世界の流通を展望する NRF(米国小売業協会)恒例の大会が、1月14日から 3日間ニューヨークで開催されました。今年は過去最大の3万6500人が参加、日本からも321名という、過去最多の参加がありました。機器やソリューション展示は 700 社を超え、同時進行する130以上のセミナーとの間を駆け回る3日間。筆者にとっては、32回目(32年目)の参加です。
テーマは「小売のトランスフォーメーション(変容)」。今年は、昨2017年までに登場した多様なデジタル技術が、IoTやプラットフォームの形でコネクトされ、消費者にとって便利で簡単なソリューションやビジネスモデルとして、多彩な展開が進む年になると強く感じました。 (恒例の「尾原蓉子の全米小売業大会2018レポート」は、繊研新聞2月20日付に掲載――電子版有料購読者はhttps://senken.co.jp/ へ)
米国小売業の現状は、楽観的な景況感はあるものの、過剰売り場スペース削減による店舗縮小やSCの閉鎖縮小などから来る危機感、アマゾンの成長拡大が加速する競争とイノベーション/ディスラプションの進展に、大手も中小企業も、ネットとリアルの融合をはかりながら、顧客体験を優れたものにし、自社の存在理由と優位性の確立に、必死に戦っている感があります。
今年の印象に残った潮流は、次の5点です。
1. アマゾンの急拡大に対抗する大手企業の動き=自社の存在理由の再定義(ウォルマート、リーバイス、ノードストロム)
2. デジタル技術の現場への浸透 →多様な要素技術をコネクト(特に、AI、AR、画像認識、AIスピーカー、ロボットなどの技術)
3. 多様な起業家(ディスラプター)の台頭 →ディスラプションは今や、 “新しい常態”(New Normal)
4. ビジネスの民主化・透明化 →合理的で最適な商品開発やサプライチェーン
5. 女性CEOの新しいリーダーシップ →より人間的社会へ向けての挑戦
これらをシリーズでご紹介したいと思います。
ちなみにNRF (National Retail Federation=米国小売業協会)は、「2018年の小売りトレンド」 として、次の8点を強調しています。
① 企業M&Aのさらなる拡大=デジタルとフィジカルの融合が勝負のポイント
② ショールーム戦略の展開加速=小売業ビジネスのミニマリズム・アプローチ
③ AR(拡張現実)=2020年AR経由購買は1億ドルに。顧客エンゲイジに有効
④ AI(人工知能)が優れた顧客体験を創造=真のパーソナル体験模索
⑤ 音声パワーの拡大=モバイル(スマホなど)に代わる未来のコマース手段
⑥ 宅配の効果的手法の開発=サプライチェーンと収益性の圧迫の解決策
⑦ 顧客を陶酔させるビジネスを=ユニークな体験、透明性、買物の苦痛削除
⑧ 予想外の相手とのコラボ
次回は 「アマゾンの急拡大に対抗する大手企業の動き」 です。