リーダーシップ

女性活躍支援は 一般論から 個々人の啓発とサポートへ

女性の活躍推進が、いよいよ総論から、各論、つまり個々人の問題になって来ました。

先日、女性の活躍とキャリア構築について、若い意欲的な女性たちに話をする機会があり、私も啓発されてワクワクした体験をご紹介します。会は、アマテラスアカデミア主催の研修会でしたが、ワクワクの理由は、参加者が自分の成長努力のなかで湧き起こる、率直で生々しい質問・課題を提示してくれたことで、質問者に合わせて具体的に考えることが出来たからです。

(画像はアマテラスアカデミアでの研修風景)

用意した内容は、「革新的リーダーを目指そう」。「管理型」ではなく「リーダー型」のリーダーシップ発揮を! でしたが、事務局からの追加の要望が、

「家庭か仕事か選ぶ時代は終わった」(拙著『Break Down the Wall―環境・組織・年齢の壁を破る』第2章)

の深堀りでした。わが意を得たり! 私が今、非常に歯がゆく思っているのはその事。すなわち、「今の女性には、こんなにチャンスがあるのに、何故もっと 自由で 人間的で 積極的な行動が 出来ないのか!」 だったからです。

これからの時代、AIを含む技術革新や働き方そして価値観の多様化が進む中、「家庭か仕事か」、といった二者択一の対立概念を、両立・融合そしてシナジーに発展させてゆくことが可能だからです。

そこでテーマを、

今こそ、女性リーダー活躍の時 ――環境・組織・年齢の壁を破る!
――人間らしく、幸せな人生を!
――プロと言える能力をつけよう!

とし、女性が “仕事と家庭の二者択一の思い込みから解放され、のびやかに、自分も家族も、周りの人たちも、幸せにする” 考え方と行動について、私の経験を中心に話しました。

アマテラスアカデミアとは、美容研究家でメイクアップ・アーティストでもある小林照子さんが、自費で立ち上げた女性のための学校です。自分を愛し、人に優しく生きていける。そんな生き方を 「美容的生き方」だと定義する小林さんは、業界も働く環境も様々な女性を毎年15人選考して、一定のカリキュラムで講座を開催。私が特別講師を頼まれたのはその第5期生で、皆、事前に、『Breaking Down the Wall』の本を読んでくれていました。(『Break Down the Wall 環境・組織・年齢の壁を破る』 尾原蓉子著 2018 日経出版社)

<触発された多くの質問>

一言も聞き漏らさない、といった姿勢の熱心な受講生たちでしたが、とくに、自分問題としての飾らない質問が多かったことに感心しました。たとえば、、

  • プロフェッショナルになるために努力しているが、「プロとしての自信」は、どうやれば培えるのか?

  • 「管理型」ではなく 「リーダー型」マネジメントを、と言われても、自分は「リーダー型」には向いていないと思うが、どうすればよいか?

  • 子育ては “緩い手綱さばきで”と言われたが、具体的には?

<「リーダー型」のマネジャーになる>

「リーダー型」マネジメントとは、“まずビジョンと戦略をもち、メンバーの心を一つにまとめながら啓発・動機付けし、目的を達成する”マネジメントのスタイルです。これは既定路線に従う従来型スタイルの、“まず計画を立案し、組織・予算を策定し、管理・コントロールしながら目標を達成する”「管理型」とは、考え方も、進め方も異なります。今、とくに「リーダー型」マネジメントが求められるのは、現代が、変化が激しく先が予想しにくい、いわゆるVUCAの時代であるからです(注)。ここでは、“従来のやり方”の踏襲では成功できない、つまり、“あらたな革新(イノベーション)を起こす”ことが不可欠なのです。 注) VUCA とは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)が高い時代、の略語)

私のアドバイスは、、。 「個人には、確かに、保守的な人、革新的な人、といった性格の違いがあります。しかしビジネスあるいは組織が発展するには、変化が不可欠です。革新には、大きな変革もあれば、日常レベルの業務でも、時代に合わなくなっているものを変える、ことも含まれます。小さなことでも、自分がこうあった方がよいと考えることを、勇気をもって実践する。そして成果を確認できれば、自分にも革新ができる、と自信がつくでしょう。そのためには、上司の視点、出来ればさらにその上、つまり2段上の立場から、より大きな視野で物事を見る努力を。また常に、好奇心を持って周りを見る努力をすると、色々な問題が必ず見えてきます。それに取り組んでみてはどうですか?」

