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WEFシンポジウム――「米国のファッション・ビジネス最新事情」を尾原が講演します

 

 WEFシンポジウムを、「テクノロジーで変容するファッション・ビジネス――あなたはこの機会をどう活用しますか?」 のテーマで727日(水)夜、1830から開催します。

 

 尾原が基調講演を担当しますが、そのテーマが、「米国のファッション・ビジネス最新事情」です。インターネットやデジタル・テクノロジーが、ファッション・ビジネスに巨大な変革を起こしている。その実態を、NRF大会や米国業界の先端的事例をもとに、多数の画像をスライドで紹介します。ファッション・ビジネスが、単に「服やファッション雑貨を売る」ビジネスから、どのように変化してゆくのか、を見て頂きたいと考えています。 詳細は、下記をご覧ください。

WEF第7回シンポジウム 「テクノロジーで変容するファッション・ビジネス」 ご案内_160727 

 企画の動機は、日本のファッション・ビジネスが今、ぶつかっている壁です。

市場には沢山のファッションが溢れているのに、またオシャレをしたい顧客は居るのに、それらがマッチングされていない。他方、デジタル・テクノロジーの急進展は、オムニチャネルや人工知能(AI)活用により、個人にパーソナルな訴求をする手法など、新しいビジネス展開を可能にする大きなチャンスをもたらしている。 これを活用し新しいビジネスの方向に取り組むことで、企業も成長し、個人もキャリアの発展が出来る。そう願っているのです。

 シンポジウムの第二部は、WWD誌の 向千鶴 編集長、アーバン・リサーチ社執行役員の 乾展彰氏、さらに今、人工知能で注目されているカラフルボード社の 渡辺祐樹社長のパネルです。テーマは、「ファッションとビジネスの新しい世界をテクノロジーが拓く」。それぞれの専門分野からの最新情報や提言で、エキサイティングなものになると期待しています。

 興味を持たれる方は、ぜひご参加くださると嬉しいです。     以上

 

 

 

< WEF 1周年記念シンポジウム報告④  伊勢丹の石塚由紀氏が語るイノベーション>

 石塚由紀さんは、今年41日付で、執行役員立川店長に就任した、㈱三越伊勢丹初の女性店長です。その前には、初の女性営業部長として婦人第二営業部長、その後三越日本橋本店婦人営業部長それぞれ2年務めて、入社30年で執行役員になられました。日本トップ百貨店の伊勢丹とはいえ、歴史と伝統ある“男性主導社会”ですから、この営業部門で頭角を現わすのは、どのような人なのか、私も非常に関心を持ちました。

 シンポジウムでのプレゼンは、まず、30年にわたる、日本社会と自社の変化を振り返り、入社後の「シンデレラシティ」配属以来、シンガポール伊勢丹出向の5年間も含めた多様なキャリア履歴の紹介に始まりました。

 テーマの「新たな視点で、ビジネスを立ち上げる――イノベーションをリードする現場力」については、一筋縄では行かない課題への取り組みもふくめ、経験談を「サバイバル編」 「マネジメント編」 「リーダーシップ編」の構成にまとめて、ごく自然体で話されました。たとえば「サバイバル編」での、【部長に‘ばかやろう!’と怒鳴られた件】では、「このおじさん、なにを言っているのかしら、、、」 と 「我が事としてとらえない」対応をしたエピソードを、ユーモラスに紹介されました。 当事者の部長はきっと、「何だこいつは! 生意気だ!」と思われたことと想像しますが、大組織では、個人感情に流されることなく、しなやかに、クールに対応するのが共存の知恵なのだ、と私も共感しました。

 「マネジメント編」では、入社後ずっとファッション分野で経験を積んで来たのに、部長昇進で未経験のリビング担当になった事。「ファッションと違って商材も知らない、マネジメント経験もない。出来ることは‘人’の力を最大限に引き出して、成果をあげること。マネジメントが仕事と心得る」と開き直られたそうです。ストレスが多い職場環境、個人的なマイナスのライフイベントなどで、メンタル不調者が増え始めた時には、「産業カウンセラーの勉強をし、資格を取り、傾聴を体得し、マネジメントに活かす」ことに注力したという話には、多くの参加者から感動の声が漏れました。

