リテーリング

石倉洋子さんの 「デジタル監」就任に拍手! と NRF2021 第2ステージ大会報告

今日、正式に発足したデジタル庁の「デジタル監」に、一橋大学名誉教授の石倉洋子氏が就任されました。石倉さんは、私が非常に尊敬する世界的人材で、広い視野と高い視座、柔軟な発想、そしてスピード感と行動力をもつ人です。今、変革を迫られている日本、なかでも世界に大きく後れを取っている“デジタル化”という、旧態的考え方ややり方では不可能な事業のリーダーに、石倉さんが就かれたことに、最大限の拍手を送るとともに、応援したいと思っています。

実は石倉洋子さんは、筆者の仕事やキャリアにおける長年の友人、というより仕事における同士的存在でもあります。1970年に、日本の繊維ファッション産業の変革を目指して旭化成が始めた「FITセミナー」の通訳として8年間お世話になったのを契機に、以来、プロフェッショナル人材開発、ビジネスのグローバル化、変革をリードする経営者育成、人材の多様性や女性活躍支援など、私が力を入れてきた活動に、いつも惜しみなく協力と支援をして下さってきました。

日本女性初の、ハーバード・ビジネススクール博士号取得、ダボス会議での色々なセッションの司会者、など、日本人としては希少/貴重な経験もされている石倉さん。デジタル庁の喫緊の課題は、コロナ禍で明白になった行政サービスの不備をデジタル化で克服することにあり、「マイナンバー」の普及を中核に、国と地方自治体間のデータ共有や、官僚機構の縦割り打破、さらには教育や医療分野にも取り組まれることになると思われますが、多様な能力をもつ民間人200名を配下に、存分の力を発揮して下さることを祈念しています。

行政のデジタル化というこの動きは、当然ながら民間のビジネスにも波及し、わがファッション流通のデジタル化、DX(デジタル・トランスフォーメーション)の進展を促進すると期待しています。

「NRF第2ステージ リポート:

ニューノーマルとは 変化が常態になる世界」

コロナ禍をテコに、新たな未来に向けて、大きな変容を遂げつつある米国。デジタル・トランスフォーメーションが企業の勝敗を大きく左右しています。恒例の全米小売業大会の2021年度は2回に分けたバーチャル開催になりました。その第2弾のリポートを、昨日の繊研新聞でご覧ください。 (繊研新聞 2021年8月31日付け 9面 繊研新聞社より掲載許諾)

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新型コロナウィルスと小売りビジネス② ― 「コロナ・パンデミックは何を変えるか?」 

 新型コロナに関する緊急事態宣言が全国的に解除され、約 1 か月半の巣ごもりから解放されました。まだ 感染第 2 波の心配もあり、東京は今日 “アラート”信号も出ましたが、外出禁止がとけたことで、精神的にはホッとしています。心配されていた感染爆発を免れ、死者数も世界各国と比較しても極めて低い数字に抑えこんだ日本。その主たる要因を検証することは、今後のために不可欠ですが、とりあえずは、日本人の衛生観念、自粛要請への協力・努力、そして医療環境の整備と医療関係者の献身的な努力、などの成果と、改めて感謝と誇りを感じます。 と同時に、感染されたり身内が亡くなられた方、経済的困窮に陥られた方には、心からのシンパシーと励ましの気持ちをお送りしたいと思います。

 COVID-19パンデミックは、前例のない “健康危機”と世界的な “経済ショック”の同時発生です。感染拡大は、現在も世界各地で続いています。これまでも、リーマンショックや東日本大震災などの危機はありましたが、今回は、世界的な、そして感染がもたらす「命への脅威」であり、人々の日常的生き方、家族、コミュニティ、社会などの在り方を大きく変えつつあります。

 今回は、都市封鎖が徐々に解除されつつある欧米の動きを見ながら、“ポストコロナ” あるいは “ウィズコロナ” の世界がどのように変わるか、について考えました。人々の価値観、生活の仕方、働き方がどう変容しつつあるか? そしてそれに対応して、ビジネスがどう変わらねばならないか? です。 

 

◆   人々は、幸せに生きることの価値を、考え直している

 マッキンゼー社が興味深い調査をしています。このパンデミックが世界の人々に、どのような価値観や生き方の変容をもたらしているか? (Reflection in Crisis2010527日公開 『ロックダウンが我々に、何が重要なのかの再発見を助けてくれた』)     この調査結果で判明したことは:

