2015年 1月 の投稿一覧

<NRF 2015 (全米小売業大会)レポート ①――世界最大の小売コンベンション>

 ニューヨークで毎年1月に開催されるNRF大会(米国小売業協会: National Retail Federation に今年も参加しました。呼称 Big Show の名で小売業界の人々に親しまれているこの大会は、4 日にわたる大規模なセミナーと約 550 社の展示(今年から 3 日間に拡大)大会で、この分野では世界最大のコンベンションです。 (写真は Big Show の展示会場入口)

 私は世界の先端的動きを知るために、過去29年、欠かさず出席しています。なぜなら、注目企業のトップや著名なコンサルタント会社、未来学者がここに集結し、新たな年の展望をひらくと同時に、ますますスピードアップする変化の中で成功するための様々なヒントを提供してくれるからです

 104 回目という歴史を持つNRF大会の今年のテーマはBig Picture”、「大きな展望」です。 1 11日~14日の期間、ニューヨークJarvits Convention Centerで開催されたこのBig Showに参加した人は、33000人。うち海外83カ国からが7,811人。日本からは167人(昨年120人)。最多数参加国はブラジルの1,877人、ついでカナダ、フランス、英国、インドなど。韓国や中国、アフリカ諸国も参加しています。

 注目したい内容については、回を追ってご紹介しますが、今回はまず、セミナーと展示の全体感をお伝えしましょう。

 過去2年を振り返ると、2013 年にはソーシャル・メディアとモバイルの拡大そして「オムニチャネル」という新しい概念がフィーチャーされました。昨 2014 年は、テクノロジーの急拡大と、顧客を中心に考える時代の「 “リアル”の感動を“デジタル”が支える」様々なアイディアが主流となりました。 2015 年、ことしは、これらの動きがより具体的に、また広範囲に広がり、それを支援するテクノロジーも益々多様になって、実践され始めた年、と言えます。

 4 日間にわたる 約 110 のセミナーのうち、ビッグセッションの8つのテーマを、まずはご紹介しましょう。数千人を収容できる大会場でのビッグセッションは、以前はスーパー・セッションと呼ばれていましたが、最近は、 Key Note Session (基調講演セッション)と呼ばれています。このラインアップを見ると、その年の全体的方向性が分かります。2015 年の キーノート・セッションのテーマを挙げてみましょう。

  #1 「ビジネスのゲームを変える」――熱狂的スポーツファンに学ぶ忠誠心とパーフォーマンス

  #2 「ブリック(リアル店舗)は新しいブラック(黒字)」――店舗体験の革新

  #3 「グローバル経済の課題とチャンス」――バ―ナンキ前FRB(米連邦準備理事会議長)に聞く

  #4 「ユニークで他社と全く違うものを提供する」――新しい顧客体験

  #5 「新しいデジタル・ディバイド」――デジタル・テクノロジーへの顧客の期待と実態とのギャップ

  #6 「未来がやってくる 」――テクノロジーが変容させる世界

  #7 「Fluxジェネレーション時代のコマース」――カオスの時代に成功するには

 ご覧いただくと分かる通り、今年のキーノート・セッションでは、「優れた顧客体験」に関するものが3つもあります。まず第1セッションの 「ビジネスのゲームを変える」 では、スポーツファンが熱狂的になる情報や環境、体験の提供が、いかにロイアリティの高い顧客を育てるかを語るために、プロのテニスやサッカー、野球などの監督や団体役員が登場しました。 第4のセッションでは、他社を圧倒する差別性を付ける“新しい顧客体験”づくり、がプレゼンされました。

 特に興味深かったのは、第2セッションの、 「ブリック(リアル店舗)は新しいブラック(黒字)」。いかにネット販売が拡大しても、リアル店舗での優れた顧客体験が、“黒字をもたらす”というもので、リーバイスの ロックスターの様にカッコイイ事業本部長(COO) が登場したのには驚きました。

 テクノロジーに絡むセッションは2つ。第 5 と第 6 セッションです。特に第 6セッションの 「未来がやってくる」では、著名な未来研究家が、テクノロジーが変容させる未来の世界を描いて見せました。その中には、3D印刷で食品や人間の臓器を作る、あるいはIPS細胞が多様な展開を見せる、など、ワクワクしながら怖くなるようなものもありました。

 イノベーションをテーマとするセッションも2つ。第 7 の「Fluxジェネレーション時代のコマース」と、第 8 セッションの 「ファスト・トラック――勇気を持つ行動がすごい小売業をつくる」は、若手の起業や、既存ショッピング・センターの革新など、4 つの事例が紹介され、明日へ向けて、ワクワクするような展望を見せてくれました。

 全体を通じて私が一番感銘を受けたのは、アントレプレナーのバイブルと呼ばれている ビジネス誌  FastCompanyの編集長が、「カオスの時代に成功する者は、、」として 『 Flux 世代 』について語ったことです。 これについては、次回にご紹介しましょう。

 

<2015年が 日本とファッションにとって よい年になりますように>

尾原新年おめでとうございます。

  今年の干支は 乙未(きのと ひつじ)。 私が尊敬する老荘思想研究の第一人者 田口佳史氏の解説によれば、乙(きのと)は、「昨年出た芽が勢いよく伸びたが、外の環境の抵抗に合って ぐにゃっと曲がってしまっている状態を表す象形文字。したがって、さらに力を注いで突破する事。未(ひつじ)は、木の上部の枝葉が茂ることを表し、下部が暗くなっていることを表している。したがって『明るくする』ことを重視して行う事。」

「両方合わせると、折角出た新しい芽も、出てみると風雨などに揺らいでまっすぐには伸びられず、紆余曲折がある。さらに新しい芽と同時に生じた反対の勢力も伸びてくる。さらに上層部だけが先行しがちで下層の無理解反発を生じかねない。そこで、よくよく歩調を合わせ、上下一体となって進むことを心がける必要がある」 とのことです。まさしく、国の政治にも、企業運営にも、個人の行動にも、当てはまると感じます。

 

  いま、厳寒のニューヨークに来ています。

ファッション小売業では、この時期セール商品が店舗にあふれていたのですが、昨年から百貨店などの「セールはネットで」傾向が強まったせいか、売り場は比較的きれいです。

  嬉しい事がありました。久しぶりにJAL(日本航空)の国際線に乗ったのですが、34年前とは大違いに顧客サービスが向上し、スタッフも乗務員、地上スタッフ全員がにこやかで親切なのに驚きました。食事も従来の 「国際線定番的な機内食」 ではなく、日本的な食材と味を活かした、「コンテンポラリー」なメニューで、とてもエンジョイ出来ました。危機的状態の企業が、ここまで生まれ変わったこと。会社更生法適用からわずか2年で 営業利益2000億円という V 字回復を達成した稲森和夫のパワーに、あらためて感服しました。

  東京オリンピックへ向けて、日本への関心と理解が深まりつつある今、ナショナル・キャリア―としての日本航空が生まれ変わった事は、日本と日本文化のグローバル展開の可能性を象徴するものと思います。

  ファッションでも同様の事が起こる  2015 年になることを祈念したことでした。