未分類

< サステイナビリティとエシカル精神が、ファッション・ビジネスの未来を創る >

 国連が提唱する SDGs(エスディージーズ)が世界的に注目されています。SDGsは、「持続可能な開発目標」 Sustainable Development Goals)の略称で、20159月国連総会で採択された、『我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ』 による 17項目の具体的行動指針です。向こう15年の、新たな“持続可能な開発の指針”であり、ダボス会議(世界経済フォーラム)でも、大きな議論を呼びました。

 ファッション・ビジネスもいよいよ、サステイナビリティやエシカルといった、地球と人間にやさしい精神と行動、成果を上げなければ、人々に愛される企業、あるいは産業になれない時代になりました。

  WEF11回目の公開シンポジウムは、この視点から未来を見据え、

 『FBの未来に欠かせないエシカル精神とは-サステイナビリティ志向の思いやりと透明性-

のテーマで、12月12日夜に開催します。 詳細は→ http://www.wef-japan.org/event/1035.html

 講師には、慶応大学の蟹江憲史教授 (自らの研究会でSDGsプラットフォームを立ち上げ、SDGsが向かう道筋を模索している方)、サステイナビリティの先駆企業である米国パタゴニアの日本支社長 辻井隆行氏、そしてオーガニックコットン事業の草分けとしても著名な社会起業家である㈱アバンティ の 渡邉千恵子社長を迎えます。最後にWEF理事の生駒芳子氏の司会で、3者のパネルディスカッションも行われます。

  ファッション・ビジネスは今大きな変容を迫られていますが、それを促す4大潮流は:

1.  人々の意識と価値観、行動の変化

2.  テクノロジーの膨張(特にデジタル・テクノロジー:AI、AR/VR、IoT、3D印刷など)

3.  ビジネスのグローバル化と巨大な新規市場の成長

4.  企業の社会的役割の増大      

これらは『Fashion Business創造する未来』 (尾原蓉子著)の第一部 第2章で取り上げた巨大潮流ですが、このうち、1 、3 は、既にファッションのビジネスにも明解に表れ始めています。

 しかし、4 番目の「企業の社会的役割の増大」については、まだ、特に日本では、関係者の意識が非常に希薄です。これは、これまで言われてきたCSR(企業の社会的責任=Corporate Social Responsibility)の域を超えた、多方面(後述のように国連のSDGsでは、17の領域)での企業の良心に基づく行動への要請なのです。

  ファッション産業は、地球への負荷が 2 番目に大きい産業といわれます。流行を無作為に追い、売れなかったものは廃棄する、の繰り返しは、もはや許されなくなってきました。また時代は、ファッションに限らずあらゆる産業に、「利益追求だけではなく、社会の問題を解決する、あるいは、地球や自然の保全を意識し、持続可能なビジネスを構築する」ことを求めています。倫理的で人にやさしいビジネスであることも、です。

 SDGsが採択した17の行動指針とは、次のようなものです。

1.   貧困をなくそう

2.   飢餓をゼロに

3.   すべての人に保健福祉

4.   質の高い教育をみんなに

5.   ジェンダー平等を実現しよう

6.   安全なトイレを世界中に

7.   エネルギーをみんなに、そしてクリーンに

8.   働きがいも経済成長

9.   産業技術革新の基盤をつくろう

10. 人や国の不平等をなくそう

11. 住み続けられるまちづくり

12. つくる責任つかう責任

13. 気候変動に具体的な対策を

14. の豊かさを守ろう

15. の豊かさも守ろう

16. 平和公正をすべての人に

17. パートナーシップで目標を達成しよう

 企業はこれらのうち、取り組めるものから始めることを期待されています。ユニクロを展開する日本の先進的企業ファーストリテイリング社では、2016年から4つの目標を掲げていると聞きます。ちなみに、ZARAなどで世界展開をするスペインのインディテックス社は、全項目の達成を目指しています。  世界経済フォーラムの2017年3月20日付の発表によれば、2015年時点の算定値からの進展が大きい国は、149カ国のうち、1位がスエーデン、2位がデンマーク、3位ノルウェーと北欧勢が占め、ドイツが6位に入っています。日本は18位でした。

 SDGsの目標は、遠大です。しかし今から始めなければ、ファッション・ビジネスの未来はないでしょう。心ある企業の積極的取り組みに期待します。

WEFのシンポジウムにも、是非お誘い合わせてご参加ください。

< 『 Fashion Business 創造する未来』 の 出版を祝う会を 有難うございました>

 年をかけて書き上げた、『 Fashion Business  創造する未来』 の出版を祝う会が1115日、アニヴェルセル表参道で開催されました。15名の業界リーダーが発起人になってくださり、150名の方々が参加下さった、誠に光栄で有り難い会で、文字通り、感謝・感激でした。多士済々の顔ぶれで、「久しぶりにいろいろな方に会えた」、「心温まる会だった」、などのコメントをありがたく拝聴しました。

 発起人の皆様、ご多忙の中 お出かけ下さった皆様に、心からの御礼を申し上げます。

 三越伊勢丹の大西洋社長のご挨拶につづき、パーティの前に、この本を書いた想いを語れとのことで、25分のミニ講演をさせて頂きました。それは一言でいえば、「世界で〝産業革命以来″といわれる 大きな変革が起きている中で、日本のファッション産業が、〝周回遅れ″というべき、後れを取っている。このままでは、日本のFBは〝ゆで蛙になる″という危機感だ」 と申し上げました。