<子育てについて、尾原が話したこと――子育ての基本は、子供の考えを尊重しながら、ゆるい手綱で導き、伴走すること>

子育てはキャリアを追求する女性にとって、最大のチャレンジでしょう。

最近の日本で、「“子供を持ちたくない”風潮が高まっている」 との報道に私は衝撃を受けました。 (8月9日付け日経新聞掲載された同社調査結果)。18歳女性の42%が 「生涯 子供を持たない/持ちたくない」 と考えているというのです。「男性では5割に上る」、とも。

経済の明るい未来が見通せない昨今、また、子育ての負担が圧倒的に女性にかかっている現状の中、理解出来なくはない風潮です。でも、何と消極的で後ろ向きの考え方かと悲しくなりました。ましてや、急激な人口減少で日本の将来が危ういと言われるなか、子供を産むことが出来るのは女性だけなのに、その女性たちが「子供を持たない?!」。 大変なことです。

子供を産み育てる事は、確かに苦労は多いけれども、その成長を伴走することで得られる人間的な喜び、幸せ、は、何物にも代えがたいものです。育児は、問題解決の連続ですが、それが自分を育ててくれることにもなります。子育ては最もクリエイティブな仕事だ、とも思っています。

子育ての基本は――二人の男の子を育てた私の経験からいうとーー子供を信頼し、子供が自分で考えて行動出来るよう、緩い手綱で導きながら、その成長を見守ることだと考えます。子供とは大事な約束をします。まず、①嘘はつかない。②挨拶(おはよう、こんにちわ、など)をきちんとする。③どんなことでも話してくれる(嬉しい、悲しい、困った、失敗した、などなど。話しにくいことを話してくれた時には、ほめたり感謝することが大切)。④正すべきことがあれば、理由を説明して厳しく向き合う。そして、常に、⑤感謝(ありがとう、いただきます)、を忘れない。感謝は「祈り」にもつながるものです。子供には、一人の人間(人格)として対応すること、子供の考えやアイディアを尊重すること、が大切です。

そして、親として一番大事なことは、「子供を信頼する」ことだと思います。たとえば、お手伝いさんの言うことと子供が言うことが食い違う場合、どうしますか? 大人であるお手伝いさんの言い分の方が筋が通っていることが多くても、「大事なことだから、よく思い出してちょうだい、、」などと、本当のところを子供に思い出させ聞き出すことが重要です。子供は、親が信頼してくれていると感じることで、親に対して絶大な信頼をもつようになり、また自分の責任も意識するようになります。

5000円紙幣を持たせてスーパーにお使いに出した時、「お金を失くして払えなかった」と、手ぶらで帰ってきたことがあります。お金は、「ポケットに入れていた」というので、「どこかで落としたに違いない。絶対に見つかるから歩いた道を丁寧に探してきなさい」と300メートル先のスーパーまで再度行かせました。私自身は、今後のための「躾(しつけ)」のつもりでした。ところが有難いことに、スーパーのレジで訊ねたら、拾って届けてくれた人が居たというのです。(日本ならではですね!) 子供は、「お金を拾っても届ける人がいる」 ことを知り、私は「失くしたものでも、真剣になって探せば出てくる」ことを教えることが出来たと、幸運に感謝したことでした。

<女性たちとの対話で嬉しかったこと>

日本の女性が、もっと人間らしく、のびやかに生きることの価値を強調した私の話で、嬉しかったコメントとして: 「“子供を信頼することが大事”、が胸に刺さった。今日から子供への接し方を、変えようと思う」、あるいは 「子供は作らないと決めていたが、考えを変えた」、などがありました。

女性一人一人が、それぞれがおかれた環境、個人的な想いや家族・社会との関わり合いの中で、抱えている問題の突破口や光明をさぐる。それをお手伝いすることが出来るとすれば、本当に嬉しいことです。

皆さんの健闘と活躍を、心から願った研修会でした。

<追伸> このアマテラスアカデミアでの私の講演を、メンバーがまとめたレポートが、アマテラスアカデミアのホームページに掲載されています。ご興味のある方は是非ご覧くださると嬉しいです。

