WEF ファッション分野の女性活躍支援

< WEF 1周年記念シンポジウム③ カルビーの鎌田由美子氏が語る イノベーション>

 

 パネル・プレゼンターの鎌田由美子さんは、カルビー㈱上級執行役員ですが、今年の月まではJR東日本で、エキナカ・ビジネスや各種商業施設の立ち上げなどに取り組んで来られたファッション流通ビジネスの経験者です。
 旧国鉄の文化を引き継ぐJR
東日本に入社したのは「上野駅が変わります」の求人案内に胸が躍ったのがきっかけ。全社員の中で当時女性はわずか1%未満、という文字通りの男性社会で、運輸業としての鉄道以外のビジネスなど全く考えられなかった同社で、35歳の時、エキナカ のプロジェクトを部下2名とで任されたそうです。Ecuteの最初の取り組みは、大宮駅。なぜ大宮かといえば、バリアーフリー化が全くなかった駅だったから、との事。駅構内で、嗜好性の強い商品も含む物販をするおしゃれな商業空間、というコンセプトは、当初、理解してもらうのが大変で、「仕事の比率は、会社の内部のほうが80%で外部は20%だった。出来上がって目に見える形になると、『こういうものだと最初から言えば分かったのに』と言われてたと話して居られました。
 私自身も経験したことですが、新規商品や新規事業は、それまでになかったアイディアやコンセプトであればあるほど、「こんな形」と出来上がりを最初から伝えにくいものです。関係者を巻き込みながら、次第に形が出来て行く、といった事業やイノベーションが今後ますます増えて行く事でしょうから、アイディアをコミュニケーションする力や知恵が、不可欠になります。その時重要なのは、それを求めている人、あるいは顧客が居る。その人達のためにこのプロジェクトを実現するという熱い思いです。鎌田さんは、その思いのパワーで多くの難題を解決されたのだと納得しました。その時、顧客が(意識下もふくめて)求めているものを良く知っている、という現場力が女性に強みを与え、イノベーションにつながることも、お話しを聞きながら痛感しました。

 Ecuteを成功させ、ステーション・ルネッサンスに関わる事業、またJR東日本 ステーションリテイリング 代表取締役社長を務められた後、2008年からは、本社事業創造本部 部長として、地域活性化・子育て支援などの仕事をしてこられました。地域活性化では、越後湯沢駅リニューアル【がんぎどおり、CoCoLo湯沢】や青森でのAOMORO CIDRE(リンゴ・シードルの商品開発と製造)や、【A-FACTORY】の建設等、地域やデザイナーや建築家などの専門家を動かす仕事に関わられました。

 鎌田さんの新たな任務、カルビーでの上級執行役員・事業開発本部本部長としての 益々のご活躍を期待したことでした。

 (次回は、石塚由紀さんの講演についてです。)

 

< WEF 1周年記念シンポジウム報告① 「イノベーション と リーダーシップ」  >

南場智子著 「不格好な経営――チーム DeNA の挑戦」

 昨日、722日に、女性活躍支援の一般社団法人 ウィメンズ・エンパワメント・イン・ファッション(WEF) は 設立1周年記念シンポジウムを開催しました。参加者は、女性ばかりでなく経営者や男性幹部を含む220名超で、会場は、パワフルな講師の話と、熱心に聞き入る参加者の、熱気であふれたイベントになりました。

  テーマは 「新たな視点で、ビジネスを立ち上げる           ―― イノベーションをリードする現場力」。

基調講演者は、㈱ディー・エヌ・エー取締役会長ファウンダー。パネル・プレゼンターに、㈱三越伊勢丹の執行役員で伊勢丹立川店長の石塚由紀さん、カルビー㈱上級執行役員の鎌田由美子さんをお招きしました。鎌田さんは、今年の4月に現職につかれるまでは、JR東日本で、エキナカ(ecuteなど)や各種の新業態の立ち上げに関わってこられた方です。

 このテーマにした狙いは、今強く求められているビジネスの「イノベーション (革新)」こそが、WEFの女性活躍支援のキーワードである、「エンパワメント」 と 「リーダーシップ」を身につける効果的な方策だ、と考えたためです。

 講師3人のうち、南場さんは自らDeNAを創業した、世界でも注目されている起業家。石塚さんと鎌田さんは、それぞれ一部上場の大企業の組織の中で、イノベーションを起こして来られた方で、そのイノベーションの体験談は、まさしく、非常に異なるものでした。

