人材育成

「国際理解・グローバルキャリア」 AFS 講演会の講師を務めます(12月7日、大阪開催)

 ローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇が、今日、来日され、長崎から「核兵器からの解放」のメッセージを発信されました。世界13億人のカソリック教徒の頂点に立つバチカン王国法王の日本訪問は38年ぶり。それも長崎と広島訪問という歴史的な場所から核兵器の非人道性を訴えることが、世界の人々に核兵器の恐ろしさをあらためて思い起こし、あらたな行動につながることを切に願っています。

 原爆投下後の長崎で撮影された 「焼き場に立つ少年」 (死んだ弟を背中に負ぶったまま火葬の順番を待つ少年の凜とした写真) をカードに印刷して教会関係者に配布し人間の尊厳を訴えた教皇は、「核兵器の開発はテロ行為であり、抑止力のためではなく廃絶を目指すべし」、と言い切っています。

 尾原の大阪講演のテーマは、核廃絶ではありませんが、その主催者である、日本AFS協会は、「この世から戦争をなくそう」 と米国で設立されたボランティアの非営利団体です。AFSとは、American Field Service (米国野戦奉仕団) の略語で、第1次大戦中に、戦場で負傷した兵士を病院に運ぶ奉仕活動に端を発したもの。この世から戦争をなくするためには、互いの国や文化を理解し、友好と信頼関係を築くことが不可欠。それも、大人になってからではなく、感受性の強い高校生の少年少女を交換/交流させ、異文化を体験させることで可能になる、という理念で、スタートしました。いまや、AFS留学生は世界に何万人といます。今秋欧州中央銀行総裁に就任したクリスティーヌ・ラガルドさんもその一人です。AFS 講演会ご案内は こちらへ (参加料無料)

 

 日本にAFS支部が出来て留学生を送るようになったのは、1954年。私はその2期生として、全国から選考された29人の仲間に入って、1955年、日本人が一人も住んでいないミネソタ州のマンケイトという中都市に1年間、ホストファミリーと地元の公立高校に御世話になりました。

米国留学へ向けて氷川丸で手を振る筆者

  大阪講演のテーマは、

「すべてはマンケイトにはじまったーー16歳の AFS 留学が拓いたキャリアと、どんな 障害にもしなやかに対応する 壁破り体験物語」。

 私のキャリア形成は、振り返ると、米国でのこの1年間の異文化体験が引き金を引いてくれた、と、今、心底思います。成績は良かったけれど、引っ込み思案で、人と違う一歩を踏み出せないでいた少女が、アメリカへ向けて乗船した氷川丸が横浜埠頭を離れ、どんどん遠ざかる日本の山並みがついに黒い点になり水平線の彼方に消えた瞬間に、全身を襲った恐怖心と、同時に足元から湧き上がって来た電流のようなエネルギーから、「これからは、自分で考え、自分の足で立たねばならない」と決意したこと。そして「与えられたチャンスを最大限に生かして成長する」、「何か、自分がこの世に存在した証を創りたい」、と考えるようになった、その体験をお話ししたいと思っています。

 昨秋出版した 『Break Down the Wall―環境、組織、年令の壁を破る』 (日経出版社) は私がキャリアで体験した多くの壁や伝統的社会通念、女性あるいはマイノリティならではの苦労、などを私なりに突き破ったり、あるいは別の道を探したりしてやってきたことをまとめたもので、これを土台にお話を進める予定です。

『Break Down the Wallー環境、組織、年齢の壁を破る』

 対象者は、中学/高校生、その親御さん達、学校の先生から、社会人でキャリアの進め方に戸惑っている人、グローバル人材の開発に取り組んで折られる企業経営者まで、幅広い方に聞いて頂きたいと願っています。

 世界のグローバル化 (ビジネスや政治だけでなく意識の面でも) に後れを取っている日本。若者の内向き志向、すなわち留学など未経験の世界に進みたがらない昨今の傾向は、日本の将来を危うくするものと心配しています。多様性とインクルージョンが叫ばれていますが、それは企業組織内の多様性や異質な人材のインクルージョンだけでなく、一人一人の心と意識の解放と、異質なもの/ことに敬意と包容力を持つこと、です。

 セミナーへのご参加、あるいは適任者にお薦め頂けると嬉しいです。

<『Break Down the Wall』の出版記念会が 12月10日 開催されます> 

 9月に出版された拙著 『Break Down the Wall 環境、組織、年齢の壁を破る』 の出版記念の会が、WEF(一般社団法人 ウィメンズ・エンパワメント・イン・ファッション)主催で、開催されます。尾原も40分の講演をしますので、ご関心のある方はご参加いただけると嬉しいです。

【日 時】  2018年12月10日(月) 17時-19時30分 (受付開始:16:30~)
【参加費】 おひとり 5,000円(税込) ※著者サイン入り書籍 1冊付き
【会 場】 赤坂サンスカイルーム D会議室
〒107-0052 東京都港区赤坂2-14-32 赤坂2・14プラザビル 3階 

           お申込みは → http://www.wef-japan.org/news/1171.html 

 この本を書いた想いは、これからのキャリアを創ってゆく方々に、誰もが出会う様々な壁、中でも自分自身の意識の壁を、打ち破って欲しいとの切なる願いです。当初考えていたタイトルは 『キャリアの天井を突き破る』 だったのですが、これからの時代に生き甲斐のあるキャリアや人生を創るためには、組織を上にあがる(偉くなる)こと以上に、新しい商品や事業の開発、世の中の何かがおかしい、何かが欠けていると自分が感じることに取り組み解決策を生み出す、といった、主体性をもった姿勢が重要だと考えたからです。

