第140 回目のNRF(全米小売業協会)大会は、久しぶりに好調といえるホリディ商戦をふまえて、前向きムードで開催されました。 しかし課題 は山積。大会の総括をしたWWDの記事は、「天気予報は曇のある晴れ」 と報道しています。特に変容する消費者の問題を取り上げるセッションは、数多くありました。

 なかでも「ミレニアル世代」と呼ばれる、1535歳の世代。ネットやソーシャル・メディアの普及の中で育った彼らは、これまでの消費者とは全く異なるものを持っています。

 彼らが「ブランド」や「ラグジュアリー」について、どんな考えをもっているのか? NRF 初日の “The Changing World of Luxury” は、非常に示唆に富んでいました。 講師は、ビッグデータ調査で小売業を支援するRichRelevance社トップのデイビッド・セリンジャー氏、バーニーズ・ニューヨークのEVPマシュー・ウールセイ氏です。

(画像は3人のパネル・ディスカッション風景) 

  「今日のラグジュアリー顧客は、テイスト面・価値観ともに多彩で、単純な定義はもはや不可能。とくにミレニアル世代は、新しいラグジュアリー市場のフロンティアだ。パーソナルな製品やサービスを要求する彼らを捉えるにはビッグデータやテクノロジーが不可欠。これを“顧客セントリック”で行えば、“製品セントリック”のアマゾンにも対抗できる」 というのが、「変化するラグジュアリーの世界」セミナーのメッセージでした。  「ミレニアル世代が大変動を起こしている。彼らはブランドではなくクオリティ、職人技(クラフツマンシップ)、そしてオーセンティック(真正・正統派・ほんもの)、信頼性を求める。ラグジュアリーとは、どこで、どのように作られたかだ。」というのです。

 レニアル世代は、年齢が若くて高学歴。テクノロジーに習熟していて、平均より高収入な、複雑かつマルチタスクの生活者。HENRY high-earner not rich yet=高収入だがまだリッチではない)とも呼ばれるている彼らは、キャッシュフローは大きくても財の所有には関心がないといいます。自動車も 50% 以上がリース。Uber Rent the Runway  などレンタルも活用。ハンドバッグを買うのでも、まずブランドに行くのではなく、こんな機能のバッグが欲しい、スマホで検索し、マーク・ジェイコブスからニッチのローフラー・ランドルまで幅広くブラウズする。つまり従来のラグジュアリー顧客とは違う、かってない厳しい顧客だといいます。

 彼らにとってのラグジュアリーとは、発見ストーリー”。 発見を可能にするのは、語りのコピー、パーソナル化した製品、パーソナル化したサーチ(検索)です。ビッグデータは隠れた情報を見つけるツールとして重要で、たとえば顧客の要求が、特定モデルの車ではなく「子供を乗せられる車」 だと把握・認識出来るからです。 ミレニアル顧客は 「ファンクショナル・ラグジュアリー」を重視します。米国でのSNS会話を分析した調査では、ラグジュアリー・ブランドのトップに iPhone が踊り出ました。

 Story Tellingも重要です。 顧客の関心に合わせた歴史的物語を テクノロジー活用で魅力的に提供することが出来ます。バーニーズでは、個客にパーソナル化したサイト検索を提供したり、インテル社とコラボして、ラグジュアリー・スマートウォッチを開発しているとの報告もありました。

 2015 年は、ビッグデータを戦略的に活用する最初の年になる、と講師陣は強調していました。