→ 尾原蓉子 講義レポート

End

<米国同時多発テロから20年―追悼と、危機対応のリーダーシップ>

  • 「9・11」 2001年9月11日火曜日 午前8時46分

 あの日は、突き抜けるような快晴。キラキラと、青空を背に朝日に輝く世界貿易センタービルに2機のハイジャック機が相次いで突入しました。。ニューヨークの FIT(ファッション工科大学) 8階の教室で、IFIビジネススクール幹部研修が進行中でした。1時限後の休憩時間に、何やら騒がしいので教室からロビーに出ると、南向きの大きな窓から貿易センター北棟の上部がもくもくとわき出る煙に覆われ、時折炎も見えました。状況が分からないまま、2時限目を継続。その間に2機目が突入した南棟、ついで北棟が崩れ落ちました。飛行機の突入の瞬間を見た人も、ビル崩壊を目のあたりにして心臓が止まる思いをした人もいました。

 すぐに「テロ事件」とわかり、FITは州立大学であることから即「非常施設」に指定され、「正午までに全員避難・退去」の命令がでました。FITは貿易センターから 3.5 キロほど北に位置しますが、すぐ北にあるエンパイア・ステイトビルも、攻撃ターゲットになっているといったニュースも飛び交い、地下鉄も停止した街を、エンパイアを避けて大回りをしながら、全員徒歩で48丁目のホテルまで帰りました。途中でメンバーのための食糧確保と、小銭への両替(自販機利用のため)に必死の努力をしたことを思い出します。

 IFIビジネススクール学長で研修責任者でもあった私は、受講者(企業幹部)23名と関係スタッフ計28名の安全確保と、全員無事に速やかな日本帰国を達成する方策を、参加者の協力を得ながら、あの手この手で探り決断する高度に緊張した時間を過ごしました。

 犠牲になった方々や御家族に、改めて心からなる追悼の意をささげます。

  • ニューヨーク市長、ルドルフ・ジュリアーニ氏のリーダーシップに学ぶ

 この稀有で貴重な体験から多くの学びがありました。またこの自爆テロをきっかけにアフガニスタン攻撃やイラク戦争にエスカレートしていった米国。20年でアフガン撤退という敗北に至った米国のテロとの闘い、などが今後どう展開して行くのか。不安定な世界の政治・経済・社会情勢などについては別の機会に書きたいと思っていますが、今回は、この前代未聞の危機に、時のニューヨーク市長、ルドルフ・ジュリアーニ氏が発揮した、感銘深いリーダーシップについてご紹介します。(同氏はその後、米大統領選に絡む問題で弁護士免許一時停止の措置を受けていますが、同時多発テロへの対応では、「世界の市長、TIME誌 Person of the Year 2001」と評価されました。)以下、当時の繊研新聞への筆者寄稿をご覧ください。

 リーダーシップの不足、中でも「有事のリーダーシップ」が問われる今、あらためて、ジュリアーニ氏の言動に学びたいと考えます。

NRF2021リポート④<女性CEOは 生活者感覚としなやかでスピーディな動員力で>

 NRF2021では女性の講師が40%を占めたとリポートで書きました。

大企業の最高経営責任者(CEO)が多数、また政府高官の女性も登壇しました。代表的講師をあげれば、今回取り上げる、ウォルマー・インターナショナル社、WWインターナショナル社、ビタミン・ショップの3社のCEOほか、ウォルマートCCO (チーフ・カスタマー・オフィサー)やルルレモンCEO、元国務長官で国際的難局をリードしたコンドレッサ・ライス氏や、前ペプシコ CEO で現在も多方面で活躍するインドラ・ヌーイ氏など、多士済々です。ヌーイ氏は、2015年のフォーチュン誌の 「最もパワフルな女性リスト」で2位。ペプシCEO在任12年で売上8割アップを達成、健康・環境問題でも大きな成果をあげた人で、氏の講演テーマは 持続的成長とビジネス目標のバランスーー破壊的変革のかじ取り:社会経済コスト」でした。女性の大企業トップをが、このようなテーマで講演する時代の到来を、嬉しく、また誇らしく感じました。 

『変動の時代を、動員力で成功する』 “Mobilizing and succeeding in volatile times

 今回ご紹介する基調セッションのテーマです。直訳で「変動の時代を、動員力で成功する」 としましたが、内容的には 巨大変動の時代――非常時に機動力で成功する女性CEOのしなやかでスピーディな指導力 ですモビライジングという、戦時下での動員を意味する言葉を使っているのは、コロナ感染との闘いがまさしく戦争であり、制約あるリソース(資源・その企業が保持する強み)をフルに動員、つまり生かしながら、果敢にまた強力にリーダーシップを発揮したことを示すのにふさわしい言葉なのでしょう。