『 Fashion Business 創造する未来』について語る尾原蓉子

 

 <講演の要点は、次の3つです>

1.未来は創るもの――未来は予測するものではなく、創造するもの

未来は、過去の歴史と今日の決断・行動の延長戦にある→ 未来は創るもの

特に現在のような変革期は → 新たな秩序・ビジネスモデルを創る 大チャンス

キーワードは、「デジタル化」 と 「ディスラプション」(従来の秩序の破壊)

「ディスラプション」の事例 (本の第1部 パラダイム・シフトで紹介)の象徴的なものは          

Uber= 個人が提供するオン・ディマンド/シェアリングのタクシー                          Warby Parker= 中間業者を徹底排除したメガネの「ネット+」 のマーケティング                  Rent the Runway=ファッションを、レンタルやシェアリングにより 「個人財」から 「社会財」へ

  ◆ 肝に銘じるべきこと=「自らをディスラプトしない限り、他者にディスラプトされる」     

                

2.時代は 「個人の時代」 に移行 ――デジタル技術がそれを可能にする (スマホ一つで、、、)

         20世紀は、企業/大組織 が消費者を動かした時代

           今(21世紀)は、消費者(個人)が企業/産業を動かす、あるいは自らビジネスを始める時代 

   FBを歴史のコンテキストにおいて見ると、いくつかの明確なシフトがある (第2部 価値創造の変遷)

  1)「マズロー欲求の 5段階説」 ――第5段階の「自己実現」に入った人が増えている

           1970年代 ワールド創業者 畑崎広敏氏から鋭い質問が→「第5段階になったらFBどうなる?」 

           今、我々はまさしく「自己実現欲求」の時代に居る→ 人間の欲求は留まることなく変化。                 

  ◆ ビジネスは欲求の変化に合わせ進化すべし ――それが出来ていない

  2) 「価値創造の進化」  ――1960年代から10年刻みで見たチャートが興味深い

           価値創造の主なプレイヤーと創造された価値の変遷は、20世紀では

               主なプレイヤー= 製造業→アパレル卸→DCブランド→SPA  

               創造された価値= おしゃれな既製服→流行→ブランド/個性→価値ある価格

          21世紀に入って―ここから、企業主導→ 消費者(個人・個客)主導へ移行

             2000年代:主要プレイヤー=ネット/Luxブランド→ 創造された価値=利便性/高質な体験

             2010年代:主要プレイヤー= 生活者/社会意識企業→ 創造された価値=社会善/感動

  他の2つのチャートも吟味して読んでほしい

       3)ソリューション(問題解決) vs エモーション(個人の感情・感動)の価値

       4)ファッション市場を拡大する3つのけん引力=High Style、High Performance、High Devotion

  ◆ 「個人の時代」: キーワードは   パーソナル化 &サービス化

                      パーソナル化=個人のニーズ/ウォンツ → AI (ビッグデータ/深層学習)

                      サービス化=モノをサービス化する

              企業の戦略は 顧客セントリック & オムニチャネル

    第3部は、「産業構造がどう変わる」、「日本企業が今すぐ取り組むべきこと」を書いている

                       EC化とデジタル化、オムニチャネル、など

 

3.グローバル時代の 日本からの発信――日本は優れた資源・資産を持っている (第4部)

           =素晴らしい自然、自然を愛で、自然と共生する精神・哲学・思想→ 日本のDNA 

            そこで育まれた文化の厚み 、「もったいない」精神、用の美、、、

            世界でこれだけの、資産を持っている国はない →日本に自信を持とう

  ◆ これを、企業も、個人も大事にし、成長・発展のパワーにすべし。

 

以上、講演で強調したポイントを書きました。 本は 4部に分けて書かれています。是非読んで、行動を起こしてください。

           ① FBのパラダイム・シフト

           ② 価値創造の新たな方向とファッション

           ③ FBの未来構造と、FB企業が今すぐ取り組むべきこと

           ④ グローバル化の中で、日本企業と個人の成長・成功の課題

 

読んで頂きたい方:は、未来を創る発想と 勇気・行動力のある人。特に、未来を担う若者です。

ご出席くださった方に、お願いしました。 後輩、そして、これはという若者を啓発して頂きたいと。

 

 「未来は、予測するものではなく、創るものである」。〝創るのは(誰かが、ではなく)、あなた″、そして〝いずれ、そのうち″ではなく、〝今″、であることを再度強調したいと思います。

明けましておめでとうございます。 2016年元旦

謹賀新春。

2016年の幕開けは、日本のほとんどが晴天に恵まれた素晴らしいスタートになりました。今年が日本にとって、皆様にとって、良い年になることを心よりお祈り申し上げます。

グローバル化とデジタル化が急速に進む中、私たちの生活も、仕事も、変化のスピードをますます高めています。その変化の 「Ahead of the Curb = カーブの先を行くこと」 に、今年も努めたいと願っています。

1 月 17 日から開催される米国の NRF 大会(米国小売業協会主催)に今年も出かけますが、今年は私にとって、何と 30 回目 (30 年目)となる節目の年です。ファッション流通の展望を探るために長年参加してきたものです。デジタルとディスラプト(破壊して新しい革新を起こす)がキーワードとなる今年の NRF 大会に、私も大いに期待しています。

今年の皆様のご多幸を祈ります。