WEF が 卒業式『謝恩シンポジウム』を開催しました

WEF(一般社団法人ウィメンズ・エンパワメント・イン・ファッション)が、10周年を機に、  3月31日で活動を終了しました。6月の総会をもって、解散する予定になっています。

まずは、2014年6月の設立以来、皆様の大いなるご支援とご協力を頂いて、ファッション産業における女性活躍支援に取り組んでこられたことに、心からの感謝を申し上げます。

WEF の「卒業式」として開催された、『WEF謝恩シンポジウム』についての繊研新聞の報道記事を、同社の御許可を頂き掲載させて頂きます。(繊研新聞 2023年3月17日付)

解散するなんて!! ようやくコロナも落ち着きはじめて、機運が盛り上がってきるのに! 、、などなど、解散を惜しむ多くの声を、有難く胸が詰まる思いで聞いています。

しかし時代は、とくに世界の情勢は、急速なスピードで、かつ大きく変化しています。女性の活躍は引き続き重要課題ですが、世界は、ジェンダー平等と多様性(ダイバーシティ)、包括性(インクルージョン)の総合的な推進により、新しい世界の構築へ向けてシフトしています。

とくに、ビジネス界の変容はすさまじい。WEFが活動の対象としてきた「企業」においては “多様な個人が、それぞれの視点や能力をフルに発揮し、変革を起こす”ことが、喫緊の課題、というより企業存続の条件になりました。そこでは、総論としての 「女性活躍/個人の能力発揮」から、各論としての 「個々の企業にフィットした能力開発や評価や抜擢」 が求められる段階に進んだことが、明白になっています。

思い起こせば、私のジェンダー問題との出会いは、「誰か男居らんか、オトコ!」 と、電話を取るたびに言われた新入社員時代の原体験でした。 そこから今日まで61年。1985年の「男女雇用機会均等法」、「ウーマノミクス」、そして最近では、「ダイバーシティ推進」へと、時代は着実に進化しました。 法整備もかなり進み、男性の育児休暇まで、制度化が進んでいます。

にもかかわらず、女性が男性並みに活躍出来ていない日本。その原因は、長年にわたる社会通念、男女の役割分担的な風習、などから脱皮できないこと。つまり、「すべての人が、達成感あるワークとライフを追求できる社会が当たり前」、という考え方に切り替わるのに、時間がかかっている、ということだと考えます。

そして、それは今や、WEFのような団体が旗を振ることで、達成されるものではなく、個々の企業、個々の個人が、自らのベストを求め、発想を変えて取り組まなければ、実践・実現できないものになりました。

 種は蒔かれた、新芽は出た。どう育つか?  → 個々の企業の出番です。

 「多様性のない同質化組織ではイノベーションは生まれない」。 

 「女性の潜在力を最大限まで活用できれば日本経済を15%押し上げる可能性がある」。 

 「女性マネジャーが多い組織は収益性が高い」。 

などの事実が共有されるようになった今、これからの企業の成長や収益性が、最大のマイノリティである「女性」の活躍にかかっていることは、疑う余地はありません。企業、とくに経営トップが、あらためてその認識を高め、勇気をもって変革に取り組んでいただくことを期待しています。

それをしなければ、御社は、世界に遅れてしまうのです。

WEFの10年。私たちは、会員企業やWEFを支援し協力して下さった方々と共に、やれることは、ほぼやってきたとの想いがあります。ロールモデルにしたい先輩女性たちの啓発的講演、ジョブ型マネジメントや、レジリエンシー、ダイバーシティ&インクルージョンなどの勉強、先進企業の人材マネジメントの革新的事例の共有、サステイナビリティや AI など時代の潮流、海外の先進的動向、アントレプレナーによる起業などなど、多くを学びました。WEFが特に重視したことは、ファッション・流通業界の閉鎖的マインドを打ち破る、他社との企業を超えた交流や意見交換でした。あとは実行あるのみ、です。

 「女性活躍」 の旗を掲げ、大きな流れを作ってきたと自負するWEFとして、今考えること。それは、

種は蒔かれた、そして新しい芽は出てきた。それをどう育てていくか? 

