ユニクロの創業者、柳井正氏が、いま世界で注目を浴びています。
今回は 「日本が世界に誇れるもの」 の第1回として、柳井氏に関する、日本人にとって嬉しいニュースを紹介します。
日本のファッション・流通業界でユニクロが注目されるのは、売り上げがファーストリテーリング全体で1兆円に達するという規模の成長や世界各地への急速な出店、そしてヒートテックやウルトラライトダウンといった高機能商品が中心ですが、世界はユニクロを、より総合的で未来への道を拓く 「革新的なデザイン企業」 と見ていることを、強調したいのです。つまり、日本では同社を「服の小売業」として見ている場合がほとんどなのに対して、欧米では、「デザイン(設計)での革新企業=服のデザインに限らず店舗デザインやビジネスの仕組みのデザイン」あるいは「斬新なビジネス・コンセプト=『常識を変える・世界を変える』や『Made for All(すべての人に)』」を持つ企業だと見ているのです。
まず、最近の掲載記事では、米国のブルームバーグ・マーケット誌が「世界で最も影響力のある50人」の一人に柳井氏を選んでいます。金融・証券に強い同誌らしく、「2012年8月までの5年間で株価を158%上げた」ことと、中国市場へ積極攻勢をかけて何百店舗を展開する意欲を特記しています。(9月5日号)。選ばれた50人の中には、ティム・クック(Apple社CEO)やマーク・ザッカーバーグ(Facebook 創業者)なども入っています。
日経ビジネスの「稼ぐ経営者ランキング」(10月1日号)の特集も、柳井氏を第4位に位置づけていますから、企業を成長させる経営手腕を、日本も世界も認めているということでしょう。
柳井氏の別な受賞、Fast Company誌の 「Co.Design 50」(優れたデザインの企業あるいはリーダー50人)受賞は、「未来をデザインする企業」としての評価であり、非常に重要な意味を持つと私は考えています。 Fast Company はアントレプレナー的あるいは先端的なビジネス動向をカバーする専門誌で、米国ではイノベーションを志向する読者が支持するビジネス誌です。
そのサブ誌、Fast Company Co.Designが、今年の「Co.Design 50」を発表しました。(Fast Company 誌10月号)。 柳井氏の受賞の説明として同誌は、「ミドル市場へ向けて、これまでの常識を覆す小売戦略をとり、店舗には十分のスタッフを投入、店舗ディスプレイにも高額投資をしている。売り上げは爆発的に伸び、ユニクロは急速に拡大し、かつてのGap がそうであったように、デザイン・アンバサダー(大使)になりつつある。」と書いています。
そもそも「Co. Design」のコンセプトは「business + innovation + design」、つまりビジネスとイノベーションとデザインの合体であり、その根底には、「これからは 『Good Design Is Good Business』 の時代」、「イノベーションが不可欠」の思想があります。この考え方は約40年前に、トーマス・ワトソン二世(IBMの元CEO)がウォートン大学での講演で話したことでしたが、当時は理解されるどころか、馬鹿げたことに聞こえたそうです。それが現在、革新にはデザインが不可欠になり、スティーブ・ジョブスのアップルにおける成功をひくまでも無く、全ての業種に共通な重要事項になっている、とCo. Design の編集長はいいます。
「Co.Design 50」 特集では、現代のビジネスが如何に多様な要素を持ち、それらが互いに関わり合っているかを、ユニークな地図に描いて示しています。各要素は9つの柱として地図の上に立てられ、それらを線でつないだり交錯させたりすることで、現代のイノベーションが専門領域の壁を越え、学際・業際的になっていることを示す非常にユニークな図です。9つの柱とは、「教育者&キューレイター(学芸員)」、「グラフック・デザイン」、「インタラクティブ・デザイン」、「プロダクト・デザイン」、「ファッション」、「エグゼクティブ&パトロン」、「建築」、「インテリア」、「トランスポート・デザイン」、です。ちなみに柳井氏のポジションは、「ファッション」と「エグゼクティブ&パトロン」です。同誌は、受賞者50人は、みな複数の要素を領域として踏まえながら、さらにその領域の境界線を打ち破って、新しい未来を作って行く、としています。
(興味のある方は、下記のURLをご覧ください)
http://www.fastcodesign.com/1670792/infographic-50-people-shaping-the-future-of-design#1
「『未来は今、デザインされつつある』。これは奇妙な考えかもしれないが、今回選ばれた50人のデザイナーや教育者や経営者が、まさしくそれをやりつつある。Co.Design のエディターたちは、専門領域の境界線を、未来を約束する新しい方向へ押しだすこれらの人たちを、今年の「Co.Design 50」 として選出した。」
その一人として、柳井正氏が選ばれた事を、ファッション流通に携わる日本人として、非常に誇りに思います。