ローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇が、今日、来日され、長崎から「核兵器からの解放」のメッセージを発信されました。世界13億人のカソリック教徒の頂点に立つバチカン王国法王の日本訪問は38年ぶり。それも長崎と広島訪問という歴史的な場所から核兵器の非人道性を訴えることが、世界の人々に核兵器の恐ろしさをあらためて思い起こし、あらたな行動につながることを切に願っています。

 原爆投下後の長崎で撮影された 「焼き場に立つ少年」 (死んだ弟を背中に負ぶったまま火葬の順番を待つ少年の凜とした写真) をカードに印刷して教会関係者に配布し人間の尊厳を訴えた教皇は、「核兵器の開発はテロ行為であり、抑止力のためではなく廃絶を目指すべし」、と言い切っています。

 尾原の大阪講演のテーマは、核廃絶ではありませんが、その主催者である、日本AFS協会は、「この世から戦争をなくそう」 と米国で設立されたボランティアの非営利団体です。AFSとは、American Field Service (米国野戦奉仕団) の略語で、第1次大戦中に、戦場で負傷した兵士を病院に運ぶ奉仕活動に端を発したもの。この世から戦争をなくするためには、互いの国や文化を理解し、友好と信頼関係を築くことが不可欠。それも、大人になってからではなく、感受性の強い高校生の少年少女を交換/交流させ、異文化を体験させることで可能になる、という理念で、スタートしました。いまや、AFS留学生は世界に何万人といます。今秋欧州中央銀行総裁に就任したクリスティーヌ・ラガルドさんもその一人です。AFS 講演会ご案内は こちらへ (参加料無料)

 

 日本にAFS支部が出来て留学生を送るようになったのは、1954年。私はその2期生として、全国から選考された29人の仲間に入って、1955年、日本人が一人も住んでいないミネソタ州のマンケイトという中都市に1年間、ホストファミリーと地元の公立高校に御世話になりました。

米国留学へ向けて氷川丸で手を振る筆者

  大阪講演のテーマは、

「すべてはマンケイトにはじまったーー16歳の AFS 留学が拓いたキャリアと、どんな 障害にもしなやかに対応する 壁破り体験物語」。

 私のキャリア形成は、振り返ると、米国でのこの1年間の異文化体験が引き金を引いてくれた、と、今、心底思います。成績は良かったけれど、引っ込み思案で、人と違う一歩を踏み出せないでいた少女が、アメリカへ向けて乗船した氷川丸が横浜埠頭を離れ、どんどん遠ざかる日本の山並みがついに黒い点になり水平線の彼方に消えた瞬間に、全身を襲った恐怖心と、同時に足元から湧き上がって来た電流のようなエネルギーから、「これからは、自分で考え、自分の足で立たねばならない」と決意したこと。そして「与えられたチャンスを最大限に生かして成長する」、「何か、自分がこの世に存在した証を創りたい」、と考えるようになった、その体験をお話ししたいと思っています。

 昨秋出版した 『Break Down the Wall―環境、組織、年令の壁を破る』 (日経出版社) は私がキャリアで体験した多くの壁や伝統的社会通念、女性あるいはマイノリティならではの苦労、などを私なりに突き破ったり、あるいは別の道を探したりしてやってきたことをまとめたもので、これを土台にお話を進める予定です。

『Break Down the Wallー環境、組織、年齢の壁を破る』

 対象者は、中学/高校生、その親御さん達、学校の先生から、社会人でキャリアの進め方に戸惑っている人、グローバル人材の開発に取り組んで折られる企業経営者まで、幅広い方に聞いて頂きたいと願っています。

 世界のグローバル化 (ビジネスや政治だけでなく意識の面でも) に後れを取っている日本。若者の内向き志向、すなわち留学など未経験の世界に進みたがらない昨今の傾向は、日本の将来を危うくするものと心配しています。多様性とインクルージョンが叫ばれていますが、それは企業組織内の多様性や異質な人材のインクルージョンだけでなく、一人一人の心と意識の解放と、異質なもの/ことに敬意と包容力を持つこと、です。

 セミナーへのご参加、あるいは適任者にお薦め頂けると嬉しいです。