①    人との個人的関係の深化―― 「家族や最愛の人が最優先、と常に考えてはいたが、実行していなかった。その実行は“楽しく心地よかった”」

②   幸福のために何が不可欠かの再評価―― 「幸せであるために必要な、収入と職業上の成果を再評価中。働く時間を減らしても、その収入でやれるなら、家族との時間を重視したい。キャリア目標は以前より重要でなくなった」

③   「健康第一」マインド―― 健康は、国、年齢、社会経済レベルを問わず最重要に。「私に起こった長期的でポジティブな変化は、健康、健康、そして健康。どんなに多忙でも、仕事が山積していても、肉体的そして精神的な健康のために時間を取ることが、いかに重要かが分かった」 

ビジネス・リーダーが注目すべきこととしては:

④    新しいトレードオフ―― 働く人の個人的キャリア目標が変化すれば、給与と、働き方の柔軟性、短距離通勤、ゆったりした仕事のペース、 等のトレード(取引)が進む。営利企業より非営利組織で働く人が増える可能性も。ワークライフ・バランスを、企業のお題目から、企業のリアリティにすべし。

⑤    新しいボスは=消費者―― ウォルマート創業者サム・ウォルトンが言ったとおり、 「ボスは一人しかいない。それは消費者。買う店を他店に変えるだけで、企業の会長から担当者まで解雇できる」。企業はいま、多くの“新しいボス”を迎え入れようとしている。これまで消費者行動として理解されていたものは、永遠に捨て去られた。代わりとなる“新しいもの”=評価・判断の基準=が、スピード感をもって登場する。

 

 こういった変化をとらえた素晴らしいメッセージ・ムービーを見つけました。

ビームスの 『会いたい。』 です。「会えない今だからこそ、大切なものに気が付く」。 (画像参照)

        「Dear friends. 〜 わたしの世界篇」

STAY HOME 週間に生まれた企画だとのことですが、「私には友達がいる。、、」 の語りで始まるベランダの友人たちの写真。この「Dear friends. ~ わたしの世界篇」 のビデオは、まさしく外出自粛がなければ気づかなかった、人のぬくもり、友人の大切さです。 

→ Dear friends. 〜 わたしの世界篇

 

◆ 経済へのダメージ

 今回のパンデミックでは、過去に類を見ない大きさのダメージが、非常に広範囲に及んでいます。V字回復は望むべくもありません。わがアパレル/流通業界では、「回復には少なくとも 年は必要」、などと言う人がいますが、「回復」とは、どのようなことを指しているのか、あらためて真剣に考える必要があります。現在抱える過剰在庫や当面の資金の手当てがつき、「3密」回避を実現する安心・安全な小売り営業の手法が開発されたとしても、コロナ以前の旺盛な消費マインドとビジネス成果が「復活」することは、ありえないと思われます。

  企業倒産も増加。財務的な問題を抱えていた企業がコロナの引き金で破産、民事再生法申請に至った事例は、5月に入って老舗アパレルのレナウン、米国では大手高級百貨店のニーマン・マーカス、大手GMS J C ペニー、また著名 SPAチェーンの J. クルーなど、目立っています。ユニークさで人気があったPier 1 Importは、廃業に追い込まれました。倒産・破産は今後も続くと思われ、店舗数の大幅縮小は、時の流れとなっています。ノードストロムでさえ、フルライン店 116のうち 16店を永久閉鎖、傘下の著名セレクトショップ、ジェフリーズ4店も閉鎖し、ジェフリー・カリンスキーも同社を去りました。M&Aも進むと思われ、J C ペニー(242店の永久閉店はすでに発表済)の一部あるいは全店舗をアマゾンが買収する、という噂も現実味があります。
  米国の、4月の小売全体の売上は、16.4%の減少。とりわけファッション関係は、78.8%減と、史上最大の落ち込みです。ネット販売も4月には世界で 209%増などと報道されていますが、売り上げは上昇しても、コロナ対応関連コストや宅配競争、人手確保等の経費上昇で、黒字になっている大手企業はウォルマート等を除けば、わずかです。