 

 リーダーシップとは人々のために希望を創造する こと: Walmart International CEO

 ウォルマート・インターナショナルのジュディス・マッケンナCEOは 2020を振り返り、 「厳しい対応が求められた。まず、コンタクトレスが米国で始まり、オンライン支払いやブレンデッド・ショッピング(ネットとリアルのミックス)、宅配は2週間かかっていたものを米国では 2 時間に、、、などなど国によって状況も異なった。行動は、ウォルマートのシンプルな5原則に従った。5原則とは、①何よりもアソシエイツ(従業員)をケアする、②店舗の安全確保と顧客に親切・人間的に振る舞うこと(小さな例だが、英国では配達の運転手が  “Happy to Chat.喜んでチャットしますよ” のバッジをつけ、顧客が質問しやすいよう対応した)。③サプライヤーを含むコミュニティへのケア、④毎日起こるあれこれの事柄への注力、そして同時に、⑤長期的事項へのフォーカスだった」と話しました。社員のウェルネスやメンタルヘルスを重視し、“It’s OK=大丈夫よ” プログラムも推進。リモート会議を子供が邪魔してもOK、気にしないで、だと。“We care” (気にかけている)ことを頻繁に伝えるなど、コミュニケーションに努力した。互いへの “信頼” が重要だった、といいます。

 未来について問われると、「2つの考え方がある。仕事は減る、と、もっと増える、の見方だ。楽観主義者の自分は、後者だ。そして働く人を未来へ向けて準備させる、つまり組織が個人に成長のチャンスを与えることが重要と考えている。ウォルマートの経営幹部のほとんどは時給雇いからキャリアを積み重ねてきた人たちで、これは世界的にも当てはまる」。「ウォルマートのような企業は、小売り以外のスキル開発を助けることが出来る。そうすれば将来、求人環境が変わっても、新たに登場する職業で自分のやりたい仕事に取り組む強固な基盤が出来る」、と。

 「全ての国(のウォルマート)が、今回初めてタウンホール(集会所)のようにつながり、より大きなコミュニティを創り、インスピレーションと希望を創造すること、を強調した。私はこれまで、〝人々のために希望を創造するといった仕事をやることになるとは、思ってもみなかったが、これこそがリーダーシップの本質だと、いま、考えている」、とのマッケンナCEOの言葉に、危機の中こそリーダーシップが輝くことを痛感します

                     ウォルマート・グローバル 社のマッケンナ氏(右)と 司会のAmex社マクニール氏(左)

大胆なアクション=CBD 市場に参入: The Vitamin Shoppe のシャロン・レイトCEO

 サプリメントやビタミン剤、健康食品の販売で全国に780店を展開する ザ・ビタミンショップは1977年創立の企業。 “あなたが目指すベストのあなたになるのをヘルプします” のスローガンで、店舗やサブスクリプションを通じて、人々のウェルネスに貢献する会社です。

 レイト氏は 2020は自宅フィットネス産業が急拡大した。コロナで顧客は信頼できるブランド志向を強めた。わが社は、製品の品質、ビタミン剤のエキスパート、業界をリードする革新的企業、などのブランド・イメージをもっており、これがコロナ下でも継続的支持につながった。 2020は、主要カテゴリーである、免疫力強化関連の、ビタミンC、D、亜鉛が伸び、2021へも継続しているが、加えて人々は、肉体的、精神的、感情的健康を求めていた。ストレス、睡眠、基礎的健康、スポーツ栄養、体重管理、解毒、そしてCBDだ」と述べ、大胆にCBDの提供を決めた経緯を話しました。 (CBDとは、カンナビジオールの略称で、カンナビス(大麻)から抽出される主要成分の一つ。他の主成分の通称 THC のように「ハイ」になることはなく、不安障害やうつ病や不眠などに効果があるとされる。アメリカでは2018年に医薬品に承認)。

 ウェルネス分野で最初の企業としてCBS市場参入の決断をした同社ですが、11月に自社ブランドでローンチするに先立ち、消費者調査をしました。その結果は、56%の人がコロナのストレス下で、リラックスし体調のバランスをとる方法を探しており、50 がCBD を取りたいと答えた、と述べています。顧客の要望に応えたアクションでした。マーサ・ステュアートとのパートナーも組みました。

