FIT(NY州立ファッション工科大学)

<グローバルに活躍するために留学しよう ――FITから教授陣を迎えたセミナー開催>

 先回ご案内した、WEF5回シンポジウム「グローバルに活躍する――日本が変わる 目線を上げよう――」は、石倉洋子氏(一橋大学名誉教授)と吉田晴乃氏(BTジャパン社長)のパワフルな基調講演や生駒芳子さん司会のディスカッションで、会場がエネルギーで満ち溢れた会になりました。 グローバル化は、最近の来日外国人の増加やTPP交渉の進展(国の間の通商の壁が低くなる)、世界進出で成功しているユニクロや無印良品、等を見ても、日に日に拡大しているファッション・ビジネスの大きなチャンスです。

 シンポジウムの内容については、エフエフプレス(‟冷凍食品につい誰でもコメントで参加できる新媒体”)の山本純子さんが、素晴らしくまとめて下さっているので、下記をご覧ください。

「目線を上げよう」 http://frozenfoodpress.com/2015/11/06/wef-symposium-global-fashion/

   さて、同じテーマ「グローバルに活躍する」で、FITから大学院のトップと学科長を招き、留学セミナーを1124日(火)に開催します。ファッション・ビジネスでの留学に関心をお持ちの方、あるいはFITでの高度な専門教育にご関心のある方は是非ご参加ください。(参加は無料です) 詳細はこちら→   FITセミナー11月24日開催 フライヤー

  セミナーの内容は、ニューヨークFITの非常にユニークな大学院コース、Global Fashion ManagementGFM)の紹介と、FIT卒業生によるパネル・ディスカッションです。

  特に強調したいのは、このコースにはユニクロの奨学金が設定されており、これまでの3回のセミナーから、5名の留学生が出ています。その一人である保田優衣さんも現在ユニクロ奨学金でこのコースに留学中ですが、今回、教授とともに帰国し、その実体験を話します。

 このコースは、3年以上の実務体験を持つ社会人対象で、18か月(3セメスター)の過程を終了すれば修士号が得られます。毎年178名の学生が、世界の10カ国以上からニューヨークのFITに来て学んでいますが、カリキュラムは、ファッション・マーケティングから戦略やビジネス・マネジメント、財務など、ファッション・ビジネスのエグゼクティブとして必要な知識と能力を身に付けさせる、実学のマスターコースです。特にユニークなことは、通常の科目に加え、3週間の集中セミナーが、ニューヨークとパリ、そして香港で行われます。パリでは、ラグジュアリー・ビジネスを中心に、理論と実践を学び、香港では、中国の産地にも足を延ばし、モノづくりとアジア市場を中心に学びます。

  セミナーでFIT留学体験談を話すのは、杉野学園ドレスメーカー学院 院長の布谷千春さん、と、(株)RIBOTの馬場基臣さんで、それぞれ、マーチャンダイジング学科とデザイン学科の卒業生です。非常に充実したセミナーになると思います。

  グローバル人材の育成には、留学や駐在などで、実際に異文化を体験することが最も効果的と言われています。私自身も、高校交換学生と、FIT、そしてハーバード・ビジネススクールへの留学が、キャリア構築の上で、何よりの啓発と教育になりました。

  留学したい方、留学を指導されている方に、この機会をぜひご活用いただくことを願っています。

< FIT美術館 「 FAKING IT  展」―― “ マネものつくり ”  と ファッションを考える>

  今日から東京ファッションウィークが始まりました。2015年秋服のコレクションを、52のデザイナーや企業が発表します。 どのような新しいコンセプトやデザインが出てくるか、非常に楽しみです。

  時を同じくして、いま 「FAKING IT – Originals, Copies, and Counterfeits」 と題する、非常に興味深い。また画期的な展覧会が、ニューヨークの FIT 美術館で開催されています。テーマの 「FAKING IT」 は、訳せば 『それの、マネものをつくる』 とでもなるでしょうか? でも “Fake” という言葉には、単純な “コピー” よりも強い “まがいもの” のニュアンスがあります。辞書を引くと、“Fake” とは、「にせの、模造の,まがいの」 とありますから、Faking It は『まがいもの作り』とでも訳せるかもしれません。 要するに、人をだます目的で行う偽造やコピーをすることです。  (画像は展覧会のチラシ。シャネル1966年のファンシーツイードのスーツ。左が本物、右が、“Line-for-Line Copy” =ライセンス契約に基づく正規のコピー)

  「FAKING IT展では、そもそもデザイナーのライセンス契約とディフュージョン・ライン(セカンド・ライン)が、“オリジナル”の定義をあいまいにしてきた、と、その歴史を検証し、提示しています。

  オリジナルであることを表示した元祖は、初代のクチュリエというべきチャールズ・フレデリック・ワースです。かれは1860年代初頭に、ラベルに自分の署名を書きこむことを始めました。画家が自分の作品に署名をするように、本人の作品であることを証明するためでした。しかし同時にそれは、偽造者 (Forger) にとっては魅力的なターゲットになった、というのも皮肉なことです。20世紀に入ってポール・ポワレも、自分のデザインが米国で、ラベルも含めて違法にコピーされ 13 ドルの安値で売られているのを発見し、米国ではファッション・デザインはCopy Rightで保護されていなかったため、自分のTrademark とデザインを登録するために、ポワレ自身が世界で戦った、との説明もあります。

 第二次大戦後、それまでは超富裕階層の特権であったオートクチュールが、経済力を持ちはじめた人々の憧れとなりました。そして正式にコピー権をとってコピー商品を売るビジネスを、米国の高級店であるバーグドルフ・グッドマンがスタートし、その後のライセンス・ビジネスの土台を作りました。1780年代には、デザイナー自身がビジネス拡大のため、ディフュージョン・ライン(いわゆるセカンドライン)を開始。 かくして、デザイナーのオリジナルは、そのエッセンスをどんどん薄められながら、拡販してゆくことになりました。

