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< WEF 1周年記念シンポジウム②  南場智子氏が語る イノベーション」 >

 シンポジウムの南場智子さん(㈱ディー・エヌ・エーの取締役会長 ファウンダー)による基調講演で、私が特に感銘を受けたことをまとめてみたいと思います。

 講演は、16 年前に自ら設立した DeNAの、コマースからゲーム、さらに直近のヘルスケア分野へと “インターネットと巨大産業の協創”  による多様な事業展開を通じて、御自身の確信となったイノベーションとリーダー論だったといえます。たとえば“マンガボックス”(人気マンガ家の描き下ろし連載も無料で読めるアプリ)や“チラシル”(いつどこのお店で買うのが一番お得か一目で分かる)。さらには、シック・ケア(病気をケアする)からヘルス・ケア(健康をケアする)に移行する手段としてスタートしたばかりの、遺伝子検査サービス“MYCODE” など、時代の先端を行く革新的事業の上梓です。 

 新規事業の進め方について、南場氏は次のように語りました。「従来は、『企画』 『準備・開発』 『スタート』 『スケール』の各段階の間に、トップの判断(進行の許可)を入れていたものを、“Permissionless” (許可なし)にし、4段階目の『スケール』(大規模展開)に移行するか否かの段階で初めてトップの判断を入れる、と変更したというのです。何故なら、その事業の成否は顧客に問うのがベストであり、「まずやってみてフォロワーがどれだけつくか、など反応を見て、大規模展開すべしとなったら、そこで巨額の投資を経営者が判断する方が、今のビジネス環境に合っている。開発の経費は、サーバーなども安価になり、顧客の反応(リピート率やエンゲイジメント時間など)を把握する事が容易になっているのだから」 というのです。

 革新的ビジネス手法としてのデータマイニング(ビッグデータ解析)も強く印象に残りました。スマホやインターネットが浸透し、情報過多、競合サービス多数で、顧客は1秒で競合サービスに移動が可能な今の時代。どうやったら関心を持ってもらえるか? どうやったら利用開始してもらえるか? どうやったら使い続けてもらえるか? が重要になるが、そのためには、従来の人口動態的な顧客セグメント(年齢・性別など)よりもっと細かな、「個々人への最適化」が不可欠で、そのために「150億超の行動解析ログデータ」を取っている。その結果、「利用を始めてもらう力」は、個人への最適化で3.8倍に、「利用を継続してもらう力」は9.7倍になったといいます。

 こういったイノベーションのために、“生きのいいアイディアを出せる”人材と“データ分析の鬼”を、トップレベルで確保することに注力している、とのまとめに、納得した事でした。

 (次回は、鎌田由美子さんの講演についてです。)

「プロジェクトWEF」シンポジウム開催: 「女性のエンパワメントをめざして」 9月24日

「女性の活躍推進」に関する報道が、新聞やテレビなどを賑わしています。安部首相が力を入れている、「女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム」 World Assembly for Women in Tokyo(略称:WAW! Tokyo 2014)が、912日(金曜日)から14日(日曜日)にわたって開催され、“女性が活躍する社会”へ向けて、大きなうねりが起きているように感じます。主催者は、日本国政府,日本経済団体連合会,日本経済新聞社,日本国際問題研究所。

  初日の12日には公開フォーラムが開かれ、ラガルドIMF専務理事をはじめ世界各国から政治やビジネス界のリーダー達が、女性が働くことによる経済効果や多様な働き方、世界共通の女性の課題を熱っぽく議論したことは、報道されている通りです。また日経新聞が1面で、「Wの未来 俺に任せろ」をスタート。「男性の理解と行動が女性(Women)の輝きを増す。オトコ社会を自ら変える男性たち迫る」のシリーズで、損保ジャパンや加賀屋などのトップが、どのように女性起用を進めているかの事例紹介が始まりました。

  私が会長を務める「プロジェクトWEF」(一般社団法人 ウィメンズ・エンパワメント・イン・ファッション )も、第2回公開シンポジウムを924日(水)に開催します。(詳細 →  http://www.wef-japan.org/ 丁度上記の“WAW! Tokyo 2014” が、シンポジウム前後の期間をシャイン・ウィークス(Shine Weeks)と位置づけ、女性関連イベント開催を推進しているので、「プロジェクトWEF」もこの「サイドイベント」の一環となっています。

  WEFシンポジウムの全体テーマは 「女性のエンパワメントをめざして」。特別講師にお招きするのは厚生労働次官の村木厚子氏。 「しなやかなパワーで課題を乗り越える」 のテーマでご自身のキャリアと誤認逮捕という信じられない出来事に遭遇されても、しなやかに、しっかりと、信念に基づくキャリアを進めて来られたお話し。 トークセッションでは、エシカル・ファッションで著名な生駒芳子氏と()ケイト・スペード・ジャパン社長の柳澤綾子社長に、「ファッション・ビジネスでの女性のエンパワメントとは」、をそれぞれの視点とキャリア体験を含めて、語って頂きます。

