人材育成

<女性活躍支援の WEF 第3回シンポジウム ――「ワーク/ライフのマネジメント」 >

 一般社団法人 ウィメンズ・エンパワメント・イン・ファッション(呼称:プロジェクトWEF )の第3回シンポジウムが 324日(水)夕刻から開催されます。テーマは「ワーク/ライフのマネジメント」で、基調講演にはこの分野の第一人者の小室淑恵さんをお迎えします。小室さんは、2人のお子さんを育てながら起業をされた、このテーマの実践者です。多くの企業にワーク/ライフのバランスによる働き方の改善と生産性の向上に関するコンサルティングで実績をあげている方でもあります。シンポジウムの詳細は   http://www.wef-japan.org/event/501.html をご覧ください。

  パネル・プレゼンターも素晴らしいメンバーです。ユナイテッドアローズ執行役員の山崎万里子さんは、大学時代からアルバイトで、大好きなユナイテッドアローズの仕事をされて来られた方。「仕事の不安を一つひとツブしていくやり方」の著書で、信奉者のキャリア女性も多いようです。Gap ジャパンの志水静香さんは、同社の HR (人財)シニア・ディレクターとして、2児の育児と社会人大学院での勉強を両立された方。WEFの推進者会議では、米国と日本の人事制度の良い点を合体した Gap 社の仕組みを、事例としてお話しいただき好評でした。松岡晃代さんは、ニューヨーク在住のジュエリー・デザイナーで、現在 FIT などで先端分野の3D印刷の講師もされています。育児をしながらフリーランスの仕事を、アメリカ人の御主人とのライフを大事にしながら進めておられます。

 今回の狙いは、女性が活躍する上で、「ワーク」と「ライフ」を対立軸ではなく、 “働き甲斐のある仕事” と “達成感ある人生” を融合させて全うすること、ととらえ、そのための仕事の仕方とはどのようなものか。それを可能にする一人一人の心構えやビジョン、生活態度をどう組み上げるか、のヒントを得て頂く事にあります。「ワーク/ライフのバランス」というよりも、「ワーク/ライフのマネジメント」、つまり、キャリアあるいはライフ・イベントの各ステージに合わせながら、ワークとライフを両立させるマネジメント力を身につけて頂きたい、との想いです。

 「ワーク/ライフのマネジメント」は、女性だけの問題ではなく、男性も含めた問題であり、また、「働く意欲」と「生産性」を上げる仕事の仕方は、日本企業全体の課題です。

 この機会を、沢山の方に活用して頂きたいと願っています。

<NRF 2015レポート ②――Flux ゼネレーションが カオスの時代をリードする>

 今年のNRF (全米小売業大会)で、日本のこれからにとって、最も重要だと思ったセッションを御紹介します。

 FastCompanyという、アントレプレナー(起業家)あるいはイノベーションを志向する人が好んで読むビジネス誌があります。その編集長で最高業務責任者も務めるロバート・サフィアン氏が、破壊的な変化が起こっている今、新しい人材像「フラックス・ゼネレーション」が強く求められている、と講演しました。

(Flux ゼネレーションを特集した FastCompany 誌 の表紙) 

 実はこの特集は2012年2月号に掲載されたのですが、その時点で私は目から鱗の強烈なインパクトを受けました。それが2年以上を経て、今年のNRF大会の8つの基調講演の一つに選ばれた事で、 私の先見性をちょっとばかり、誇らしくも思っています。(!)

 サフィアン氏は言います。 「今はカオスの時代。何時何が起こるか全く予想できない混沌の世界だ。これまでのビジネス法則が役に立たないばかりか、超スピードで変わる環境に対応せねばならない。 創造性の爆発が巨大な選択肢を生んでいる現在の世界で成功するには、新しいタイプのリーダーが必要だ。フレキシブルでアジャイル(聡明で素早い)、過去に例の無い新しい事を始めることを躊躇しない人材だ」。

 Flux ゼネレーションは、1990年代後半にFastCompany誌がスタートして以来、時代を革新した起業家、Appleのスティーブ・ジョブスやAmazonのジョセフ・ベゾス、あるいはFacebookのマーク・ザッカーバーグ等をインタビューしてきた経験を通じて、彼らの共通項から見た新しい人材像です。

 Flux(フラックス=流動とでも訳しましょう) は、ゼネレーションといっても、「世代」の意味ではありません。「今という時代」 と 「人のタイプ」、年齢ではなくマインドの問題だ と氏はいいます。従来のやり方に固執せず、柔軟でアジャイル。 成長のため、環境変化をTake advantage(利用)し、恐れずリスクをとる人間です。「最も重要なスキルは、新たなスキルを加える能力。」とも言っています。

 同誌は特集で、典型的フラックス達を紹介しています。第1回目の特集に登場したのは、20代後半から60代までの多様多彩な職業、経歴もそれぞれユニークな人たちです。たとえば写真中央の年配の男性は、永年同一企業に勤めたが、コンピュータ・グラフィックスで映画エイリアン等の特殊効果を担当後、晩年に独立。現在1200人を雇用するマーケティング会社を仕切っているひと。その左の女性は、ハーバードで建築を学び、ドキュメンタリー映画の監督,広告代理店やNPOや国務省を経て、いまコンサルタント。右端の男性は、ネット世界で急成長するスタートアップの一つ、ネット世界のマーケティング会社Mashableの創業者で28歳、と紹介されています。

