FITセミナー第3回 「オムニチャネル時代のファッション・ビジネス」は、3月21日 に開催されました。受講者が 170名、補助席を入れても満杯という盛況で、このテーマへの関心の高さを、改めて痛感しました。 業界の主要企業の経営者をはじめ、参加下さった皆さんに、大いなる感謝と敬意を表します。 その内容を、何回かに分けてご報告しましょう。
第1回目は、「オムニチャネル時代とは」 を担当いただいた 大島 誠 講師のお話を紹介しましょう。 セミナーはまず、主催者である筆者からの 「セミナー企画の狙い」 の説明で始まりました。 その狙いとは、現在、モバイル (スマホやタブレット) の急速な普及と、先行企業の革新的な取り組みによって、「オムニチャネル」 が米国小売業を劇的に変えつつあること。 これに対し、日本は、大きく後れをとっており、このままでは、IT 装備の消費者の期待にこたえられないばかりでなく、アマゾンをはじめとする海外企業との競争 (日本市場での)にも、敗北しかねない、という危機感です。
大島講師は、日本でのオムニチャネル推進の第一人者で、長年にわたって外資系 IT 企業で日本の小売・流通業のためのソリューション・スペシャリストとして活躍され、 現在、日本オラクルにて、小売業・流通業の IT 革新支援に注力して居られる方です。 講演はまず 「オムニチャネル」とは何か、その本質は? といった基本的、かつ奥深い意味合いを、 <オムニチャネルの構図> を使って説明されました。 小売業と顧客の関係が、時代とともに 「シングルチャネル(単一接点)」 から 「マルチチャネル (複数接点)」 へ。 さらに 「クロスチャネル (ネットで買って店舗で受取、などのチャネルの交差が可能)」 になり、そして 「オムニチャネル」 へと発展してきた経緯です。 「オムニチャネル」 が他と全く異なるのは、それが “シームレス(チャネル間の境目が無い” こと。 また、 “チャネル横断型の商品・顧客・販促管理”、すなわち、商品在庫の一元管理と、顧客情報(購買履歴を含む)の一元管理、また販促管理との連動、が出来るようになることです。
大島氏が 強調した 「オムニチャネル時代の忘れてはならないキーワード」を御紹介しましょう。
1.シームレス (業種・業態の垣根なし)
2.神出鬼没なお客様(いつ、どこに現れるか分からない、つかめない)
3.スマートフォーン、タブレット端末 (革新的役割)
4.生活に密着 (Walgreen事例:“角の店”がやってくる)
5.4Rから5Cへ = マーケティングは真の消費者・生活者視点へ
従来のアプローチ= 4R (Right Product, Price, Place, Time) から オムニチャネル時代= 5C (Customer, Content, Community, Commerce, Context) へ
6.リアル店舗の重要性
7.人材
8.「楽しく」「わくわく」「おもてなし」
オムニチャネルの本質を 大島講師は、「単なる O 2 O といった、ネットとリアルの融合戦略だけではない。 『オムニチャネル』 を推進すればするほど 『リアル』 が実は重要になる。 リアル店舗は、その特性を活かす事が重要。 リアルならではの 『おもてなし』、 すなわち、いかにして来店して頂くか。 いかに楽しくショッピングをしてもらい 買って頂くか。 ということは、接客とそれに当たる人材が非常に重要」、 と強調されました。 (次回は、テッド・チャクターFIT教授の講演内容を紹介します)