 もう一つ氏が強調したのは、「顧客のいるところへ出向くこと。Meet Where customers are=店に来てもらえない中、顧客に近づく)ためのあらゆる手段を講じた。消費者直販を出来るだけ簡便でイージーにすることにも注力。 2020年の最も大きな収穫は、チームの、顧客が求めるものにあらゆる方法で対応する “レジリエンス(しなやかさ)” だった。これには感銘した」。 「人々は孤独になっている。 話をし、エンゲイジする機会を欲しがっている。そこで ザ・ビタミンショップがコミュニティ、言いかえれば Safe Heaven (安全な楽園)になった」 も、コロナ禍が人々に与えた精神的・心理的な変容を物語るものと、感じました。

ビタミンショップCEOのリート氏(右)と WWインターナショナルCEOのグロスマン氏(左)

コロナでの方向転換を、デジタル投資が助けてくれた: WW International ミンディ・グロスマンCEO

 「2020 が教えてくれたこと。それは何よりも、健康がこれまで以上に重要であることだった」が 開口一番のグロスマン氏の言葉でした。よりよい、より健康的な生活を送ることが、本当に重要な時代になったと。 

 業界でミンディ、と親しく呼ばれる氏は、ラルフローレン、ナイキなどで多彩なキャリアを積み、テレビショッピング大手 HSN の CEOとして同社の上場を果たしたあと、ウェルネスの世界を拡大したいと、2017年に、Weight Watchers社のトップに就任した、小売り業界のスター的なエグゼクティブです。ウェイト・ウォッチャーズ社は1963 年ニューヨークで主婦が創業した、その名の通りの「減量」を狙いとする商品やサービスを提供するフィットネスの会社でしたが、グロスマン氏はこれを、フィットネス、マインドセット、栄養、睡眠 の4つを柱とする “ウェルネス企業”へと発展させ、2018年には社名もWW International に変更しました。

 「2020年は、人気者のオープラ・ウインフリーと全米9都市ツアーを計画、強力なモメンタムでスタートしたのだが、予期せぬコロナで、計画中止。ピボット(方向転換)を余儀なくされた。これまでデジタル・トランスフォーメーションに投資をしてきたことが役立ち、ダイナミックな方向転換が出来た。チームはパーパスとパッションに導かれた形で素晴らしく動いてくれた。個人対応のウェルネス・ワークショップを、すべてバーチャルにし、全国 12か所で実施できるよう15000人のコーチを養成する体制を、6日間で作った。テクノロジーを駆使し、ウェルネスを達成する新しいエコシステムの構築が出来た。パンデミックがビジネス変容を加速してくれた、といえる。WWの4つの柱は、コミュニティの力で構築したものだ。」

 「1116日には “My WW+” を、食品がらみでないイノベーションの一つとして、AI と機械学習を利用し、完全にカスタマイズした、パーソナルでホリスティックな体験を、全メンバーに提供することにした。さらに2021は、新垂直型メンバーシップ、“Digital 360”をローンチ。 コーチング、コンテンツ、コネクティビティ、コミュニティ、のパワーを加えてより大きなパワーアップを図っている。新パーパスとして加えた “ヘルシー習慣= healthy habits for life”、 最近立ち上げた “WWファミリー” も、ジェイムス・コーデン(英国の俳優)をスポークスマンに起用して、顧客基盤の拡大に貢献。ウェルネスの民主化を願っており、経済的に困窮する人々10万人に無料会員の提供も行っている。」 そして最後に、「これらすべてを通じて、信頼できるブランドとして、人々の期待に応える」 と締めくくりました。

  これらの女性CEO登壇の司会をつとめた アメリカン・エキスプレスのグレンダ・マクニール氏は、同社が202010月に実施した全世界消費者調査で、回答者の70 がフィトネスを、 68 が肉体的健康だけでなくメンタル面での健康を重視すると答えている事実を紹介し、「よりよい、より健康的な生活を送ることが、本当に重要な時代になった」 ことを強調しました。 

 Life(命)と Livelihood(生活)が脅かされたコロナ・パンデミックの中で発揮された、人と生活に心を寄せる女性エグゼクティブのリーダーシップに拍手を送るとともに、日本の女性活躍の実態を悲しく思いました。元首相の 「文部省が女性を40%に、とうるさく言うから、、、。女性が入った会議は長くなる、、。(組織委の女性は)みんなわきまえておられる、、」 などの発言で、ジェンダーの問題が、日本社会にいかに根深くはびこっているかを、改めて痛感しました。日本の女性も奮起しなければなりません。                                                                                                                                           End