 ロックダウンが段階を踏んで解除されてゆく中、企業はいろいろな工夫で、社員と顧客の安全を確保しながら、ビジネスの回復に懸命です。例えば、BOPIS(ネット購入・店舗ピックアップ)は 2.5倍に伸び、一般化したカーブサイドピックアップや宅配、置き配、などに加え、マスク着用や消毒液準備、ソーシャル・ディスタンシング、入店制限、コンタクトレス決済、などが進んでいます。それでも、消費者は来店に躊躇。ファッション関係では若者の一部が安売り店などに出向く以外は、おしゃれ目的のショッピング(ブラウジング)をする動きは少ない。顧客が試着した商品は、日間売り場から取り除く(ノードストロム)、あるいは試着後クリーニングや熱アイロンで殺菌処理をした服が、“新品には見えなくなってしまう”(ミラノのブティック)、などの苦労も報道されています。店が再開しても、試着室には入りたくないという人は、女性で 65%、男性で 54%に達します。 

 大胆な戦略も注目されます。ウォルマートは中古衣料の大手 ThredUpとパートナーを組み、リーバイスやチャンピオン製品などを含むリユース製品販売に参入。“隣同士が助け合い(Neighbors Helping Neighbors)”プログラムを SNS  Nextdoor の起用で開始、など、同社のアグレッシブな戦略には、1 か月で 15万人の新規雇用や従業員へのコロナ手当 10億ドルも含め、目覚ましいものがあります。そのほか、REIWest Elmの 35アイテムの提携なども話題になっています。

  ファッション・デザイナーの世界でも変革が始まりました。コロナ以前から、疑問視され改革が求められていた様々な業界慣習が、今回一気に表出しました。巨大な経費をかけ年に5~6回開催されるコレクション・ショーのバーチャル化や回数削減、7月にウールコートを売るなどの、生活から乖離した業界慣習の“シーズン”(いわゆるファッション・カレンダー)などの改革です。コレクションを年5回から2回にすると発表したグッチのアーティスティック・ディレクター、アレキサンドロ・ミケーレが、「シーズンごとに繰り広げられる派手な回転木馬に “Basta! もういい” と叫んだ」 とBoF は報道しています(5月26日)。ミケーレに 「来るところまで来てしまった」 と言わしめたファッション・ビジネスの華麗・華美志向のエスカレート。これもパンデミックで、エッセンシャル(本質)を取り戻すことになるでしょう。 

◆   デジタル化の急速な進行 ―今こそ トランスフォーメーション(変容)のチャンス

 こういった中、見えてくるのは、本質(真に意味のあるもの)を効果的に=スピーディで安価で簡便に、中間業者抜きで=獲得するための、デジタル化への動きです。

 ファッション関連では、ネットやSNSショッピングは勿論のこと、ビデオ・ストリーミングやバーチャル・フィッティング、チャットや リモート・パーティ(ヴォーグ社はアメリカ高校生の大イベントProm=ダンスパーティをZoomで開催)、そのためのスタイリング・サービス、あるいは、コンタクト・フリー(無接触)の対話や支払い、などが急ピッチで進んでいます。 「デジタル化は周回遅れ」と言われる日本でも、今回のコロナ禍で人々は、テレワークや リモート授業、Zoom等での会議や飲み会、オンライン診療やウェブ面接、ハンコ無しの承認、バーチャル音楽会などを、部分的とはいえ経験し、その価値を認識しました。ネットショッピングも違和感なく行えるようになった人も増えました。当局もやっと日本のデジタル化の遅れに危機感を持ったようです。

 働き方も大きく変わるでしょう。在宅勤務を経験した女性の7割以上が、今後も続けたいと言い、主要企業100社のトップの9割超が、テレワークを今後も継続すると答えています(いずれも日経新聞)。

 経団連会長企業の日立は、在宅勤務に後押しされて、世界標準の「ジョブ型」雇用に移行すると発表。日本的経営を支えてきた 「メンバー型」雇用 (ゼネラリスト養成に適した、職務を特定しない人事・採用)からの脱皮、という大変革に取り組むと言います。伝統的な終身雇用を基盤とする日本型の仕組み、それ故に、専門職や女性の活躍を阻んできた仕組みからの、転換の拡大が期待されます。

◆   ファッション・ビジネスの未来:ポストコロナは?

