FITセミナー「オムニチャネル時代のファッション・ビジネス」の報告のまとめとして、チャクター教授が最後に強調した「違いを生み出すマーケッターの行動」を紹介しましょう。

  「オムニチャネル時代の到来」を説くまでもなく、小売ビジネスの環境は激変しています。モバイル(携帯端末)の普及と日常生活への浸透は、Eコマースに巨大な影響をもたらすでしょう。モバイルは、「リアル店舗での買い物体験の 絶対的なゲーム・チェンジャー(変革を起こす力)となる」とチャクター氏は強調します。なぜなら、顧客は、店頭でモバイルの技術力を利用することで、従来では考えられなかった主体的な情報収集、判断、行動を起こし、自らの買い物体験を創造するからです。

  このような変化の中で、マーケッターが「他社との違いを生み出す」ために必要なことは何でしょうか? チャクター教授が下記を上げました。

 1.Rethink―― もう一度、“つながる消費者” の意味を考えよう。――“つながる”の最大の意味は、消費者同士が繋がり互いにインタラクトしながら大きなパワーになること、だと私は考えますが、それが脅威にも、チャンスにもなり得る、ということを肝に銘じることが重要です。また企業あるいはブランドは、顧客(消費者)との繋がり(単なる関係だけではなく、エンゲイジメント)を醸成せねばなりません。

 2.採用は“アティテュード(態度・姿勢)”をもとに行い、スキル(技術)はトレーニングで習得させる――スタッフの採用は、スキル優先ではなく、顧客に快適な買い物をしてもらうために出来ることをすべてする、といった姿勢の持ち主を雇え、の意味です。

 3.フェースブックの “いいね”は 許可=会話を始めることの許可と考えよ。――“いいね(Like)”を数多く獲得することだけでは、大きなことは起こせません。それを起点に顧客との会話を深めてゆく事が大切です。

 4.誰にサービスを提供しているかを忘れないこと。顧客を知ること。質問をし、リサーチをし、新たなプロモーションを試す。――ターゲットを明確に、あるいは再確認するために、双方向のコミュニケーションが有効です。

 5.従来の路線から踏み出すことを恐れるな。ただし、モニターをし、反応の分析を忘れないこと。――ソーシャル・メディア、オムニチャネルは、これまでの顧客マーケティングの概念を大幅に逸脱するものであり、まだ緒についたばかりです。新たな試みに挑戦することなしに成功する、とくに一般論でなく自社にフィットする方策をみつけることは、難しいでしょう。

 6.革新的な考えを受け入れよ。ただし、Eメール、検索、ターゲット・マーケティングなどの基本を忘れてはならない――

  以上、8回にわたって、FITセミナー第3弾「オムニチャネル時代のファッション・ビジネス――ブランディングと顧客エンゲイジを成功させるソーシャル・メディア活用法」から、私の印象に残ったポイントを御紹介してきました。

 次回は、私自身の「オムニチャネル時代のファッション・ビジネス」についての考えを述べ、まとめにしたいと思います。