2015年 2月 の投稿一覧

<女性活躍支援の WEF 第3回シンポジウム ――「ワーク/ライフのマネジメント」 >

 一般社団法人 ウィメンズ・エンパワメント・イン・ファッション(呼称:プロジェクトWEF )の第3回シンポジウムが 324日(水)夕刻から開催されます。テーマは「ワーク/ライフのマネジメント」で、基調講演にはこの分野の第一人者の小室淑恵さんをお迎えします。小室さんは、2人のお子さんを育てながら起業をされた、このテーマの実践者です。多くの企業にワーク/ライフのバランスによる働き方の改善と生産性の向上に関するコンサルティングで実績をあげている方でもあります。シンポジウムの詳細は   http://www.wef-japan.org/event/501.html をご覧ください。

  パネル・プレゼンターも素晴らしいメンバーです。ユナイテッドアローズ執行役員の山崎万里子さんは、大学時代からアルバイトで、大好きなユナイテッドアローズの仕事をされて来られた方。「仕事の不安を一つひとツブしていくやり方」の著書で、信奉者のキャリア女性も多いようです。Gap ジャパンの志水静香さんは、同社の HR (人財)シニア・ディレクターとして、2児の育児と社会人大学院での勉強を両立された方。WEFの推進者会議では、米国と日本の人事制度の良い点を合体した Gap 社の仕組みを、事例としてお話しいただき好評でした。松岡晃代さんは、ニューヨーク在住のジュエリー・デザイナーで、現在 FIT などで先端分野の3D印刷の講師もされています。育児をしながらフリーランスの仕事を、アメリカ人の御主人とのライフを大事にしながら進めておられます。

 今回の狙いは、女性が活躍する上で、「ワーク」と「ライフ」を対立軸ではなく、 “働き甲斐のある仕事” と “達成感ある人生” を融合させて全うすること、ととらえ、そのための仕事の仕方とはどのようなものか。それを可能にする一人一人の心構えやビジョン、生活態度をどう組み上げるか、のヒントを得て頂く事にあります。「ワーク/ライフのバランス」というよりも、「ワーク/ライフのマネジメント」、つまり、キャリアあるいはライフ・イベントの各ステージに合わせながら、ワークとライフを両立させるマネジメント力を身につけて頂きたい、との想いです。

 「ワーク/ライフのマネジメント」は、女性だけの問題ではなく、男性も含めた問題であり、また、「働く意欲」と「生産性」を上げる仕事の仕方は、日本企業全体の課題です。

 この機会を、沢山の方に活用して頂きたいと願っています。

<NRF 2015レポート ⑤――過去 16 年のNRFメッセージに見る時代の潮流>

 米国のNRF大会に、私は1987年から、毎年欠かさず参加しています。(今年が29年目!)その理由は、新たな年の展望をひらくと同時に、ファッションや小売のビジネスが変容・進化する未来を見きわめたいからです。

 今回は、2000 年から 16 年にわたるNRF大会から私が得たメッセージを紹介し、時代の変化の潮流を再確認する事にしました。先回ご紹介したように、NRF大会のレポートは毎年繊研新聞に掲載されることになっているので、私も毎回全力投球で主要なセミナーや展示を取材し、その前後には業界のリーダーに会ったり、話題の店舗を視察したりしています。( 画像は 2015 NRF大会で経済と小売ビジネスを語る前FRBバ―ナンキ議長とNRF会長で前サックス社CEOのサドヴ氏)

 

 NRF大会の 2000 年から今年まで 過去16 年のメッセージを、繊研新聞への寄稿の表題でご紹介します。

2000 「広がる消費者向け電子商取引」―”クリック&モルタル“の台頭: ネットビジネスの始動

2001 「真の 『顧客セントリック』 に向けて」――発想転換、生活者の論理

2002 「顧客満足から顧客熱中へ」――911で消費者は変わった:心/体験/エモーション

2003 「イノベーション、さもなくば死――未来は顧客の中に」: リスク回避が最大のリスク

2004 「進む二極化、グローバル化――ハイテク×ハイタッチ」: ソリューションの提供

2005 「成長領域はウェルカーブへ」――二極化時代: 差別化、ブランド、人材

2006 「消費者の願望と欲求を 『鳥の目』 『虫の目』 でみる」――消費者の購買心理分析

2007 「企業戦略はユニークさ追求と買上率向上」――情報ネットは CtoB、CtoC

2008 「巨大潮流 『サステイナビリティ』 」――人・地球に優しいFB企業とは?

