パネル・プレゼンターの鎌田由美子さんは、カルビー㈱上級執行役員ですが、今年の1月まではJR東日本で、エキナカ・ビジネスや各種商業施設の立ち上げなどに取り組んで来られたファッション流通ビジネスの経験者です。
旧国鉄の文化を引き継ぐJR東日本に入社したのは「上野駅が変わります」の求人案内に胸が躍ったのがきっかけ。全社員の中で当時女性はわずか1%未満、という文字通りの男性社会で、運輸業としての鉄道以外のビジネスなど全く考えられなかった同社で、35歳の時、エキナカ のプロジェクトを部下2名とで任されたそうです。Ecuteの最初の取り組みは、大宮駅。なぜ大宮かといえば、バリアーフリー化が全くなかった駅だったから、との事。“駅構内で、嗜好性の強い商品も含む物販をするおしゃれな商業空間”、というコンセプトは、当初、理解してもらうのが大変で、「仕事の比率は、会社の内部のほうが80%で外部は20%だった。出来上がって目に見える形になると、『こういうものだと最初から言えば分かったのに』と言われてたと話して居られました。
私自身も経験したことですが、新規商品や新規事業は、それまでになかったアイディアやコンセプトであればあるほど、「こんな形」と出来上がりを最初から伝えにくいものです。関係者を巻き込みながら、次第に形が出来て行く、といった事業やイノベーションが今後ますます増えて行く事でしょうから、アイディアをコミュニケーションする力や知恵が、不可欠になります。その時重要なのは、 “それを求めている人、あるいは顧客が居る。その人達のためにこのプロジェクトを実現する”という熱い思いです。鎌田さんは、その思いのパワーで多くの難題を解決されたのだと納得しました。その時、顧客が(意識下もふくめて)求めているものを良く知っている、という“現場力”が女性に強みを与え、イノベーションにつながることも、お話しを聞きながら痛感しました。
Ecuteを成功させ、ステーション・ルネッサンスに関わる事業、またJR東日本 ステーションリテイリング 代表取締役社長を務められた後、2008年からは、本社事業創造本部 部長として、地域活性化・子育て支援などの仕事をしてこられました。地域活性化では、越後湯沢駅リニューアル【がんぎどおり、CoCoLo湯沢】や青森でのAOMORO CIDRE(リンゴ・シードルの商品開発と製造)や、【A-FACTORY】の建設等、地域やデザイナーや建築家などの専門家を動かす仕事に関わられました。
鎌田さんの新たな任務、カルビーでの上級執行役員・事業開発本部本部長としての 益々のご活躍を期待したことでした。
(次回は、石塚由紀さんの講演についてです。)