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「ファッション・ビジネスにおける留学セミナー」 第 3 弾: 7 月 12 日開催

 「ファッション・ビジネスにおける留学の意義」をテーマとするセミナーを開催します。

 日本FIT会では、ファッション・ビジネスにおける留学を推進するために、2012年から「FB留学セミナー」を実施しています。その 第3 弾 が、712日(土)1001540で開催されます。場所は六本木の、ハリウッド大学大学院教室です。講師はすべてFITの卒業生(1名は Parsonsの 卒業生ですが、この秋からFITGlobal Fashion Management という大学院コースに、ユニクロの奨学金で留学する人)です。(セミナーの詳細は  http://www.fitkai.jp/ でご覧ください。写真は 2012年開催の留学セミナーのパネル・ディスカッション風景)

 日本からの留学生が減っている事が、問題になっています。ファッション・ビジネス関連でも、ニューヨークのFITでは、ピークの 2005 年の 164 人から見ると 70% 以上減ってしまっています。理由は、学生の内向き志向や費用負担だと言われます。しかし、ますますグローバル化が進むこれからの時代、日本企業の成長・成功の鍵が時空を超えて閉ざされた日本市場の外へ出てゆく事、と言われる時代に、次代を担う若者には、世界へ出て、異文化の中で自信を持って仕事を進める能力を身につけて欲しいと思うのです。

 有難い事に、ファーストリテーリング社が、TOMODACHI-UNIQLOという奨学制度を 2012年に設置されました。これは、毎年 3 名の奨学生をFITParsons、およびStanford3つの大学院(マスター・コース)に1名づつ派遣するもので、学費・渡航費等の全額を授与する贅沢な奨学制度です。ぜひチャレンジをして頂きたいと思います。

http://www.fitkai.jp/pdf/tomodachi_201212.pdf 参照)

 今回の「ファッション・ビジネスにおける留学の意義」の講師は、講演「私を起業させたFITでの学び」が、ニューヨーク在住のハンドバッグ・デザイナーの中野和代さん。パネラール・ディスカッション「私の留学前、留学中、そして卒業後」の講師は、㈱ユニクロのグローバル・マーケティング部所属の北村文人さん(FITディスプレイ&展示デザイン科卒)。㈱コックスのマーチャンダイザー、渡邉真理子さん(パターンメーキング技術科およびファッション・デザイン科卒)。フリーランスのコンサルタント、石川直子さん(ファッション・マーチャンダイジング&マーケティング科および広告&マーケティング・コミュニケーション科卒)。そして㈱ブルックスブラザーズジャパンのアシスタントバイヤーの保田優衣さん(Parsonsファッション・マーケティング科卒)です。

 経済協力開発機構(OECD)等のまとめによれば、日本人の海外留学生は、ピークだった 2004 年の 82945 人から、2011 年には 57501 人と3 割減ったそうです。先日の日経新聞の報道では、「新入生 留学必修に」の見出しで、一橋大学や立教大学・早稲田大学が、新入学生全員を留学させる方針にした、と報道しています。(73日付夕刊)

 ファッションは、多くの産業の中でも、グローバル要素が最も大きいビジネスです。是非このセミナーを利用して、視点を高く、視野を広く、して頂きたいと願っています。

<『ファッション・ビジネス』を振り返って③―グローバル人材育成のFIT・GFM コース>

 日本FIT会では、来る 11 月 19 日に、FIT大学院の 「グローバル・ファッション・マネジメント」 コースを紹介するインフォーメーション・セッションを、FITから2名の教授を招いて開催します。 対象は、留学でファッション・ビジネスのマネジメントを学びたい方、あるいは企業や大学で社員や学生のキャリア指導をされている方、です。

 テーマは 「ファッション・ビジネスのグローバル人材を育成するFIT――Global Fashion Management (略称GFM) コースで学べる事は?――」 。