それはいまや、個々の企業、個々の現場、そして個々の個人にかかっています。

若芽が萎れる(しおれる)ことのないよう、皆様に、これまで以上の努力を、お願いしたい、また、期待したいと思っています。

                                        End

NRF 2023 報告: “信念” と ”ケア(気づかい)” で      ブレイクスルーを

NRF 2023 logo

恒例の、米国小売業大会、NRF2023 Big Showのリポートが、繊研新聞に掲載されました。今年は、エントリーはしていたのですが、最終的にリアル参加は断念しました。直接現地を体験しなかった分、NRF発信のニュースやビデオ、現地の有識者(米国業界リーダーを含む)、あるいは主要講師に直接ネット取材をするなどで、いつもより苦労しましたが、1987年初参加以来、37回連続で定点観測的に見てきたNRF大会だけに、見ていないものが見えた、という不思議な気持ちになりました。

大会の最大のメッセージは、「人間重視(ダイバーシティ/平等/包括性)とケア(気遣い)の重要性」。「企業文化が、戦略やビジネスモデルを超えて、真の顧客価値を生む」でした。

テクノロジーが、特にAIを中心に多様な展開を加速する中で、「人」、「生きること」、「思いやり」、「優しさ」に、明確なギアが入った大会だったと、感銘を深めています。

以下が、繊研新聞から掲載許可を頂いた、寄稿記事です。

コロナ禍3年を経て、アメリカのファッション小売業界は、大きく変容しました。DX(デジタル・トランスフォーメーション)や店舗の変革、DE&I(多様性/平等/包括性)、働き方改革、サステナビリティ、、と。そして今、人・生き物・心・地球が焦点になっています。

それに対して日本は、身を縮めてコロナの嵐が通り過ぎるのを待っていた感じがしてなりません。世界の潮流に、これ以上後れを取らないように、日本の、日本企業の、日本人の、大奮起に期待しています。

2023年 明けまして おめでとうございます。

本年の皆さまの ご多幸とご健康をお祈りいたします。今年こそコロナ感染が収束し、世界情勢でも 平和へむけた確かな歩みが始まることを 心から祈る元旦です。

ファッション・ビジネスでは、サステナビリティとファッションとの共存という大命題に、本格的に取り組む年にしなければ、世界に大きく後れを取ることになる。これを業界あげて推進したい、と願っています。

今年の干支は、癸卯(みずのと う/きぼう)

東洋思想研究家の田口佳史氏の解説によれば、

「癸」=みずのと、「揆」はものを「はかる」という意味で、はかるには規準が必要となることから、「のり」 規則の則の意味ともなり、諸事を取り仕切る意味ともなる。国を取り仕切るは「総理」、各企業を取り仕切るは「社長」、これみな「揆」である。 したがって今年はトップが諸事 取り仕切れるかが問題となる。取り仕切れなけ れば「一揆」ということになる。

「卯」=う は、真ん中の二本の棒が門柱を表わしており、これまで閉じられていた門が、今年はじめて開いた。開いてみれば中は、いまだ未整備、雑草や樹木の 無駄におい茂った野原がある。これを整備開拓して有効地にする意味がある。

「癸卯」では、何らかの新しい可能性が出てくるが、これを見事に開拓出来るか どうか。また、正しい道理に則っとり、諸事が進めば、順調な年にもなろうが、 少々でも誤まれば混乱ともなり、一揆ともなる。 

2024年の干支 「甲辰」 (きのえ たつ/こうしん)は、天災の意も読めるので、大混乱になる。そこで何とか 2023年を平穏に乗り切りたいものである。

とのことです。

どんな年になるのか? ファッションのワクワク感や情緒的価値を大事にしながら、サステナブルでもある産業にする、という、新たな「卯」の門を開き、これを整備開拓して〝有効地”にする年になることを念じています。

今年もどうぞよろしく、ご支援とご指導をお願い致します。