 Fluxは、新たな仕事や環境に飛び込むことを恐れないばかりか成長のチャンスと喜ぶ人種なのです。

  「ファッションという伝統的業界でも、Fluxマインドは発揮されている。バーバリーは多数のアイフォンでショーを上から撮影しユーチューブで配信。トレンチコートの伝統を、テクノロジーでレレヴァント(今日の顧客に意味がある)にしている」。 ファッション産業が、ビジネスモデルとしては変化に乏しい業界とサティアン氏が考えている事は、ショックでしたが、確かにバーバリーの革新は、あちこちで取り上げられています。

  参加者へのメッセージとして、氏が送った「革新者から学んだ4項目」 は次の通りです

1.革新のアイデアをあらゆるところから見つけ出せ。イノベーションはサイロ(組織)間のギャップで起こるのだから。

2.自らのリーダーシップのあり方を再定義せよ。立派なデスクを定位置とするリーダーではだめ。革新を起こし続けなければならない。

3.自分がうまくやれることにフォーカスせよ。そして他を退けよ。

4.最も重要なことだが、自分のミッションを見いだせ。4PPurposePeopleProductProcessの中でも『目的(Purpose)』が最も重要。その目的が全てを動かす(Drive)するようにせよ。目的とミッションが明確であれば、うまく行かなかった場合も、その取り組みを誇りに思う事が出来る。

 サティアン氏の締めくくりの言葉はダーウィンの名言でした。

  「生き残るのは、もっとも強いものでも、もっとも賢いものでもない。もっとも変化に対応する ものだ」

  日本での「Flux ゼネレーション」の台頭を、切に期待しています。

<グローバル人材をどう作るか: FIT のユニークな GFMコース紹介と留学のすすめ> 

 「留学する日本人が減っている」 事がたびたびメディア等で取り上げられます。ビジネス活動はますますグローバル化しているにもかかわらず、です。このままでは大変、と、日本の大学も短期留学制度を取り入れるなど、変革に取り組んでいます。しかしグローバルに活躍出来る人材の育成には、旧態を脱したカリキュラムと現場体験を盛り込んだ、戦略的アプローチが必要です。

 FIT GFMGlobal Fashion Manaagement)コースは、ファッション・ビジネスでのグローバル人材育成で、世界に類の無い優れたプログラムを持っています。日本FIT会では、今年も FIT/GFM 紹介を中心とする「留学セミナー」を開催します。テーマは「ファッション・ビジネスで、グローバルに活躍する」。  詳細は 日本FIT会HP http://fitkai.jp  を見て頂きたいのですが、概要は下記です。

 開催日時:1125日(火)18302030

 講師:FIT(ニューヨーク州立ファッション工科大学)大学院ディーン(院長)のM・デイビス博士

       FIT大学院GFMGlobal Fashion Management)コース学科長 P・エルスワース教授

       FIT卒業生 江草未由紀氏(住友商事広報部部長代理)、都筑千佳氏(WWDジャパン編集長)

 場所:ユニクロ本社(東京ミッドタウン大会議室) 

 GFMコースは、3 年以上の職務経験のある社会人を対象に、基本カリキュラムに加え、ニューヨーク・パリ・香港での各3週間の集中講座と現場視察を組み込んだ教育をしています。 目的は、

           ① 競争が激化するアパレル業界のプロの育成

           ② グローバルかつ相互関連が深まる世界のファッション関連業界の展望を示す

           ③ エグゼクティブ教育の欠落を埋める、 です。 

「エグゼクティブ教育の欠陥を埋める」というのは、理論偏重になりがちなビジネススクールの MBA 教育に対して、実学を行う、という意味です。したがって学位も MBA ではなく MPS Master of Professional Studies)なのです。

  基本カリキュラムも多面的です。

Business Policy経営方針/ ビジネスポリシー)、Production and Supply Chain(製造・サプライチェーン)、Digital Marketing(デジタルマーケティング)、Finance 金融)、Politics and Trade 政治・貿易)、International Business and Culture (国際ビジネス・ 文化)、Fashion for Global Markets グローバルマーケットに対応するファッション)、などがあります。

  3大陸での集中セミナーによる研修(画像参照)では、フランスの IFM  校をベースに「ラグジュアリー・ビジネス」を。香港では香港工科大学をベースに 「生産、中国の消費者、中国本土、製品開発、マーケティング」を。ニューヨークの  FIT では、「財務、マーケティング、テクノロジー、リテーリング」を、それぞれ第一線の経営者や現場訪問で学びます。

 今回の FIT/GFM セミナーでは、米国における大学院教育をディーンが、GFM コース概要を学科長が説明。さらに、現在ここで学んでいる 3人 の日本人からのビデオ・メッセージが紹介されます。  

 このコースには、ファーストリテイリング社(ユニクロ)の留学奨学金が、日米カウンシルの TOMODACHI プロジェクトとして設置されており、現在学んでいる 3 人は、その 1 期生及び 2 期生です。全員女性ですので、次回は男性にも是非チャレンジをして頂きたいと願っています。
 セミナーの対象者は、グローバル・キャリアをめざして留学を希望する人、企業あるいは教育機関で人材育成や学生の留学指導に当たって居られる方々です。

 留学志願者ばかりでなく、業界や大学関係者にも、この機会に、益々激化するグローバル競争に打ち勝つ人材の育成のありかたを、FIT GFM に学んで頂ければ、嬉しいです。