さん。パネル・プレゼンターには ㈱三越伊勢丹執行役員で立川店長の石塚由紀さんと、カルビー㈱ の上級執行役員の鎌田由美子さんです。 詳細は http://www.wef-japan.org/event/607.html をご覧ください。

 企画の狙いは、起業、新規事業に取り組み成功された講師陣に、イノベーションの精神や実践、クリエイティブ・チームをどう作り、リードするか、等について、体験を通じてお話しいただくことにあります。 

 WEFのシンポジウムは、3つの目的を持っています。

第 1 は――業界が直面する重要な課題について、新たな視点と方向性を提示すること。

 今回は、「新規事業・イノベーション」です。ファッション/ライフスタイル産業界は、いま、これまでの男性的発想と仕組みで動いてきたビジネスに、多様な価値観や生活者ならではの視点を取りこみ、現場力で「新たな価値創造」を実現することが不可欠になっているからです。

第 2 は――活躍する女性のロールモデルを紹介すること。

 日本で女性の活躍が遅れている大きな理由の一つは、ロールモデルが見えない事にあります。特にファッション関連業界には多様な職種や職能があり、また女性には男性以上に働き方に影響する、結婚や育児・介護といった様々な状況があります。その中で女性は、自身のキャリア目標と日常生活、つまりワークとライフをどうマネージする? という、難しい課題に直面します。しかしその課題への取り組み方、あるいは人生の生き方は多様です。WEFのシンポジウムは、女性が独自のキャリアを、主体性を持ってつくって頂くためのヒントを、多様なモデルから得て頂きたい、と願っています。

第 3 は――人生を生きる、考え方や信条、哲学、に触れること。

 成功する人達は、どのような考え方や信念を持って、目標を達成し、自分のキャリアを築いて行くのか。 人がしない事を実行する覚悟や度胸、あるいは壁にぶつかった時どのような判断をし解決に導くのか。それらを支えるものは? そんなことを学んで頂きたいのです。

 今回のシンポジウムは、女性のエンパワメントだけでなく、イノベーションへの展望を拓く、またとないチャンスになるものと考えています。男女を問わず、沢山の方に御参加頂きたいと願っている所です。

<NRF 2015レポート ②――Flux ゼネレーションが カオスの時代をリードする>

 今年のNRF (全米小売業大会)で、日本のこれからにとって、最も重要だと思ったセッションを御紹介します。

 FastCompanyという、アントレプレナー(起業家)あるいはイノベーションを志向する人が好んで読むビジネス誌があります。その編集長で最高業務責任者も務めるロバート・サフィアン氏が、破壊的な変化が起こっている今、新しい人材像「フラックス・ゼネレーション」が強く求められている、と講演しました。

(Flux ゼネレーションを特集した FastCompany 誌 の表紙) 

 実はこの特集は2012年2月号に掲載されたのですが、その時点で私は目から鱗の強烈なインパクトを受けました。それが2年以上を経て、今年のNRF大会の8つの基調講演の一つに選ばれた事で、 私の先見性をちょっとばかり、誇らしくも思っています。(!)

 サフィアン氏は言います。 「今はカオスの時代。何時何が起こるか全く予想できない混沌の世界だ。これまでのビジネス法則が役に立たないばかりか、超スピードで変わる環境に対応せねばならない。 創造性の爆発が巨大な選択肢を生んでいる現在の世界で成功するには、新しいタイプのリーダーが必要だ。フレキシブルでアジャイル(聡明で素早い)、過去に例の無い新しい事を始めることを躊躇しない人材だ」。

 Flux ゼネレーションは、1990年代後半にFastCompany誌がスタートして以来、時代を革新した起業家、Appleのスティーブ・ジョブスやAmazonのジョセフ・ベゾス、あるいはFacebookのマーク・ザッカーバーグ等をインタビューしてきた経験を通じて、彼らの共通項から見た新しい人材像です。

 Flux(フラックス=流動とでも訳しましょう) は、ゼネレーションといっても、「世代」の意味ではありません。「今という時代」 と 「人のタイプ」、年齢ではなくマインドの問題だ と氏はいいます。従来のやり方に固執せず、柔軟でアジャイル。 成長のため、環境変化をTake advantage(利用)し、恐れずリスクをとる人間です。「最も重要なスキルは、新たなスキルを加える能力。」とも言っています。

 同誌は特集で、典型的フラックス達を紹介しています。第1回目の特集に登場したのは、20代後半から60代までの多様多彩な職業、経歴もそれぞれユニークな人たちです。たとえば写真中央の年配の男性は、永年同一企業に勤めたが、コンピュータ・グラフィックスで映画エイリアン等の特殊効果を担当後、晩年に独立。現在1200人を雇用するマーケティング会社を仕切っているひと。その左の女性は、ハーバードで建築を学び、ドキュメンタリー映画の監督,広告代理店やNPOや国務省を経て、いまコンサルタント。右端の男性は、ネット世界で急成長するスタートアップの一つ、ネット世界のマーケティング会社Mashableの創業者で28歳、と紹介されています。

 Fluxは、新たな仕事や環境に飛び込むことを恐れないばかりか成長のチャンスと喜ぶ人種なのです。

  「ファッションという伝統的業界でも、Fluxマインドは発揮されている。バーバリーは多数のアイフォンでショーを上から撮影しユーチューブで配信。トレンチコートの伝統を、テクノロジーでレレヴァント(今日の顧客に意味がある)にしている」。 ファッション産業が、ビジネスモデルとしては変化に乏しい業界とサティアン氏が考えている事は、ショックでしたが、確かにバーバリーの革新は、あちこちで取り上げられています。

  参加者へのメッセージとして、氏が送った「革新者から学んだ4項目」 は次の通りです

1.革新のアイデアをあらゆるところから見つけ出せ。イノベーションはサイロ(組織)間のギャップで起こるのだから。

2.自らのリーダーシップのあり方を再定義せよ。立派なデスクを定位置とするリーダーではだめ。革新を起こし続けなければならない。

3.自分がうまくやれることにフォーカスせよ。そして他を退けよ。

4.最も重要なことだが、自分のミッションを見いだせ。4PPurposePeopleProductProcessの中でも『目的(Purpose)』が最も重要。その目的が全てを動かす(Drive)するようにせよ。目的とミッションが明確であれば、うまく行かなかった場合も、その取り組みを誇りに思う事が出来る。

 サティアン氏の締めくくりの言葉はダーウィンの名言でした。

  「生き残るのは、もっとも強いものでも、もっとも賢いものでもない。もっとも変化に対応する ものだ」

  日本での「Flux ゼネレーション」の台頭を、切に期待しています。