 紹介するコースは、 『これからのグローバル時代に求められる企業幹部』 を育成する目的で設置された、世界でも類のないユニークな修士コース。ファーストリテーリング社(ユニクロ)が、留学奨学金を出しているコースでもあります。 カリキュラムは、ファッション分野でグローバルに活躍する人材に必要なマネジメント全般 (戦略やグローバル・マーケティング、ファッション・ブランド・マネジメント、ソーシングや財務、情報技術など) を幅広くカバー。 特に注目すべき事は、ニューヨークのほか、パリ、香港の3都市で、各2週間の集中セミナーが行われ、パリではラグジュアリー・ビジネス、香港では生産やソーシングを中心に学ぶ、極めて今日的、国際的、かつ立体的なものです。与えられる学位も MBA ではなく、MPS (Management for Professional Studies) というこれまたユニークなもの。世界から多様な人材が学んでいて、国際感覚を磨く意味でも、有効なコースです。

FIT/GFMインフォーメーション・セッションのご案内

  (詳細は、日本FIT会のホームページ:  http://fitkai.jp/pdf/4th_131009n.pdf をご覧ください。)

 日本のファッション・ビジネスにおける専門的人材の養成を振り返ってみると、先回書いた、ファッション・ビジネス誕生の初期段階では、まず「デザイナー」、ついで 「パターンメーカー」や「生産管理者」の育成が中心でした。 その後、既製服の拡大に伴い、新たなデザインを魅力ある商品ラインに組み立て、流行の波に乗りながらビジネスを回すマーチャンダイザー養成へのニーズが高まりました。さらに、ビジネスの成熟化に伴い、市場の動きとターゲット顧客を捉え、ブランドの魅力をアップする、マーケッターやファッション・コ―ディネーターの必要性が浮上します。また、商品の魅力だけで勝負するビジネスから、店舗でのプレゼンテーションが重要になって、ビジュアル・マーチャンダイザー、さらに最近になってからは、ブランディングを感性面からリードするクリエイティブ・ディレクターの必要性が叫ばれるようになりました。この間、工場の生産システムやコンピュータを活用したパターンメーキング、グレイディングや、ネットビジネスやソーシャル・メディアの拡大にからむ、ICT (情報コミュニケーション技術) などの技術系のプロフェッショナルも必要になりました。

 そしていま、ビジネスがグローバル化し、さらに激化する競争の中で、企業が勝利するためには、氾濫する製品や数多のブランドの中から抜きんでたアッピールを持つブランドの開発とマネジメントが不可欠になってきました。

 FIT の GFM コースは、まさしくこういったビジネスを展開できる人材の育成をめざすものです。新しい時代が求める、独自性と優位性ある商品、ターゲットとする顧客が価値を認める 『信頼される』 ブランドづくり、グローバルな競争力、そしてこれらを達成するためのICTの効果的活用、の能力です。 めったにない機会ですから、興味のある方の積極的参加を期待しています。

<ソーシャル・ビジネス時代とファッション ⑤ ――事例: エシカル>

  エコロジー/サステイナビリティの分野に取り組むソーシャル・ビジネスについて、先回述べました。今回は、「エシカル」分野の事例を紹介したいと思います。 「エシカル」とは、 「倫理・道徳的、人道的」 な視点から、社会的問題解決に挑むものです。 事例として取り上げるのは、㈱ マザーハウスと、㈱ ファーストリテイリングの 「グラミン・ユニクロ 」事業です。

1.株式会社 マザーハウス

 「途上国から世界に通用するブランドをつくる」 をミッションとする同社は、高級バッグの生産販売会社です。デザイナーの創業者(山口絵里子)が大学時代に世界でも最貧国のひとつ、バングラデシュを訪問。途上国の現状を知り、現地の大学院に入学。その国にある人や資源の良さを最大限に生かしたデザインで高品質の製品を作り販売することに取り組みました。そこで出会った素材はジュート(麻)。これを様々な苦労を重ねて、ユニークなバッグの開発に成功したのです。その狙いは、貧しい人たちが 「援助を受ける」 のではなく 「ビジネスで自立する」 ことでした。日本の若い女性が、世界の最貧国と言われるアジアの国で、2006の起業でした。生産はその後ネパールに拡大しています。