ファッション産業の未来は、従来の延長性で考えれば、かなり悲観的なものになるでしょう。ファッションが自由裁量支出(不要不急)であること、ディスカウント志向・価値志向、ソーシャル・ディスタンティングなどの新たな生活スタイル、などの潮流が定着すると考えるからです。しかし人々が、自分や家族を大事にし、ユニークで快適でサステイナブルな衣服や小物を着用したいという気持ち、すなわち“心が喜ぶ消費”は、逆に拡大すると思われます。アップサイクリング、中古販売、DIY(生活者が自ら創る)、3D活用のモノづくりなどを含め、サービスと合体したファッションの新ビジネスを、革新的企業、あるいは、SNSなどの新たなツールが実現することを、私は期待しています。

 ここで重要なことは、ポストコロナへ向けての変革、あるいはトランスフォーメーションは、これまでのしがらみから離れて、ゼロベースで考える必要があることです。「今、New Normal (新たな常態)を前提に、“新たに” “このビジネス”を、“利用可能なテクノロジーを活用して” ゼロから立ち上げるとしたら?」、「誰をターゲットにどんな独自性をもって始めるのか?」、と改めて自問し、根本からスタートしなければ、従来のビジネスのパッチワークになってしまうでしょう。

  ファッションに限らず、あらゆる産業の企業が実践すべき、ポストコロナの行動について、マッキンゼー社が、 「Next Normalの考察から実現へ:何をやめ、何を始め、何を加速するか」 と題した論説を発表しています。(“From thinking about the next normal to making it work: What to stop, start, and accelerate. 2020. 5.15)。 そのための 7つのアクション」 が非常に示唆に富むものなのでご紹介しましょう。 注:同社は、New Normal(新たな常態)ではなくNext Normal (次なる常態) の表現を使っています。>  

<ネキスト・ノーマルへの つのアクション:何をやめ →何を始め、何を加速するか

1.オフィスでゆったり仕事 → 効果的リモートワーク

2.ライン/サイロ(縦割り組織) →ネットワーク/チームワーク

3.ジャストインタイム→ジャストインタイム&ジャストインケースJIC=万一のために)

4.短期のマネジメント → 長期視点のキャピタリズム

5.トレードオフ(二律背反=両立は成り立たない) → サステイナビリティも包含

6.オンライン・コマース → コンタクトフリー(接触なし)経済

 7.単純な復帰 → 復帰 & 再考/再構想

 

 これらのアクションについては、次回に詳しく述べたいと思っています。 

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NRF 2018レポートplus③ 「現場に浸透しはじめたデジタル技術と、未来を開くiLab」

 NRF 2018の報告に plus (関連情報やその後の動きなどをプラス)して書いている   NRF シリーズ第 3 回目は 「テクノロジー」です。これは2018大会のテーマ 「小売りのトランスフォーメーション」の中核となる手段であり、これまでで最大のスケールで展開されました。展示ブースも700余、開発中のテクノロジーを見せるiLab も例年をはるかに超えるスペースをさき、多様な技術を提示しました。

(写真は iLab に掲げられた“Innovate or Die の看板) 

 「トランスフォーメーション」とは、単なる変化ではなく、“形態・外見・性質の変容”を意味する言葉で、昆虫などの「変態」つまり、幼虫がさなぎになり蝶になるといった変容にも使われる言葉です。ということは、一朝一夕に達成できるものではなく、テクノロジーをテコに、仕事の仕方/組織のあり方を変える、組織文化/行動の変革を意味します。これを、“Outside-In”(顧客から内部改革へ)のデジタル・ダーウイン主義」すなわち、顧客の進化に従い、企業が変容して行くこと、と言う人もいます。その意味で2018年は、昨年のNRFからのメッセージ、「デジタル技術は今、飛躍への“転換点(ティッピング・ポイント)に” に続いて、小売り業界全体が、いよいよトランスフォーメーションに本格的に取り組み始めた年、ともいえるでしょう。

 テクノロジーについて、「今回のNRFは、目新しい技術は少なかった」という人もいます。しかし私は、これまでに登場したテクノロジーが、自社の“トランスフォーメーション”のために、どのように活用出来るか、自社の戦略としてはどこから始めるのがよいか、等の観点で多様な方向性が紹介された非常に重要な大会であったと考えています。議論・提示された最大のテーマは、AI(人工知能)によるビッグデータ分析からパーソナル化、それに絡む人材確保と革新的組織作りでしたが、AR(拡張現実)、コンピュータ投影(computer projection)画像認識、ロボット、IoT(カメラ、センサー、RFID等の多様な要素技術のコネクト)、などの事例も多く紹介されました。RFIDも、在庫管理や一括レジなどの単独機能から、センサーやカメラやAI活用により個別商品・個別顧客の動きを本部や店舗のマネジメントにコネクトし、販売スタッフの業務内容にまでカバーする業務効率アップに加え、顧客体験の向上を達成する、複合的ソリューションの段階に入っています。