 「イノベーション編」では、「自分はイノベーターか? そうではない。視点を広げ、こうだったらいいな、を語る。イノベーションのヒントは、小売業の場合、お客さまの生活の中にある。顧客接点から拾いあげるのが基本。なので、現場が重要」との明確な考えを持ち、リーダーとして、「プロセスの設計と、部下の背中を押すこと、成功事例を拾いあげて共有し エンパワメントする」ことの重要性も強調されました。

 「志を持つな。与えられた仕事をしっかりとやる。それを見ていてくれる人が必ずいる」

と強調された石塚さんですが、これには反論したい方もあるかもしれません。しかし大きな組織には色々な人がいて、「仕事が出来る人」は誰かが必ず見ている、あるいは認めてくれる人がいる、というのは事実でしょう。

これが、石塚さんのキャリア・アップの秘訣だったようです。

 “イノベーションの現場力”については、男性とは「肌実感」がちがう女性、また多様な人材によるダイバーシティ・インクルージョンが重要。「1500人いれば、その数だけの顧客との接点がある」。とのまとめは、ダイバーシティの本質を的確に表現した、素晴らしいまとめだと思いました。

< WEF 1周年記念シンポジウム報告① 「イノベーション と リーダーシップ」  >

南場智子著 「不格好な経営――チーム DeNA の挑戦」

 昨日、722日に、女性活躍支援の一般社団法人 ウィメンズ・エンパワメント・イン・ファッション(WEF) は 設立1周年記念シンポジウムを開催しました。参加者は、女性ばかりでなく経営者や男性幹部を含む220名超で、会場は、パワフルな講師の話と、熱心に聞き入る参加者の、熱気であふれたイベントになりました。

  テーマは 「新たな視点で、ビジネスを立ち上げる           ―― イノベーションをリードする現場力」。

基調講演者は、㈱ディー・エヌ・エー取締役会長ファウンダー。パネル・プレゼンターに、㈱三越伊勢丹の執行役員で伊勢丹立川店長の石塚由紀さん、カルビー㈱上級執行役員の鎌田由美子さんをお招きしました。鎌田さんは、今年の4月に現職につかれるまでは、JR東日本で、エキナカ(ecuteなど)や各種の新業態の立ち上げに関わってこられた方です。

 このテーマにした狙いは、今強く求められているビジネスの「イノベーション (革新)」こそが、WEFの女性活躍支援のキーワードである、「エンパワメント」 と 「リーダーシップ」を身につける効果的な方策だ、と考えたためです。

 講師3人のうち、南場さんは自らDeNAを創業した、世界でも注目されている起業家。石塚さんと鎌田さんは、それぞれ一部上場の大企業の組織の中で、イノベーションを起こして来られた方で、そのイノベーションの体験談は、まさしく、非常に異なるものでした。

 結論から先に言えば、南場さんは、「 “そんなに熱っぽく語るなら、自分でやったらどうか”の一言が、私の人生を変えてしまった」 と、自ら執筆した 「不格好経営―チームDeNAの挑戦」で述べているとおり、全てゼロから、自分の想いを、つぎつぎに、独自の形のビジネスにし続けて来られた方です。他方、「大企業の組織の中の “女性”」 というハンディキャップ (とあえて言います) を持ちながら、新しいコンセプトや事業に取り組んでこられた石塚さんと鎌田さんのお二人は、「たえず、理論武装をし、数字で説明し、説得する」 ことに注力されてきた、というのです。鎌田さんの言葉を借りれば、「仕事の80%は社内と(折衝やコミュニケーション)、20%が社外」というのが、私自身の経験からもよく理解できます。

 これはまさしく、歴史ある、大企業、これまでの男性中心社会の、「企業言葉」で語らねば何事も通りにくい、という日本企業の象徴的な実態であろうと思われます。お二人が活躍してこられた会社は、いずれも日本では有数の革新的企業です。しかしながら、ファッション・ビジネスで、今、求められるイノベーションが、「顧客視点」の、「現場重視」のものでなければならない、「アイディアは多様な(ダイバーシティある)人材から提案される」、また「前例がないもの」でなければ意味がない現在、このことを、経営者も、中間管理職も、現場マネジャーも、担当者も、全ての人が、あらためて肝に銘じる必要があると考えます。

 次回は、それぞれの講演とパネル・ディスカッションの内容を御紹介します。