<NRF(米国小売業大会)2022リポート① >

 ロシアのウクライナ侵攻が世界的な非難の中で進行し、第2次大戦後最大の危機といえる事態を迎えつつあります。コロナ・パンデミックは、ようやくピークを打ったかに見えますが、オミクロンに次ぐ「株」の第7波襲来の不安は消えません。昨3月11日は、東日本大震災から11年目、次なる大地震も予告されています。

 巨大な「自然災害」と巨大な「人的災害」に、私たちは、どう対峙したらよいのか。毎日の「日常を生きる」なか、企業活動もこれらを視野に入れ、社会問題解決の一翼を担う責務を負っていることを痛感します。

 恒例の、米国小売業大会が、2022年1月16∼18日に、2年ぶりにリアルで開催されました。私自身は、エントリーはしていましたがコロナ感染をさけ、講演のオンディマンド・ビデオと参加者からの体感情報をもとに、下記の 「尾原蓉子の 2022全米小売業大会リポート」(繊研新聞、3月2日掲載)をまとめました。

 昨年のホリディ商戦の好調から、コロナ脱出ムードで「楽観主義」にあふれた米国の大会でしたが、その後のウクライナ情勢の急展開で、インフレ懸念やネット妨害などの新たな問題に直面しています。

 リポートで一番伝えたかったことは:

◆コロナが変えたもの= 人と地球への思いやり、人間回復

◆御社の、「パーパス」(企業の社会的存在目的)は? 「北極星」は? です。

そして、最後のまとめ 「歴史の流れで未来を見る」の

◆企業が歴史の変化を生き延び、成功するために不可欠なもの。ウォルマートやノードストロムなどの長寿企業に共通するのは、パーパス、ぶれない理念、そして時代に応じた変革としなやかなリーダーシップ、です。

  謹賀新春   2022年 元旦

明けましておめでとうございます。         本年の皆さま方のご多幸をお祈りいたします。

コロナ・パンデミックも3年目に入ります。今年こそは、地球という星の諸事象(コロナ以外にも世界中で色々困難な問題がおこっています)が、より良い方向に進むことをひたすら祈る新年です。たとえウィズコロナ状態が続くことがあっても、世の中が落ち着きをとりもどし、人と親しく会うことが出来、人々が生きる幸せを確かめられる年になることを心から願っています。会いたい人に会えること。それが何よりの喜びだと知りました。

私自身の21年は、サステナビリティの問題を中心に経産省委員や講演などで忙しく過ごしましたが、コロナで様々な物事の“本質”が炙り出される中、ファッション・ビジネスのありようも、また企業のありようも、大きく変わらねばならないことを痛感した1年でありました。

あらめて見直したのは、米国FastCompany誌が掲げた「次なる25年の 新“ビジネス新ルール”」です。 

1.働く場に民主主義を―すべての人に平等かつ公正な働く機会を

2.コミュニティに投資せよー地域社会、所属集団や独自の顧客を重視し育てよう 

3.パーパスを明確に定義せよー企業の存在目的に社会問題の解決を入れよう 

4.真実・本物であれー粉飾ない真実と本物、透明性ある製品やサービスを

5.好奇心が「通貨」ー電子情報をこえた「人」の好奇心こそ新たな創造に

6.変化が「常態」=常に変わる変化は絶えずやってくる、変化が進化の糧

これは起業家のバイブルとされるFastCompany誌が、1995年創業に際して掲げた「4つのビジネス新ルール」の未来展望が非常に的確であったことから、25周年を期して、次なる25年の新・新ルールとして、2020年秋に発表したものです。

(詳細は当ブログ 2020.12.24付けをご参照ください。 

https://yoko-ohara.com/archives/date/2020/12

 2022年のフッション・ビジネスが、新たな方向に、力強く歩を進める年になることを祈念しています。   

                              END

<米国同時多発テロから20年―追悼と、危機対応のリーダーシップ>

  • 「9・11」 2001年9月11日火曜日 午前8時46分

 あの日は、突き抜けるような快晴。キラキラと、青空を背に朝日に輝く世界貿易センタービルに2機のハイジャック機が相次いで突入しました。。ニューヨークの FIT(ファッション工科大学) 8階の教室で、IFIビジネススクール幹部研修が進行中でした。1時限後の休憩時間に、何やら騒がしいので教室からロビーに出ると、南向きの大きな窓から貿易センター北棟の上部がもくもくとわき出る煙に覆われ、時折炎も見えました。状況が分からないまま、2時限目を継続。その間に2機目が突入した南棟、ついで北棟が崩れ落ちました。飛行機の突入の瞬間を見た人も、ビル崩壊を目のあたりにして心臓が止まる思いをした人もいました。

 すぐに「テロ事件」とわかり、FITは州立大学であることから即「非常施設」に指定され、「正午までに全員避難・退去」の命令がでました。FITは貿易センターから 3.5 キロほど北に位置しますが、すぐ北にあるエンパイア・ステイトビルも、攻撃ターゲットになっているといったニュースも飛び交い、地下鉄も停止した街を、エンパイアを避けて大回りをしながら、全員徒歩で48丁目のホテルまで帰りました。途中でメンバーのための食糧確保と、小銭への両替(自販機利用のため)に必死の努力をしたことを思い出します。

 IFIビジネススクール学長で研修責任者でもあった私は、受講者(企業幹部)23名と関係スタッフ計28名の安全確保と、全員無事に速やかな日本帰国を達成する方策を、参加者の協力を得ながら、あの手この手で探り決断する高度に緊張した時間を過ごしました。

 犠牲になった方々や御家族に、改めて心からなる追悼の意をささげます。

  • ニューヨーク市長、ルドルフ・ジュリアーニ氏のリーダーシップに学ぶ

 この稀有で貴重な体験から多くの学びがありました。またこの自爆テロをきっかけにアフガニスタン攻撃やイラク戦争にエスカレートしていった米国。20年でアフガン撤退という敗北に至った米国のテロとの闘い、などが今後どう展開して行くのか。不安定な世界の政治・経済・社会情勢などについては別の機会に書きたいと思っていますが、今回は、この前代未聞の危機に、時のニューヨーク市長、ルドルフ・ジュリアーニ氏が発揮した、感銘深いリーダーシップについてご紹介します。(同氏はその後、米大統領選に絡む問題で弁護士免許一時停止の措置を受けていますが、同時多発テロへの対応では、「世界の市長、TIME誌 Person of the Year 2001」と評価されました。)以下、当時の繊研新聞への筆者寄稿をご覧ください。

 リーダーシップの不足、中でも「有事のリーダーシップ」が問われる今、あらためて、ジュリアーニ氏の言動に学びたいと考えます。