 展覧会では、そのほか、デザイナーが他のデザイナーやブランドからインスピレーションを得たケース。あるいは有名ブランドのロゴマークをパロディ 的に使った興味深い例も展示されています。詳しくは、ウェブをご覧ください:  http://www.fitnyc.edu/22937.asp

  「ファッション」の本質は、Follow the Leader (リーダーに続け)。つまり、かっこいい人や、憧れる人のオシャレを追従する事にあります。その基となるのは、つねに「オリジナル」です。そしてそれが、“魅力的”に見えることで、追従する人たちが市場を生みだし、企業がビジネスとしてこれに取り組むのです。テーマの副題である、「– Originals, Copies, and Counterfeits」 (「オリジナル、コピー、偽物」) は、多くの疑問を投げかけています。 偽物がはびこること、とくに、製品のデザインばかりでなくロゴまでそっくりまねた『偽物』が何百億ドルに及ぶ世界市場を形成している事は、悩ましい問題であり、何としても無くしたい問題です。しかし「コピー」とは、どこから、どこまで、なのか? それはどこまで許されるのか?

  我々ファッション業界は、「コレクションからトレンドを読みとり」、少しでも早く「そこから得たアイディアを自社の商品に取り入れる」ことを、当然のように行ってきました。この展覧会で、ファッション・ビジネスが、実は、コピー、あるいは、アイディアやインスピレーションの借用・盗用、の上に成り立っている、という事実を突き付けられる思いがします。

  人々の価値観が変化し、自分の個性やアイデンティティを重視するようになって、「流行」に、あるいは人に「追従する」 傾向が弱まり、「本物」が求められるいま、あらためて、「ファッション」と「コピー」について、真剣に考える必要があると痛感します。

  御意見をお待ちしています。

<グローバル人材をどう作るか: FIT のユニークな GFMコース紹介と留学のすすめ> 

 「留学する日本人が減っている」 事がたびたびメディア等で取り上げられます。ビジネス活動はますますグローバル化しているにもかかわらず、です。このままでは大変、と、日本の大学も短期留学制度を取り入れるなど、変革に取り組んでいます。しかしグローバルに活躍出来る人材の育成には、旧態を脱したカリキュラムと現場体験を盛り込んだ、戦略的アプローチが必要です。

 FIT GFMGlobal Fashion Manaagement)コースは、ファッション・ビジネスでのグローバル人材育成で、世界に類の無い優れたプログラムを持っています。日本FIT会では、今年も FIT/GFM 紹介を中心とする「留学セミナー」を開催します。テーマは「ファッション・ビジネスで、グローバルに活躍する」。  詳細は 日本FIT会HP http://fitkai.jp  を見て頂きたいのですが、概要は下記です。

 開催日時:1125日(火)18302030

 講師:FIT(ニューヨーク州立ファッション工科大学)大学院ディーン(院長)のM・デイビス博士

       FIT大学院GFMGlobal Fashion Management)コース学科長 P・エルスワース教授

       FIT卒業生 江草未由紀氏(住友商事広報部部長代理)、都筑千佳氏(WWDジャパン編集長)

 場所:ユニクロ本社(東京ミッドタウン大会議室) 

 GFMコースは、3 年以上の職務経験のある社会人を対象に、基本カリキュラムに加え、ニューヨーク・パリ・香港での各3週間の集中講座と現場視察を組み込んだ教育をしています。 目的は、

           ① 競争が激化するアパレル業界のプロの育成

           ② グローバルかつ相互関連が深まる世界のファッション関連業界の展望を示す

           ③ エグゼクティブ教育の欠落を埋める、 です。 

「エグゼクティブ教育の欠陥を埋める」というのは、理論偏重になりがちなビジネススクールの MBA 教育に対して、実学を行う、という意味です。したがって学位も MBA ではなく MPS Master of Professional Studies)なのです。

  基本カリキュラムも多面的です。

Business Policy経営方針/ ビジネスポリシー)、Production and Supply Chain(製造・サプライチェーン)、Digital Marketing(デジタルマーケティング)、Finance 金融)、Politics and Trade 政治・貿易)、International Business and Culture (国際ビジネス・ 文化)、Fashion for Global Markets グローバルマーケットに対応するファッション)、などがあります。

  3大陸での集中セミナーによる研修(画像参照)では、フランスの IFM  校をベースに「ラグジュアリー・ビジネス」を。香港では香港工科大学をベースに 「生産、中国の消費者、中国本土、製品開発、マーケティング」を。ニューヨークの  FIT では、「財務、マーケティング、テクノロジー、リテーリング」を、それぞれ第一線の経営者や現場訪問で学びます。

 今回の FIT/GFM セミナーでは、米国における大学院教育をディーンが、GFM コース概要を学科長が説明。さらに、現在ここで学んでいる 3人 の日本人からのビデオ・メッセージが紹介されます。  

 このコースには、ファーストリテイリング社(ユニクロ)の留学奨学金が、日米カウンシルの TOMODACHI プロジェクトとして設置されており、現在学んでいる 3 人は、その 1 期生及び 2 期生です。全員女性ですので、次回は男性にも是非チャレンジをして頂きたいと願っています。
 セミナーの対象者は、グローバル・キャリアをめざして留学を希望する人、企業あるいは教育機関で人材育成や学生の留学指導に当たって居られる方々です。

 留学志願者ばかりでなく、業界や大学関係者にも、この機会に、益々激化するグローバル競争に打ち勝つ人材の育成のありかたを、FIT GFM に学んで頂ければ、嬉しいです。