先回ご紹介した、FIT大学院 「グローバル・ファッション・マネジメント」 紹介セッションは、11月19日に開催されました。 予想を超える約70名の参加申し込みを頂き、プレゼンテーションも質疑も 大いに盛り上がり、熱気あふれる2時間のセミナーになりました。

 テーマは 「ファッション・ビジネスのグローバル人材を育成するFIT――Global Fashion Management (略称GFM) コースで学べる事は?――」 。

 講師はニューヨークから来日したFIT大学院長(ディーン)の Mary Davis 博士、GFMコース学科長の Pamela Ellsworth 教授です。 

FIT/GFMセッションで講演する デイビス大学院長

はじめに、尾原が 「グローバル人材開発に関する問題提起」 を行い、次いで、デイビス大学院長の 「米国における大学院教育の変化」、エルスワース学科長による 「GFMコース設置の狙いとカリキュラム」 のプレゼン。さらに 「TOMODACH I-ユニクロ奨学金の説明」 と、「奨学生第 1 号がニューヨークから送ってきたビデオ・メッセージ」、そして質疑応答、と続きました。

 

 今回は、デイビス大学院長による講演 「米国における大学院教育の変化」の内容を紹介しましょう。 デイビス氏が強調する大学院教育の変化と展望を簡潔にまとめると:

1.社会やビジネス環境の変革が、人材に求める資質や能力を変え、大学院が重要性になっている。

2.大学院教育は、キャリアとアントレプレナー(起業家) 開発のベース。知識経済におけるリーダーシップを身につける知識・技術を提供する。イノベーションと経済的繁栄の鍵でもある 

3.米国は、大学院教育では、これまで世界をリード。しかし今、欧州が大学院教育の大改革に取り組み、中国・インドも、教育システム改善に巨大投資をしている。

4.今後10年間に生まれる新しい職種の半数以上が、プロフェッショナルとサービス関連

5.求められるのは、過去の製造業のように “生産する” のではなく “考える” 働き手

6.女性の修士保持者が伸び、比率が男性を大きく超えた

7.FITの修士課程では、デザイン関連の4コースで、Master of Arts、Master of Fine Arts  の修士号を授与。ビジネス関連の 2 コースは、Master of Professional Studies (MPS=プロフェッショナル・スタディス修士号) を授与する

 「MPS」というユニークな学位は、ファッション関連業界ですでにキャリアを進めている人に、エグゼクティブへむけての教育をする狙いで設置されたものです。その一つが、GFM(グローバル・ファッション・マネジメント)なのです。 GFMについては、次回以降に詳しく紹介しますが、この学位が「MBA」ではなく、「MPS」であることも、ファッション・ビジネスの世界をリードするFITならではと思います。

 もう1つ、FIT大学院長ディーンの要職にあるデイビス博士は、何と ハーバード大学で 『音楽学』 博士を取得された異色のキャリアです。「創造性とビジネスを合体させる教育」 をめざすFITが、こういった経歴の女性を大学院のトップにスカウトしたのも、時代の大きな変化をとらえたFITのビジョンと戦略を象徴するものでしょう。

  (次回は、GFMコースの教育目標とカリキュラム、について書きたいと思います)