南場智子著 「不格好な経営――チーム DeNA の挑戦」

 昨日、722日に、女性活躍支援の一般社団法人 ウィメンズ・エンパワメント・イン・ファッション(WEF) は 設立1周年記念シンポジウムを開催しました。参加者は、女性ばかりでなく経営者や男性幹部を含む220名超で、会場は、パワフルな講師の話と、熱心に聞き入る参加者の、熱気であふれたイベントになりました。

  テーマは 「新たな視点で、ビジネスを立ち上げる           ―― イノベーションをリードする現場力」。

基調講演者は、㈱ディー・エヌ・エー取締役会長ファウンダー。パネル・プレゼンターに、㈱三越伊勢丹の執行役員で伊勢丹立川店長の石塚由紀さん、カルビー㈱上級執行役員の鎌田由美子さんをお招きしました。鎌田さんは、今年の4月に現職につかれるまでは、JR東日本で、エキナカ(ecuteなど)や各種の新業態の立ち上げに関わってこられた方です。

 このテーマにした狙いは、今強く求められているビジネスの「イノベーション (革新)」こそが、WEFの女性活躍支援のキーワードである、「エンパワメント」 と 「リーダーシップ」を身につける効果的な方策だ、と考えたためです。

 講師3人のうち、南場さんは自らDeNAを創業した、世界でも注目されている起業家。石塚さんと鎌田さんは、それぞれ一部上場の大企業の組織の中で、イノベーションを起こして来られた方で、そのイノベーションの体験談は、まさしく、非常に異なるものでした。

 結論から先に言えば、南場さんは、「 “そんなに熱っぽく語るなら、自分でやったらどうか”の一言が、私の人生を変えてしまった」 と、自ら執筆した 「不格好経営―チームDeNAの挑戦」で述べているとおり、全てゼロから、自分の想いを、つぎつぎに、独自の形のビジネスにし続けて来られた方です。他方、「大企業の組織の中の “女性”」 というハンディキャップ (とあえて言います) を持ちながら、新しいコンセプトや事業に取り組んでこられた石塚さんと鎌田さんのお二人は、「たえず、理論武装をし、数字で説明し、説得する」 ことに注力されてきた、というのです。鎌田さんの言葉を借りれば、「仕事の80%は社内と(折衝やコミュニケーション)、20%が社外」というのが、私自身の経験からもよく理解できます。

 これはまさしく、歴史ある、大企業、これまでの男性中心社会の、「企業言葉」で語らねば何事も通りにくい、という日本企業の象徴的な実態であろうと思われます。お二人が活躍してこられた会社は、いずれも日本では有数の革新的企業です。しかしながら、ファッション・ビジネスで、今、求められるイノベーションが、「顧客視点」の、「現場重視」のものでなければならない、「アイディアは多様な(ダイバーシティある)人材から提案される」、また「前例がないもの」でなければ意味がない現在、このことを、経営者も、中間管理職も、現場マネジャーも、担当者も、全ての人が、あらためて肝に銘じる必要があると考えます。

 次回は、それぞれの講演とパネル・ディスカッションの内容を御紹介します。