 ただそれを進めるなかで、いろいろな壁、社会通念や子育て/介護などの環境、組織、年齢、といった壁が立ちはだかる。それを、どう破ってゆくのかを、私の経験と、そこから得た教訓(自分自身に対しても)を書いたものです。

 1962年に旭化成新入社員としてキャリアを始めた尾原蓉子という一人の女性が、この世の中で、物事はこうあって欲しいと願う、その思いが自分を動かし、人に助けられ、多くの方々の共感や熱意そして支援を頂いて、少しずつ形になり、社会を動かしてゆく。そんな人生経験と感動を、若い世代の皆さんと共有してゆきたい。そんな願いをこの本に込めました。

 この本をきっかけに、日経スタイル(電子版) が 「キャリアの壁をどう破るか」のテーマで、業界著名人と尾原の対談シリーズ(4回)を掲載しています。対談させて頂いた方すべてが強調されたのは、「現代の物事の選択肢は多種多様であり、すべての個人はそれぞれの個性を持っている。他人と違う道を拓いて、自分の存在感を明示し、それに磨きをかけて、自分のキャリアを創って欲しい」ということでした。

 各氏との対談は、下記をご覧ください。

第1回の エアークローゼット創業者 天沼聡社長(11月14日掲載):

https://style.nikkei.com/article/DGXMZO37564550Z01C18A1000000?channel=DF061120184459

ビームスの設楽洋社長 (11月21日掲載):

https://style.nikkei.com/article/DGXMZO37751060U8A111C1000000?channel=DF061120184459

一橋大学名誉教授の石倉洋子氏 (11月28日掲載):

https://style.nikkei.com/article/DGXMZO37999920Q8A121C1000000?channel=DF061120184457&lra

デザイナーの皆川明氏 (12月5日掲載予定)

                                                                                               (以上)

< WEF5周年 記念シンポジウムを開催。 メッセージは「女性を大志を抱け!」 >

 ファッション業界の女性活躍を支援する WEF(一般社団法人 ウィメンズ・エンパワメント・イン・ファッション)が 5 周年を迎え、記念イベントを 7月5日、帝国ホテルで開催しました。有り難いことに、会場に入りきらない数の申し込みを頂き、なんとか  260 名の方に参加頂きました。

 記念シンポジウムにご登壇頂いた、ファーストリテイリングの柳井正会長・CEOのメッセージは  「Girls be Ambitious ! 女性よ 大志を抱け!」 でした。

対談する ファーストリテイリング 柳井正会長・社長と WEF 尾原蓉子名誉会長

情熱があり過ぎて、照り焼きにされることもあるかもしれないが、、」等と語る柳井会長と尾原名誉会長

  シンポジウムは、「ファッション・ビジネスはWomen’s Business」の大テーマでの「柳井会長と尾原の対談」、という企画でしたが、そもそも筆者が柳井会長に初めてお会いしたのは、1984年、私が企画/運営を担当していた旭化成 FITセミナーを柳井会長が初めて受講された年でした。奇しくもその年は、柳井さん(当時は小郡商事専務)が ユニクロの第 1 号店を、朝 6 時開店という奇抜なアイディアで広島にオープンされた年に当たります。

 それ以来、柳井さんが、FITセミナーが招いたベネトン創業者やリズクレイボーン会長あるいは ムジャーニ・インターナショナル社長などのセミナー、次いで旭化成経営戦略セミナーに毎年のように参加されたこともあって、私は、ユニクロの成長(たまには失敗)を興味と感銘をもってフォローしてきました。 とくに東京進出、フリースの爆発的成功に始まり、海外進出や著名デザイナーの起用、“ライフウェア”のコンセプト展開、そして直近の「情報製造小売業」グローバル本部  Uniqlo City (有明) 立ち上げ、などにより、年に2兆円以上を売り上げる、日本を代表するグローバル企業の一つになられたことに、大いに敬意を表している次第です。

 そんなわけで、私は 4つの観点から、柳井さんの経営哲学、人間性、女性や人材に関する姿勢、などを引き出せたら、と考え、お相手を務めました。

 4つの観点とは: 

①   これからのファッション産業の行方は? ― 世界的なアマゾンとウォルマートのパワーゲーム、その間にZARAやユニクロの拡大、ノードストロム(EC比率30%超、ショールーム業態展開)等の革新的ファッション大型店、次々台頭するユニークなスタートアップ企業のせめぎ合い、、。10年後はどうなる?

②   企業の発展/存続に不可欠なイノベーションと起業 ー 日本はこの点では周回遅れ?

③   イノベーションを担う人材の調達/育成/登用 ― ファストリではどのように?

④   女性の活用・活躍 ― ファストリは 2020 年女性管理職比率30%の目標を3年前倒しで達成。主要戦略は? 何が奏功?

  以下の2つの記事が、柳井会長の発言をうまくまとめて頂いたものと思います。

* WWDジャパン: 「ユニクロ柳井社長、働く女性に“野望のススメ”」

            https://www.wwdjapan.com/653191

*アパレル・ウェブ: 「ガールズ・ビー・アンビシャス!」

             https://apparel-web.com/news/apparelweb/58746 

 対談を通じて、柳井会長の大きな野望とみなぎる情熱、現場と細部重視の経営、そして真面目で厳しいけれども人間味あふれるリーダーシップに 改めて拍手を送ったことでした。

 WEFの設立の狙いと、準備期間を含めた足かけ7年の活動と成果については、次回にお伝えしたいと思っています。