  男性を含む沢山の方々に、是非聞いて頂きたいと願っています。9月24日(火)の18:30から会場は、東京ウイメンズ・プラザ 大ホール です。シンポジウム終了後、懇親会も行います。

  お申し込みはHPから。  http://www.wef-japan.org/ お目にかかれるのを楽しみにしています。

 

<女性活躍支援の会「プロジェクトWEF」:キックオフのパネル・プレゼンテーションから>

 一般社団法人 ウィメンズ・エンパワメント・イン・ファッション (呼称 プロジェクト WEF )のキックオフ・シンポジウムでは、パネル・プレゼンテーションとディスカッションもありました。パネラーには 3名。それぞれ異なる分野で新境地を開いた、と言える女性にお願いしました。

まず、オンワード樫山の関東支社長の上野恵子氏は、大手アパレルで初めての営業担当執行役員です。関東支部が新設された時からのメンバーで、大型ブランドの商品担当を任された事がやる気と自信につながり、現在は、80人の総合職とその下に1000人のファッション・スタイリストを束ねて百貨店の販売をマネージして居られる方です。

経済産業省 経済社会政策室長を3年務めて大きな実績を残された坂本里和氏は、2週間前の異動で中小企業庁の創業・新事業促進課長のポストにつかれたばかりですが、経産省では「ダイバーシティ経営企業100選」や「なでしこ銘柄」などに取り組まれ、4人の子育てをしながら活躍してこられました。

ジュエリーブランド「HASUNA(ハスナ)」の白木夏子社長は、イギリスの大学在学中に、貧困問題の研究にインドや南アフリカを訪問。インドでアウトカースト(カースト制度からも除外される最貧層)と一緒に生活をして衝撃を受け、貧困問題の解決にビジネスで取り組みたいと、フェアトレードのジュエリー会社を創立した方です。数多くの受賞のほか、昨年はダボス会議にも招かれました。2歳のお子さんを伴って会場入りされました。

  パネラーには各20分のプレゼンテーションをお願いしました。上野さんと白木さんは、それぞれ、自分のキャリアの経緯と仕事にかける思いを述べられました。坂本さんは、『成長戦略としての女性活躍の推進』をテーマに、多面的で分かりやすい話をして下さいました。たとえば「女性役員が1人以上いる企業は、能力の範囲拡大やガバナンス強化等により、破綻確率を20%減らせる」。あるいは「ワークライフバランスに取り組む企業―すなわち育児介護支援や柔軟な職場環境推進に取り組む企業は、何もしない企業に比べ生産性が2倍以上高い」といったデータは、ダイバーシティと女性活躍が経済や社会にもたらす好影響の説明として説得力がありました。女性の60%が出産を機に仕事を辞める事、日本女性の就労は、今だにM字カーブ(出産・子育て期の離職で就労カーブがM字型を描くこと)で、先進国では唯一である、という事実も再認識させられました。

  上野さんは洋服が好きでこの分野に入り、男性と同じように働いて、ブランドとショップを任され幅広い経験が出来た事が、今日に繋がっている、といいます。岐路に立った時には悩みつつも努力した経験が原動力になる。仲間や周囲の理解とサポートも仕事を続ける支えになった。また、「服は鎧。自分を励ます応援歌」ともいわれました。 40歳で課長になって仕事か家庭かに悩んではじめて、キャリアや人生は人それぞれによって異なる事に気付いた、との話もありました。

  白木さんは、女性中心で会社を運営しようという考えから、そのためにはまず自分自身が子育てを、と考え、実行したといいます。世界の各地から、直接、またフェアトレードで仕入れるために、海外出張も多い生活をされていますが、ワークライフのバランスについては、自分の時間さえコントロールできれば両立は可能。毎日子どもを寝かせた後の時間を仕事に充てることで、自分の時間を作り執筆などに使っていると語りました。

  男性の管理職が多く参加されていたことから、司会の生駒芳子さん(WEF理事)が、「女性を職場で活用するためにどうしたら良いか」についてパネラーの意見を求めました。坂本さんは、「女性は自己評価が低い傾向がある。女性が躊躇しても思い切って任せてみると意外と上手くいくことが多い。時間的な制約が仕事の成果に影響を与えないよう、フレキシブルに働ける環境を作ることも大切」と。上野さんは、「女性は小さなことでも楽しみを見つけようとする傾向があるので、そういうところを生かしてあげると良いと思う」。また白木さんは、「消費者としての直接的な意見を反映できる点は大きい。起業も女性に向いている選択肢だと思う」と述べました。

  女性の社会進出とか、女性を活用すべし、などというと、「いまさら?」と言う方も多いかもしれません。しかしこのシンポジウムで、すぐれた能力を生かして活躍する女性達が講師として登場し、その体験を通じて、女性と男性が互いに力を発揮しあい、あるいは足りないところを補完し合う事が、どんなに優れた社会や企業を作るかを力説するのを聞きで、女性活躍はまさしくこれから、という感を強めた方が多かったのではないでしょうか。

(次回は、プロジェクトWEFがめざすもの、について尾原の想いを書きたいと思います。)