2009 「歴史的 『地殻変動』 が進むFB――購買動機は様変わり: 「経済的」「倫理的」「環境」

2010 「逆境は最大の教師」――前向きに未来を探る: ソーシャル・ネットワークの台頭

2011 「モバイルとソーシャル・メディアがもたらす小売革命――「クリック&モバイルへ」

2012 「小売業の新ルール――顧客との絆=エンゲイジ&進化」――ICTで変容するリテーリング

2013 「小売に 『革命』 が起きている」―オムニチャネル時代にファッション/小売業はどう取り組むか

2014 “リアル” の感動を “デジタル” が支える」―― “アマゾンはハグ出来ない” :ICTと小売の交差に巨大チャンス   

2015 「 “リアル店舗” は新しい “黒字源” 」 Brick is New Black――未来へ向けて ディスラプト&イノベートせよ

 このように見てくると、ビジネスの革新や進化は、テクノロジーの発達、世界を揺るがす出来事(例えば2001年の同時多発テロや、2008年のリーマンショックなど)、地球環境や社会や消費者の意識の変化などをテコに、勇気あるイノベーター達が行動をおこすことにより、生まれ、拡大して行くものであることを痛感します。

 「ファッション・ビジネスは 変化のビジネス。このビジネスで唯一変化しないものは、このビジネスが 変化し続けるという事実である」 と、FIT留学時代に何回も聞かされたことを、今あらためて思いだします。 そしてこれからの変化は、これまでにも増してスピードアップし、より巨大なスケールになるでしょう。 未来への変化を、楽しみにしています。

<NRF 2015レポート ④――ワービー・パーカーが「イノベーション賞」受賞>

 NRF 大会では、毎年 大きな貢献をした企業への賞が発表され、大ホールでの受賞セレモニーが行われます。

 2015 年度の「ゴールド・メタル(大賞)」は Home Depot のフランク・ブレイク氏 (会長兼CEO)に授与されました。「インターナショナル賞」は、フランスのGalaries Lafayette 代表取締役会長のフィリップ・フゼ氏が、また「シルバー盾」は、Chico’s FAS の社長でデジタル・コミュニケーション&CMOのミキ・ラシーヌ・バラルデリ氏が受賞しました。

 私が特に嬉しかったのは、ワービー・パーカーが「イノベーター賞」をもらったことです。受賞台に立ったのは、共同創業者 ニール・ブレメンソールとデイビッド・ギルボアの、2人の共同CEO です。  (写真は創業者のブレメンソール氏とギルボア氏。NRF提供)

  ワービー・パーカーは、2013年のNRF大会で、起業事例として紹介されたスタートアップ企業です。ニール・ブレメンソール氏が語る 起業への熱い想いと、迫力ある、論理的説得力のあるプレゼンに、大いに感服したものでした。その会社が、創業 4 年足らずで、NRFのイノベーション賞を受賞する。まさしく米国ならではの、新事業に挑戦する若者のパワーとアントレプレナー精神を象徴するものです。

  創業のきっかけは、アイビーリーグの一つであるペンシルバニア大学のビジネススクール、 ウォートン校で、メガネを無くした友人が、メガネが高価なため買うお金がないので、1学期メガネなしで非常に不便な生活を送ったことでした。「メガネが700ドルもする。iPhoneより高いなんて、信じられない。許せない」 と発奮した4人のMBA学生が、有名ブランドのライセンスだらけで中間業者のマージンも大きい、旧態のファッション・小売ビジネスをディスラプト (Disrupt=秩序などを崩壊させる、の意)したのです。 ワービー・パーカーの詳細はFITセミナー報告「オムニチャネル・リテーリング」 https://yoko-ohara.com/archives/709  をご覧ください。

 2015NRF大会について、繊研新聞に「尾原蓉子の2015NRF大会報告」が掲載され、ウェブにもアップされましたので下記ご覧ください。テーマは、Brick is New Black ――“リアル店舗”は新しい“黒字源” です。   http://www.senken.co.jp/news/oharayoko-nrf-2015/