新年を迎えて、毎年1月にニューヨークで開催される恒例の NFR(National Retail Federation=米国小売業協会)大会に参加して来ました。この大会は4日にわたる大規模なセミナーと約550社の展示を通じて、ファッションをはじめ消費財の販売に関わる小売や製造業界に、新たな年の展望をひらき、ビジネス環境や先端的技術の知識を深め、成功するためのヒントを得る場を提供するものです。私は世界の先端的動きを知るために、過去28年、欠かさず出席しています。

NRF大会2014 展示会場入口


 今年は第103回目で、参加者は過去最大の3万人。海外勢がその21%を占め、86カ国が参加(昨年より4カ国増加)。最多はブラジルの1640人、次いでカナダ1128人、フランス656人、英国570人。アフリカからの参加もあり、国際色がますます豊かになっています。日本は残念ながら120人。それでも昨年の88人より増えました。
今年のテーマは “Perspective Elevated”。 「展望を引き上げよ」とでも訳しましょうか。大会を通じてのメッセージは、昨年盛り上がった「オムニチャネル」「ソーシャル・メディア」「モバイル」に対して、今年はこれらの実行に取り組む年、だと感じました。「オムニチャネル」はこれからの小売業が進むべき方向として確認されたものの、その実行は、簡単ではない、いう事が明確になった。多くの知恵や革新的取り組みが不可欠であり、いわゆるビッグデータをどう活用するかについての多様なソリューションの提案も見受けられました。
 また、オンラインでの購買が拡大すればするほど、生活者は、「人対人」の人間的なつながりやコミュニティの温かさを求める傾向を強めている、というのも今大会のメッセージでした。端的に言えば、ネット販売は引き続き成長しているが、同時に、というよりはそのベースとしての店舗とそこでの優れた体験が、重要になってきた、という事です。
 これからNRF大会のレポートをシリーズで書きたいと思っています。この第1回は、セミナーの中でも「キーノート(基調講演)」と呼ばれる8つの大型セッションのテーマを御紹介し、次回から、私の印象に残った内容について書くことにします。
 <キーノート・セッションのテーマ>
1. メインストリートの新イメージ ――21世紀の店舗小売業はいかに繁栄すべきか。
2. 顧客主導時代という現実に 小売企業のCEOはどう挑戦する? ――新たな“ リセット”の時!
3. 前大統領 ジョージ・ブッシュの展望
4. 「価値」の新たな時代―― IBM 社 ジニー・ロメッティ CEO との対話
5. 「楽観主義」、「思いやり」、そして「喜び」――適切なマインドセットが貴方のブランドを成長させる
6. 国境を越えて ――グローバルな拡大のための小売のレッスン 
7. レシート―― 一つのコミュニケーション・チャネル
8. 小売のルールブレイカー ――現状に満足できないイノベーター達を祝福する