 時代は、『新しいテクノロジーについて知る』 ステージから、『どの技術を使って、自社のビジネスを変容させるか』 に入っていると痛感しました。 

AR(拡張現実)>

 AI(人工知能)によるデータ分析や深層学習の事例が多く紹介された大会でしたが、今回筆者はAR(拡張現実)に今後の大きな可能性を感じました。これまでもARについては、色々な試みが進んでいます。たとえばIKEAでは、カタログの気に入った製品を、自宅の環境に置いてみることが出来ます。IKEA Placeのアプリをダウンロードし、自宅やオフィスの床面をスキャン、アプリ内の商品リストを検索し、設置したい商品を選び、その商品を目的のスペースに移動して設置する、といったシンプルな操作で可能になるものです。

 ほかにも、コンバースのモバイルアプリ The Sampler により自分の足にiPhoneを向けると、試したい製品を着用した様子が見られとか、米国ユニクロの、売り場に設置されたマジックミラー(memomi 社、鏡を兼ねたタッチパネル)で、気に入った製品を着用し、色々なカラーをバーチャル試着できる、などもあります。

 Zaraは、今週(2018418日)から、Zara AR appによるARを、世界120店舗でパイロット展開すると発表しています。ここでは、店内やウインドウの服にスマホのカメラをかざし、ARのアイコンで、モデルに着せてみることが出来る。その商品が、欲しければそのままスマホのShop the Lookボタンを押して購入も出来、SNSでシェアも可能で、Zara社は、ユーザーにホログラム(デジタル画像)を撮影しアップするよう勧めています。このテクノロジーは、購入した商品が配達されたボックスを包装紙の上からポップアップで見て中身を確認、さらに他の商品の見ることも可能、とされています。パイロット展開の結果が非常に楽しみです。

 (Spacee社のARテクノロジー 画像NRF提供)

  今回ARとくに興味深かったのは、後述する iLabで紹介された、Sapcee社のテクノロジー。リアルの世界(例えば売り場の商品)にデジタル投影(スーパーインポーズ)することによって、スマホや眼鏡などを使わずに、商品情報を得たり、双方向コミュニケーションをしたり出来る技術です。上の写真がその事例で、AI搭載の最新式サーモスタット製品(室内の温度調整器)の説明をデジタル投影で行っているデモです。この技術はすでにウォルマートの一部の店舗で使われており、家電機器のように細かい説明が必要な商品の販売に、大いに役立っているとのこと。在庫をミニマイズ出来、品減りもほとんどなくなった、といいます。ちなみにSapcee社は、“テクノロジーが人間の体験に自然な形で融合する将来を目指す”ことを唱っているスタートアップで、上記は同社のバーチャル・タッチスクリーン技術を使って、二次元、三次元の物体の表面を光線によるタッチスクリーンにして、人が作動やコミュニケーションすることを可能にするものです。

ARは今後拡大が期待されており、2020年には AR 経由の購買が1億㌦に達するとの予測もあります。 

iLab=新規技術の展示・デモ> 

iLabは、新規ソリューションの展示・デモのコーナーですが、今年は2020のリテーリング」として29社の展示、また「新興テクノロジー」コーナーでは、パイロットに入る前の段階のものを含む多彩なテクノロジーが展示されました。

 「2020のリテーリング」コーナーでは、テクノロジーを顧客の買物プロセスで5つの段階に区分して紹介。非常に親切だと感心しました。上の画像はそのレイアウトを紹介するパネルです。5つの段階とは:
 *認知 Awareness- 先に挙げたSpaceeなど、商品の提示や顧客インタラクションの技術など 

 *検討 Consideration- AI活用で自分に合うものを提示してくれるFINDMINEなど

 *エンゲイジ Engagement- 駐車場まで送ってくれる買い物ロボットのFive Element など

 *サービス Service- 家具据え付けやペンキ塗り等のプロを紹介するプラットフォームのhandyなど

 *購買後 Post Purchase- 返品プロセスを支援する「リバース物流」Optoroなど

 

 「新興テクノロジー」コーナーでは、ユニークな発想による 22 社のソリューションが紹介されました。

  (クレジットカードでドアを開ける無人ショップ)

 例えばAIによる無人ショップdeepmagic ―上の写真参照)、

ラグジュアリー製品の偽物見分けソリューション( entrupy―下の写真参照)。

そのほか、バイオ原料の3D印刷で服を作る、足のサイズの立体的測定ソリューション、などなど、まだ実験段階のものも含めて興味深い展示やデモでした。米国以外のスタートアップも多く、なまりのある英語が飛び交う様子は、まさしくグローバル化とデジタル化の時代、を痛感した次第です。