 結論から先に言えば、南場さんは、「 “そんなに熱っぽく語るなら、自分でやったらどうか”の一言が、私の人生を変えてしまった」 と、自ら執筆した 「不格好経営―チームDeNAの挑戦」で述べているとおり、全てゼロから、自分の想いを、つぎつぎに、独自の形のビジネスにし続けて来られた方です。他方、「大企業の組織の中の “女性”」 というハンディキャップ (とあえて言います) を持ちながら、新しいコンセプトや事業に取り組んでこられた石塚さんと鎌田さんのお二人は、「たえず、理論武装をし、数字で説明し、説得する」 ことに注力されてきた、というのです。鎌田さんの言葉を借りれば、「仕事の80%は社内と(折衝やコミュニケーション)、20%が社外」というのが、私自身の経験からもよく理解できます。

 これはまさしく、歴史ある、大企業、これまでの男性中心社会の、「企業言葉」で語らねば何事も通りにくい、という日本企業の象徴的な実態であろうと思われます。お二人が活躍してこられた会社は、いずれも日本では有数の革新的企業です。しかしながら、ファッション・ビジネスで、今、求められるイノベーションが、「顧客視点」の、「現場重視」のものでなければならない、「アイディアは多様な(ダイバーシティある)人材から提案される」、また「前例がないもの」でなければ意味がない現在、このことを、経営者も、中間管理職も、現場マネジャーも、担当者も、全ての人が、あらためて肝に銘じる必要があると考えます。

 次回は、それぞれの講演とパネル・ディスカッションの内容を御紹介します。

<女性支援 WEF 記念シンポジウム 「新たな視点で ビジネスを立ち上げる」 >

 ファッション関連業界の女性活躍支援のために立ちあげた、一般社団法人 ウィメンズ・エンパワメント・イン・ファッション(呼称:プロジェクトWEF )が、設立一周年を迎えます。

 お陰さまで、この1年間に開催したシンポジウムやキャリア研修、ダイバーシティ/女性活躍推進者会議等、12のプログラム(それぞれ約3時間)は、延べ1000人を超える方々に参加を頂き、業界での「女性リーダーつくり」の動きを加速する事が出来たと、有難く思っています。

 今回の記念シンポジウムは、その一周年を記念するもので、722日(水)夕刻から開催します。

 

 テーマは「新たな視点で ビジネスを立ち上げる―イノベーションをリードする現場力」。

基調講演は ㈱ DeNA創業者で取締役会長の南場智子さん。パネル・プレゼンターには ㈱三越伊勢丹執行役員で立川店長の石塚由紀さんと、カルビー㈱ の上級執行役員の鎌田由美子さんです。 詳細は http://www.wef-japan.org/event/607.html をご覧ください。

 企画の狙いは、起業、新規事業に取り組み成功された講師陣に、イノベーションの精神や実践、クリエイティブ・チームをどう作り、リードするか、等について、体験を通じてお話しいただくことにあります。 

 WEFのシンポジウムは、3つの目的を持っています。

第 1 は――業界が直面する重要な課題について、新たな視点と方向性を提示すること。

 今回は、「新規事業・イノベーション」です。ファッション/ライフスタイル産業界は、いま、これまでの男性的発想と仕組みで動いてきたビジネスに、多様な価値観や生活者ならではの視点を取りこみ、現場力で「新たな価値創造」を実現することが不可欠になっているからです。

第 2 は――活躍する女性のロールモデルを紹介すること。

 日本で女性の活躍が遅れている大きな理由の一つは、ロールモデルが見えない事にあります。特にファッション関連業界には多様な職種や職能があり、また女性には男性以上に働き方に影響する、結婚や育児・介護といった様々な状況があります。その中で女性は、自身のキャリア目標と日常生活、つまりワークとライフをどうマネージする? という、難しい課題に直面します。しかしその課題への取り組み方、あるいは人生の生き方は多様です。WEFのシンポジウムは、女性が独自のキャリアを、主体性を持ってつくって頂くためのヒントを、多様なモデルから得て頂きたい、と願っています。

第 3 は――人生を生きる、考え方や信条、哲学、に触れること。

 成功する人達は、どのような考え方や信念を持って、目標を達成し、自分のキャリアを築いて行くのか。 人がしない事を実行する覚悟や度胸、あるいは壁にぶつかった時どのような判断をし解決に導くのか。それらを支えるものは? そんなことを学んで頂きたいのです。

 今回のシンポジウムは、女性のエンパワメントだけでなく、イノベーションへの展望を拓く、またとないチャンスになるものと考えています。男女を問わず、沢山の方に御参加頂きたいと願っている所です。