  同社のホームページには、<MHアクション>として、次の様なメッセージがあがっています。

Fashion is philosophy: We wear what we believe. ファッションとは哲学そのものである。私たちは価値観を身に着けている。』 その説明として、「ファッションとは個人の価値観、そして哲学を表現する重要なツールです。外見だけではない内面の美しさを表現できるファッションの受け皿として、マザーハウスはあり続けたいと考えています。」

  マザーハウスの創業者、山口絵里子さんは、2012 年 12月に 日本ハーバード・ビジネススクール・クラブから「2012 年度アントレプレナー賞」を受賞しました。その時の受賞コメントが感動的だったので、ご紹介します。「最貧国でのビジネスを軌道に乗せるために大事なことは『信頼関係』です。 政情不安でも、非常事態宣言が出ても現地にとどまり、決して逃げなかった。そのうちに 『この人は発注量も少ないが、ベンガル語を話し、普通のバイヤーが来ない工場へもやって来る、、』 と言ってくれる友人になった」というのです。24 歳での起業と事業の成功に、多大な拍手を送ります。 

2.ファーストリテイリング社

  バングラデシュで同社が展開している 「グラミンユニクロ」 も 「エシカル」 分野のユニークな事業例です。ファーストリテーリング社は、バングラデシュの貧困、教育、衛生、ジェンダー、環境など、社会的課題をビジネスの手法で解決することを目的に、2010 年にソーシャル・ビジネスの会社を立ち上げました。2011 年にはグラミン銀行グループの子会社との間に合弁会社、グラミンユニクロ社を設立し、現地でソーシャル・ビジネスを開始。よい服をバングラデシュで企画・生産し、貧困層の人たちが購入可能な価格で提示。商品の販売は、グラミン銀行から融資を受け、それをもとに自立を目指す “グラミンレディ” たちが行う、という仕組みです。同社のホームページによれば、農村部出身の貧しい彼女たちが、農村の家々を訪ねたり、自分の家を店代わりにして、商品の特徴を説明しながら販売に当たるとのこと。商品は基本的には委託販売方式で、グラミンレディは売上代金に応じてコミッションを受け取るのだそうです。そしてその利益はすべてソーシャル・ビジネスへ再投資する、このビジネス・サイクルを現地の人々の手でまわしていくことで、貧国・衛生・教育などの問題解決を目指そうとするものです。 

  商品構成は、「当初からのインナー類や無地のTシャツなどに加え、その後、ポロシャツやプリント Tシャツ、襟付きシャツなどを追加。民族衣装のサリーや衛生改善に役立つ下着やサニタリーナプキンの販売も開始しました。商品の価格については、当初は 1 ドル以下に設定しましたが、生産コストとの兼ね合いで商品に競争力がなく、思うように販売が伸びませんでした。そこで商品構成と価格帯を見直し、2 ~ 4 ドルの商品も開発。素材もコットンに加え、ポリエステルやアクリルなど機能的な化学繊維も取り入れるなど、その種類も豊富になった」という事です。

  さらに従来からの農村部における販売に加え、首都ダッカのショールームでの販売もスタート。今年の 7 月には、バングラデシュのダッカ市内にグラミンユニクロ初の店舗、2 店をオープンしました。今後も都市部での出店と情報発信、ブランディングを積極的に進めるとの事です。

  服の企画、生産、販売を通じて人々が心からほしいと思う商品を提供し、同時に雇用を創出する。特に貧しい国で虐げられている女性の自立を促進することで、社会の色々な問題解決につなげる、というこのグラミンユニクロのプロジェクトは、素晴らしいものだと考えます。またこのような先駆的な活動を、日本企業が世界をリードする形で進めていることを、誇らしく思うとともに、同社 CEO の柳井正氏のグローバルなビジョンと、リーダーシップに、大いに敬意を表すものです。